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コラム『歯科医院経営を考える』

コラム『歯科医院経営を考える』

デンタル・マネジメント・コンサルタント 門田 亮

№560 労務の適切な管理のために

働き方改革などにより、時間外労働時間への意識や有給休暇の取得が推進されること、さらには賃金の大幅な見直しなど従業員の労働環境の整備が急速に整いつつある一方、従業員による一方的な退職、つまり何も連絡がないまま無断で退職するケースなども散見されるようになりました。退職届等の書面による意思表示は少なくなり、院長に直接会って退職の意向を伝えることさえ稀なこととなっています。LINEやメールで連絡を入れてくるのはまだよい方で、ある日突然誰とも連絡が取れなくなり音信不通となるケースもあります。

 ただし、どのような辞め方をするにせよ、労働基準法では労働者保護の色合いが強いためなかなか損害賠償請求を行う事例までは多くありません。そこで従業員の退職に対する意識づけという意味で、民法第627条一項に規定されている「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」という条項を基に周知する方法があります。事業者側からすれば、退職の意向を確認したのち、次のステップを充足させるまでの準備や引継ぎを考えますと、一般的には3か月程度の期間を設定したいところです。それでも、退職を希望する当日にその意向を示し、その後出勤をしなくなる従業員が後を絶たず、事業所が退職の意思を受け入れてしまえば、即日退職も受け入れざるを得ない状況ですから、せめて2週間という民法上の規定は遵守することを求めたいものです。

 デンタル・マネジメント・コンサルティング社にて毎年、歯科医院の経営指標として歯科医院の経営実態に関する調査を行っておりますが、その中で就業規則の有無について尋ねた項目があります。令和2年分から4年分までの3年間の経過を見ますと、73.9%72.7%74.5%となっており、全体の約4分の3の歯科医院が就業規則を備えている結果です。歯科医院の規模が大きくなるとその割合は約8割にまで高くなりますが、歯科医院の規模に限らずいずれの歯科医院も就業規則を備えて、歯科医院で勤務する上での基本的なルールを定めておくとよいでしょう。就業規則には、必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項および、規定した場合に記載しなければならない相対的必要記載事項のほか、事業所で独自に定める任意的記載事項から成り立ちますが、退職の意思を表明する時期や方法などについても就業規則で規定しておくと、労務に関しての一定のルール作りが可能となります。

 就業規則を新規に作成するだけでなく、以前から備えている歯科医院においても、労働環境が大きく変化する昨今の状況においては、就業規則の内容と現状が乖離していることがあります。就業規則を有効に活用するために、随時内容の修正を重ね、現状に即した内容を維持することに努めてください。院内体制の整備によって、労務管理を適切にコントロールすることに力を注いでいただきたいと思います。

 
(つづく)                                                                                     

玉ヰニュース 2024年 9月号より

 

バックナンバー 2024

2024年8月№559組織的な医院運営を意識する
7月№558

最低賃金の上昇には労働効率の向上で

備える

6月№557年収の壁に拘らない働き方を
5月№556継続的な関りを
4月№555人材の流動と労働力確保
3月№554積極性と生産性
2月№553選ばれる職場づくり
1月№552変化に対応する柔軟な考えを

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バックナンバー 2023

2023年12№551

働き方改革のさまざまな影響

(物流2024年問題)

11月№550健康の不安なく100歳までの人生を
10月№549「働きがい」とは・・・内から外への意識を
9月№548顧客体験価値と価格
8月№547ノンバーバルコミュニケーション
7月№546金融機関と上手に付き合うために
6月№545我が国の健康保険の行く末
5月№544リスキリングを考える
4月№543歯科医院における人材確保の可能性
3月№542認知症を考える
2月 ※都合により休誌
1月№541不況下の物価高騰

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バックナンバー 2022

2022年12月№540プランデミック
11月№539ディープステート
10月№538グローバリズムの存在

9月

№537我が国の憲法について
8月№536安部元総理の死に思うこと
7月№535医学部の地域枠制度
6月№534閉院計画
5月№533ウロギネコロジー
3・4月 ※都合により休誌
2月№532STEM教育の重視を
1月№531新札発行の目的は?

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バックナンバー 2021

2021年12月№530歯科医院経営の多様化
11月№529慎重な電力需給の調整を
10月№528将来を見据えての投資を
9月№527イベルメクチンとWHOの闇
8月№526専従者の認知症
7月№525医薬品研究開発への支援を
6月№524公的機関の果たすべき役割とは
5月№523コロナ感染対策の徹底を
4月№522老後の資産管理
3月№521お互いの感情の共有と交流
2月№520院長の閉院計画
1月№519コロナによる医療崩壊

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バックナンバー 2020

2020年12月№518パート従業員の不満
11月№517医療法人設立の目的
10月№516前歯部CAD/CAM冠
9月№515センメルヴェイス反射
8月№514地域別診療報酬制度の問題

7月

№513低温有機物分解炉の開発
6月№512グローバル化への警告

4月

№511教育資金の準備
3月№510ベンゾジアゼビン系の睡眠薬
2月№509行政への関心を
1月№508長期的な投資で国力の回復を

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バックナンバー 2019

 12月№507日本国の行く末
2019年11月№506臓器移植
10月№505生活整備の基盤は国で
9月№504貧困率15.6%を直視すべき
8月№503金属床総義歯(上顎)の価格差
7月№502老後の生活資金
6月№501将来の地域モデル
5月№500歯科医院の安定規模
4月№499有給休暇の取得義務化
3月№498公的経営指標
2月№497災害の備えを
1月№496若い労働力を活かす

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バックナンバー 2018

2018年12月№495医院の労務と意思疎通
11月№494キャッシュレス社会
10月№493専門医のチーム医療
9月№492地方に医療法人の設立を
8月№491今こそ公共事業の拡大を
7月№490高額治療の自己負担
6月№489親子承継におけるスタッフの採否
5月№488ある歯科医の人生
4月№487種子法廃止の影響
3月№486事業承継の具体策
2月№485新専門医認定制度
1月№484AIによる医療支援

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バックナンバー 2017

2017年12月№483副院長の課題
11月№482有給休暇の付与日数
10月№481Jコインと銀行の盛衰
9月№480衛生士の給与体系と昇給
8月№479保険診療で経営の安定性確保
7月№478歯科技工士の位置づけ
6月№477待遇改善は早めに
5月№476老後資金の準備
4月№475給与ベースの見直し
3月№474感情を持つロボット
2月№473院長の衛生士教育
1月№472相続対策と遺言

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バックナンバー 2016

2016年12月№471経営のジレンマ
11月№470第4次産業革命
10月№469院長の決断と待遇の公平性
9月№468自分の限界に挑戦する
8月№467うすき石仏ネット
7月№466税務調査
6月№465新幹線のお掃除劇場
5月№464国の幸福度指標
4月№463

億円以上の自費収入

3月№462日本の歯科医療費の問題
2月№461待遇の改善とルール作り
1月№460医院経営の本気度

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バックナンバー 2015

2015年

12月

№459歯科医院の職種別給与額
11月№458

死亡消費税とハーボニー

10月№457マイナンバー制度(2)
9月№456わたぼうし音楽祭の40周年
8月№455院長の責務
7月№454経営の安定化と医療法人
6月№453治療技術習得の方法
5月№452短時間正社員制度
4月№451

適正な歯科医師数

3月№450オバマケア
2月№449患者への働きかけを
1月№448衛生士の確保と労働条件

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バックナンバー 2014

2014年

12月

№447エンディングノートの作成
11月№446

人手不足の時代をどう乗り切れるか

10月№445メディカルトリートメントモデル
9月№444ありがとう断食セミナー
8月№443周術期口腔機能管理と医科・歯科連携
7月№442医療の永続性と法人化
6月№441労働条件の見直しを
5月№440気遣いのできる人柄
4月№439

生活支援としての歯科の役割

3月№438患者との強固な絆を
2月№437医院の断捨離
1月№436歯科医院経営の現状

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バックナンバー 2013

2013年

12月

№435症例検討会
11月№434

歯科医業の承継

10月№433高齢化率の上昇と医療費
9月№432マイナンバー制度の問題点
8月№431子女の事業承継
7月№430自医院の経営状態の把握を
6月№429アメリカの訴訟と先進医療
5月№428有能な人材と国際競争力
4月№427

TPP交渉と医療制度改革

3月№426院長の自己反省
2月№425歯科医院の経営実態
1月№424日本の現場力

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バックナンバー 2012

2012年

12月

№423三つの勘違い
11月№422

子育てしつけ

10月№421ブルーオーシャン戦略
9月№420カンファタブル・ライフ・シンドローム
8月№419楽しい歯科医院づくり
7月№418上司の覚悟
6月№417少子化対策の意味
5月№416包括歯科臨床
4月№415

治療の会話術

3月№414自己反省と自己成長
2月№413集団的個別指導と1レセ単価
1月№412患者との絆づくりを

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バックナンバー 2011

2011年

12月

№411感謝する心
11月№410

日本で一番大きい歯科医院

10月№409人間の責任とは何か
9月№408人生の舞台・職場
8月№407なでしこジャパンの勝因
7月№406原子力の安全に向けての組織づくり
6月№405親子診療の難しさ
5月№404緊急事態におけるリーダーシップ
4月№403

組織上の決定プロセスの問題点

3月№402高次脳機能障害のリハビリ
2月№401生き残るのは若い人材力
1月№400高齢化社会への対応

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バックナンバー 2010

2010年

12月

№399事業承継
11月№398

根管治療と混合診療

10月№397無駄な医療費
9月№396真剣勝負
8月№395飴玉の害
7月№394人材(財)力
6月№393先を見据えることとニンビーの排除
5月№392歯科医院経営の黄金ルール
4月№391

歯周・予防のメンテナンス

3月№390医療関係者への歯科関連知識の普及を
2月№389保険の枠を超えた発想を
1月№388日本の財政事情

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バックナンバー 2009

2009年

12月

№387特措法26条のゆくえ
11月№386

患者の価値観・行動様式の変化

10月№385小規模だからこそ経営戦略を
9月№384歯科医療の長期ビジョンを
8月№383医療の品質と医療費負担
7月№382人材を育てる
6月№381インフルエンザへの対応
5月№380寺院の経営
4月№379

医院という船のエンジン

3月№378治療技術水準
2月№377心の触れあい
1月№376ノンバーバル・コミュニケーション

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バックナンバー 2008

2008年

12月

№375インセンティブ
11月№374

戦略なき経営

10月№373資産防衛
9月№372ホンネとタテマエ
8月№371積極思考
7月№370ホスピタリティーの厚い歯科医院を
6月№369物価上昇への対応
5月№368歯科医療の技術習得
4月№367

クレーマー

3月№366患者の理解と納得
2月№365情熱と戦略
1月№364活力朝礼

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バックナンバー 2007

2007年

12月

№363心のコップ
11月№362

歯科医院の競争力

10月№361携帯文化
9月№360国民的視点からの政策提言を
8月№359子持ちスタッフの活力
7月№358先ず何を考えているのかを知ること
6月№357高齢者人口の流動化
5月№356技術と感受性
4月№355

心の荒み

3月№354経営の信念
2月№353信頼関係と技術力
1月№352子育て

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医療法人 迫田歯科クリニック様
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ゆめ咲歯科クリニック様(佐賀市)
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