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コラム『歯科医院経営を考える』

バックナンバー 2023

№551 働き方改革のさまざまな影響
           (物流2024年問題)

2019年41日から政府による「働き方改革関連法」が順次施行されたことにより、時間外労働の上限規制の導入、年次有給休暇の一定日数以上の取得義務化、雇用形態にかかわらない公正な待遇を確保することなど、各歯科医院でもその対応を随時進めておられるところだと思います。労働時間を適正にするために診療時間を短縮することや、年次有給休暇の計画的付与のために休診日を新たに設けるなど、人材不足が深刻な歯科医院においても法令遵守に向けてその対応は様々です。

「働き方改革」による影響は医療業界のみならず他の業種でも現れていますが、20244月からは新たに自動車運転業務つまりトラックドライバーに対しても時間外労働の上限規制が適用されることになります。トラックドライバーの年間労働時間は全産業平均に比べて約2割程度長いという調査結果がありますが、時間外労働の上限規制により労働時間が適正な水準になる一方、その動きに対して何も対策を講じなければ、2024年度は約14%の輸送力不足が生じると試算されています。輸送力の低下は、納品までの時間がこれまで以上にかかることを意味しますが、医療業界へも大きな影響があることから、物流2024年問題として厚生労働省でもその対策を検討するために何度も懇談会が開催されています。

歯科医院においては、実に多くの歯科材料・薬品あるいは消耗品の在庫が存在します。中には緊急を要するものが含まれていることもありますが、今後必需商品を確保するために、歯科医院の発注業務にも少なからず影響が生じることが予想され、さらには小型の医療用機器など、歯科医院での在庫商品ではないけれども即時納品を希望する製品などもその影響を受けることが考えられます。物流業者はもちろんのこと、販売業者も物流の効率化のためにさまざまな対応策に取り組み始めているところですが、歯科医院側でも自衛策としての対応が必要な局面にあるようです。納期を要するようになると、1日でも早く発注を行うことが欠品を防ぐ手立てになりますが、在庫数に応じた発注ルールの見直しのほか、適正な在庫数を再検討することなど、的確な管理が行える体制を目指すことが必要です。使用する材料薬品や消耗品を集約し、ネット注文などを利用して発注間違いを防ぐ対策を取る一方、使用期限のないものは一括購入を検討するなど、発注から納品までのタイムラグにも柔軟に対応できるよう歯科医院でも先を見据えた検討を進めたいところです。

(つづく)

玉ヰニュース 2023年 12月号より転載。

№550 健康の不安なく100歳までの人生を

日常の診療において、疾患の予防に向けた歯周メンテナンスを主な診療方針として掲げる歯科医院は約8割を超えています(デンタル・マネジメント・コンサルティングの調査資料より)。実際、厚生労働省がまとめる社会医療診療行為別統計調査の結果においても、歯科疾患管理料、歯科衛生実地指導料および診療情報提供料を含む「医学管理等」が、令和46月診査分では14.5%を占めるようになり、ここ10年で約3割も増加するなど、予防に対する取組みが飛躍的に進んでいるようです。身近なところでは、各自治体等において行われる歯科健診においても、自治体によってはすでに全世帯に亘る歯科健診が実現するなど、ますます予防の重要性は高まっているといえるでしょう。

日本では少子高齢化が急速に進むと同時に、2040年には100歳以上の人口が30万人になると予測しています。内閣府は、さまざまな分野においてこれまでにない革新的な技術の創造を目指すべく、挑戦的な研究開発を進める「ムーンショット型研究開発制度」を推進しています。目標1から目標9までの9分野の中で、健康・医療推進本部は目標7として「2040年までに、主な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサスティナブルな医療・介護システムを実現」と掲げています。人生100年、それをさらに健康の不安なく迎えようとする取り組みです。平均寿命が大きく伸びてきた昨今、次は健康寿命の延伸です。

歯科が期待される分野として、歯磨き時に歯ブラシが口内細菌や唾液の状態を計測する研究開発の例が挙げられており、心身のデータを正確に収集することを目標としています。予防に力を注ぐ歯科医院においては、院内で口腔内の環境や細菌を調べる設備が導入されている医院もあります。今後さらに革新的な技術開発を目指す上で、現在の延長線上にはない技術が開発され、まったく新たな研究成果が発表されるかもしれません。

いずれにしても、全身疾患に大きな影響を及ぼすことへの理解が進む歯科の分野において、更なる予防医療に向けて心身の状態を正しく測定することが家庭でも行えるようにでもなれば、口腔疾患ひいては全身疾患をコントロールする役割として、歯科医療が担う役目はますます大きな意義を持つのではないでしょうか。

(つづく)

玉ヰニュース 2023年 11月号より転載。

№549 「働きがい」とは・・・内から外への意識を

厚生労働省が行う令和4年雇用動向調査結果に基づくと、医療・福祉の離職率(離職者数÷常用労働者数×100%))は15.3%というデータがあります。全産業の中では、医療・福祉よりも離職者数が上位にある職種もありますが、全体としては比較的高い比率を示しているといえるでしょう・医療・福祉という大きな括りのため歯科医療従事者だけのデータではありませんが、前年データと比較すると少し増加傾向にあるようです。

歯科医院の労働環境としては、労働基準法に対しての厳正な取り組みや、社会保険あるいは教育体制をしっかりと整えた歯科医院が、歯科医療全体の労働環境を牽引している状況ですが、スタッフの「働きがい」を考える上では自分への意識から離れ、他者に対する意識を高めることを目指したいところです。待遇がよいことは職場を選ぶ上で上位にくる要素ですが、条件を満たすだけでは働く者の意識としてもそう長く続くものではないでしょう。どうしても友人や先輩・後輩など他者との条件を比較して、自分の職場が劣っているところがあれば不平や不満を抱いてしまうものです。職場での働きがいを強く実感し定着を図るためには、自分に対する内側の意識から離れて、外にも意識を向けることが必要です。

愛知県蒲郡市にある「竹島水族館」では、自分が飼育したい、育てないといった自分が満足したいという内側の意識から離れ、他者が見たときにどう思うか、誰のための水族館かという点で徹底的に話し合い、外に対する意識にシフトしたことで来館者数を大きく伸ばせたそうです。コロナ禍前のピーク時には最高約45万人の来館者も、その10年前は約14万人と少なく閉館も検討されていたとのことです。来館者数を10年間で実に約3倍に増やした根源として、水族館の魅力を再確認し、その魅力を伝えるために自分たちの言葉で訴えかけるなど、来館者へ対する徹底した取り組みを強化したことが実を結びました。当然働く従業員も、お客さんが喜ぶ姿を目にし、展示を見たいと訪れる人が増えれば嬉しいですし、自らの取り組みが受け入れられたと実感できれば大きな喜びにつながります。

歯科医院でも、患者さんがどう思うかというところへ意識が向くと、歯科医院を自分たちで築いている意識が生まれます。処遇や待遇の改善を図ることと同時に、意識を外に向ける取り組みにも力を入れ、より働きがいが増すことがスタッフの定着につながるものと思います。

(つづく)

玉ヰニュース 2023年 10月号より転載。

№548 顧客体験価値と価格

コロナ禍前には年間入園者数3,000万人以上を誇っていた東京ディズニーリゾートの入園料が、本年101日以降は最高で10,000円を超えるという発表がありました。コロナ禍の最中ではさすがに入園者数も756万人まで減少しましたが、20233月期の決算発表においては、入園者数も2,209万人まで回復し、20243月期目標では2,500万人を見込んでいます。まだまだコロナ禍前の入園者数には及ばない中での入園料の値上げですが、業績予想を見ますとテーマパーク事業とホテル事業を合わせた売上高を5,400億円と見込むなど、過去最高の実績を目指して取り組んでいるようです。

 増収を見込む要因としての大きな点は、一人一人の体験価値を向上させることに力を入れていることです。東京ディズニーリゾートの入園料は繁忙期、閑散期に応じて価格が変わる変動制となっていますが、最高の10,000円を超えると若年層はなかなか行くことができません。入場者は減少することが予想されますが、一方、待ち時間の解消や混雑の緩和につながることから、その金額でも入場できる人にとっては満足度が向上します。日々来店客で溢れかえるショップにおいても余裕を持って買い物ができることから、グッズやお土産の購入も増えることでしょう。実際、一人あたりの売上高を16,000円と設定しているようですから、家族4人で土日を過ごすと、東京ディズニーリゾート内だけで二日間で約150,000円もかかることになります。しかし入園者がそれだけの体験価値を得られると感じれば、決して高い金額ではないのかもしれません。一方、平日や自由な予定で閑散期に行くことができる人は、従来通りの金額で入場できることは安心感につながるでしょう。

 企業のマーケティングの世界では、顧客体験価値を重視した取り組みが行われています。ポイントとしては、①五感を通じて得られる「感覚的価値」、②信頼性や安心感といった「情緒的価値」、③興味や好奇心に訴えかける「創造的価値」、④新しい体験を味わえる「行動価値」、⑤その中(集団)に属していたいとする「帰属価値」の5つの要素が重要とされています。顧客体験価値を高めることにより、その体験に満足し、再びそのサービスを利用したいと思い、多少高い金額でも安心感を求めて何度も訪れることにつながるというものです。歯科医院においては、治療後のメンテナンスにスムーズに移行できるかどうか、あるいは昨今の材料費の高騰による自由診療費の見直しを図る際などには、患者さんの体験価値が向上されているかといったことや、歯科医院への要望が満たされているかどうかが大きく影響することでしょう。

(つづく)

玉ヰニュース 2023年 9月号より転載。

№547 ノンバーバルコミュニケーション

ノンバーバルコミュニケーションとは、顔の表情や体の動きを使ったジェスチャーなどにより、自分の感情や考えを相手に伝えようとすることを指します。ノンバーバル=non verbal(言葉、言語)、つまり言葉や言語を伴わないものですから、声の調子や目の動き、顔の表情のほか姿勢などによってさまざまに表現をすることができます。自分のことをより相手にわかってもらうための手段でもありますが、一方で動きを抑えることによって、うまく自分の感情を隠すこともできるわけですが、これらを意図的に行うことをノンバーバルスキルといいます。

医療現場においてのコミュニケーションは、診療中にはマスクをつけることから、目の動きや声の調子がより重要な要素となります。患者さんは、ドクターやスタッフからの言葉による説明が大切であることは疑いようがありません。しかし言葉に加えて、和やかな雰囲気の表情であったり、柔らかな声のトーンによって安心感を得たり、不安を抱く気持ちを和らげることができるものです。バーバルな部分とノンバーバルな部分からの情報を結びつけながら、より確かな多くの情報を得ようとしているのです。

筆者は時おりスタッフ採用面接を行うことがありますが、コロナ禍においては否応なくマスクをつけていたために、履歴書の写真とマスクで覆われた表情が合致しないと感じることがありました。いろいろな質問を投げかける中で、その答え方の様子や声のトーン、あるいは目の周りの表情からどのような人物なのかを必死で探ろうとしたものです。あまりにもわかりにくい場合は、透明なアクリル板を盾に、マスクを外して面接をすることもありましたが、相手を知ろうと思えば言葉に加えてノンバーバルなコミュニケーションが重要となる場面でした。

人は、言葉よりも視覚や聴覚から得られる情報の方が多く、約9割を占めるという実験結果もあります。コロナが落ち着き、マスクを取ることや対面での会話が増えてきた昨今、言葉とともに非言語的なスキルを上手に組み合わせて円滑なコミュニケーションを図り、患者さんやスタッフとの信頼関係がより強固に築かれることを願います。

(つづく)

玉ヰニュース 2023年 8月号より転載。

№546 金融機関と上手に付き合うために

デンタル・マネジメント・コンサルティングが独自に調査する資料においては、約7割の歯科医院が金融機関から事業用資金の融資を受けています。今は借入がなくとも、過去に借入れた実績がある歯科医院や、今後設備投資を計画する上で借入を検討する歯科医院を含めると、ほぼすべての歯科医院において銀行からの融資を経験しているのではないでしょうか。

 融資を受けていますと、銀行担当者が月次の巡回で訪問をしてくれることが多いと思います。その際、毎月の経費支払手続きや税金の納付あるいは現金出金に関しても訪問で行ってくれるため、銀行窓口に赴く機会も少なくなると思います。実はこのときに、銀行担当者は融資先の状況をつぶさに確認することになります。単に事務的な手続きのために訪問するのではなく、外観の状態や室内の様子あるいは什器備品の管理レベルのほか、院長とスタッフの会話、患者さんの様子、スタッフの表情にいたるまで、耳から入る情報および目から入る情報についてはくまなくチェックしているといっても過言ではないでしょう。金融機関からは決算ごとに決算書の提出を求められると思いますが、数字から読み取れない情報については、訪問を重ねることによって細かく掴もうとしているのです。

 担当者は、融資先を巡回する役割とともに、新たな融資を行う営業マンとして日々融資の候補企業や事業所を探しているわけです。それがすでに融資を行っており、医院内部に入ることが許され、次の設備投資の機会をいち早くつかめる事業所ということであれば、なおさら積極的に情報収集を行うというものでしょう。歯科医院にとっても、情報がまったくない新たな借入先よりも、医院の事情をよく知る金融機関の方が融資判断は正確です。もちろん新規取引を行うことにより、既存の金融機関よりも一時的に有利な条件を出す金融機関もあるでしょう。しかし審査に対する資料の提供や、審査要件を一から判断する審査部の承認を得るための作業などを考えると、融資条件も遜色なく医院が必要な時にすぐに来てくれる金融機関はありがたいものです。

 金融機関は、得意先との癒着の危険性を排除する意味からも、一定期間ごとに配置転換を行っています。したがってやっと医院を理解してくれたと思った担当者が数年おきに変わりますし、担当者によっては対応の良し悪しが変わることがあります。そこで金融機関に対しては、医院の情報が途切れることがないように、担当者が変わったとしても医院の引継ぎを重視してもらうように要望してください。融資の金額や本数、利率や返済期間などは手元の端末を調べれば即座にわかりますが、各担当者が医院と関わる際にどのような点を意識してきたか、あるいは院長がどのような考えで診療を行っているかということについては細かく引継ぎを行ってもらうべきです。時には担当者が来院する際には院長が同席し、現在の経営状態や今後の計画などについても開示しておくとよいでしょう。貸してやる、借りてやるという関係よりも、必要な時にいつでもすぐに、それもよい条件で借りられる関係を作りたいものですが、そのためには偽りのない医院の姿を共有することが近道といえるでしょう。

(つづく)

玉ヰニュース 2023年 7月号より転載。

№545 我が国の健康保険の行く末

2023420日、健康保険組合連合会から「令和5年度健康保険組合予算早期集計結果の概要」が発表され、おもに大企業の従業員で構成される健康保険組合において、2023年度予算で約5,600億円の赤字となる予想であることが発表されました。全体の医療費が増加していることのほか、特に団塊の世代が後期高齢者に差し掛かっていることにより、後期高齢者医療への負担が大きくなることが原因のようです。健康保険組合は、企業が単独で構成する場合には700名以上の被保険者がいれば成立し、二つ以上の事業場で構成する組合の場合は3,000名以上の被保険者がいることが要件となりますが、健康保険組合連合会発表の資料によると、現在全国には約1,380の健康保険組合が存在しています。そのうち約8割の1,093の健康保険組合で赤字を見込むこととなり、前年度より130組合増加する予想となっています。一方、黒字となる健康保険組合は287組合を見込んでいますが、こちらは前年度より137組合減少しており、黒字総額も前年度908億円に対して令和5年度は405億円へと大幅に減少する見込みです。

 このたび政府が進める「全世代対応型の持続可能な社会保険制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」が国会で審議が行われ、2023512日に参議院で可決されました。概要として、①子ども・子育て支援の拡充、②高齢者医療を全世代で公平に支え合うための高齢者医療制度の見直し、③医療保険制度の基盤強化等、④医療・介護の連携機能及び提供体制等の基盤強化が柱となっています。

①においては、後期高齢者医療制度からも出産育児一時金の一部費用を支援する仕組みをつくろうとしています。②の中では、前期高齢者の医療給付費を保険者間で調整する仕組みにおいて、報酬水準に応じて調整する仕組みを導入しようとしています。つまり、保険加入者の賃金が高い健康保険組合ほど保険料負担が大きくなるということです。中小企業よりも大企業で勤める方が総じて給与水準は高いと考えられますから、大企業ほど健康保険料の実質的な値上げの状況になるといえるでしょう。中小企業に勤務する被保険者の多くは協会けんぽに加入していますが、組合健保は協会けんぽより保険料率が低い傾向がある点がメリットの一つでもあります。今後は、報酬水準に沿って保険料率が上がり、協会けんぽよりも保険料が高くなるようであれば、大企業が独自に健康保険組合を設立する意味が薄れてくることが考えられます。

さらに④においては、医療法人に対して収益や費用などの経営情報を都道府県に報告することを義務化し、当該内容を整備してデータベース化するなどの内容が含まれています。医療法人の報告制度については202381日から施行されることになっており、医療法人歯科医院の事務負担増加などが懸念されます。膨らみ続ける医療費の財源確保に向けて、現役から高齢者まで世代を超えて負担し合うことのほか、医療機関側の協力も含めたあらゆる手段が検討されようとしています。

(つづく)

玉ヰニュース 2023年 6月号より転載。

№544 リスキリングを考える

近年、企業を中心にリスキリングという言葉が頻繁に使われるようになりました。「re-skilling=学び直し」ということで企業においては広く認知されているようですが、新たなスキルや知識を身につけ、急速な時代の変化に速やかに対応していくということを指しています。特に「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と呼ばれる、デジタル技術を用いることによる新しい業務の仕組みや、まったく新しい事業の出現に対応するために、我々人間も新たなスキルを身につけて対応しましょうということです。

リスキリングを成功させるためには、誰か一人で頑張ればよいものではなく、組織全体あるいは企業全体で進むべき方向を定めて取り組む必要があります。それぞれが気の向くままにスキルを身につけるのではなく、将来を見据える中で組織全体において何が必要かを考え、そのためにどのようなスキルを得る必要があるかということです。いずれも組織ぐるみで取り組み、業務効率の向上や新しい分野での事業開発につながることを期待しているところです。

日進月歩の医療分野に置き換えますと、歯科医師の先生方は、新たな治療方法の習得や治療技術の進歩に対応するべく学会に所属し、スタディーグループで研鑽を積み、日々新たなスキルを身につけておられます。デジタル化に対応する意味ではないにせよ、いうまでもなく日常的に「リスキリング」を行っているといえるのではないでしょうか。それら新たに学んだ技術や知識を、臨床において活用する上で大切なことは、リスキリングの成功と同じように、院長一人が頑張るのではなく医院全体で取り組む体制を作り上げることにあります。

新しい治療方法を取り入れるためには新たな機器や設備が必要です。取扱い方法やメンテナンスの仕組み作りにとどまらず、保管場所の選定や保管方法の習得まで、実際に取扱いを行うスタッフを含めて対応を考える必要があります。各々が独自に取り扱い方法を身につけるのではなく、業務に携わる誰もが同じようにスキルの習得を図ることにより、より合理的な方法が生まれ、より効率のよい取り組みが発見されることにつながります。

一方注意すべき点として、人は環境が変わることに強く抵抗を示すことが多いものです。今より仕事が増えるのではないかという不安、あるいは効率化によって自分が担う仕事がなくなるのではないかという不安など、スタッフは今ある状況が失われるのではないかということに意識が向きます。そのことが今後働く上でのモチベーションの低下につながらないように、新たな分野に挑戦することの意味、同時にリスキリングを行う必要性を丁寧に伝えていく必要があるのです。

よりよい歯科医院にするために、目指す次のステージを明確にして、医院全体で一緒に取り組むことを意識してもらうことが必要です。学んだ技術や知識が臨床の中で活かされるということは、単なる知識や技術の導入ということではなく、日々変化する患者さんの希望に応えることであり、ひいては自分のスキルアップのために学ぶことでもある、つまりはリスキリングであるということを強く意識して取り組んでほしいと思います

(つづく)

玉ヰニュース 2023年 5月号より転載。

№543 歯科医院における人材確保の可能性

長きに亘り執筆をしてまいりました前任の稲岡勲氏から引き継ぎまして、今月から執筆をさせていただきます門田(もんでん)と申します。稲岡氏のもとで歯科医院様に関与するようになり約20年強が経ちましたが、比較的安定と言われる医療分野においても変化は避けられず、常に時代に合わせた舵取りが重要と感じます。引き続き「歯科医院経営を考える」という標題で進めてまいりますが、先生方のお役に立てる内容をお伝えできるよう尽力してまいります。

先日、労働組合と経営者側が毎年労働条件について協議を行う「春闘(春季生活闘争)」において、大企業を中心に労働組合側の要求を満額で受け入れる回答が相次ぎました。協議内容の主たるテーマは月給や賞与に関する賃上げに関するものですが、前年比3%から高いところでは5%を超える過去に例を見ない水準となりました。総務省が発表する最新(20231月分)の消費者物価指数によると、前年同月と比較した場合の上昇率が4.3%となったことから、春闘でも労使ともに賃上げの機運が高まったということでしょう。

 一方で、就業現場における人材不足は深刻な状況にあると言えます。業種を問わず、企業規模の大小を問わず、常に熾烈な人材争奪戦を繰り広げている昨今ですが、その中の資本・資金力に乏しい中小事業所においては、人材を確保し育成していくことは切実な問題です。歯科助手を養成するある専門学校では、入校する学生が2年続けてゼロだったことから学科を維持することができなくなり、やむなくその学科を廃止したということです。担当教官曰く、少子化が進み、職業の選択の幅が広がる中で、「歯科助手」という職種の魅力を伝えきれなかったと言って唇を噛んでおられましたが、職業の魅力あるいは職場の魅力を、どう働く人へ伝えていくかは今後強く問われることになるでしょう。過去には、歯科医院の数が多くなりすぎたことから、患者さんを確保できないのではないかという心配がありましたが、次なる心配は歯科医院を維持するために、スタッフを十分に確保し続けることができるのかどうかということです。

 そうした中で今後歯科医院を安定的に維持していくためには、家業から脱却し一企業として組織を作り上げていく意識が必要ではないでしょうか。労働基準法においても法令順守が強く求められるようになりましたが、一企業として労働環境の整備に真正面から向き合うことにより、より魅力のある職場として他業種からも優秀な人材を確保できる可能性が広がります。とりわけ、今は社会保険が完備されている歯科医院や、就業規則等が整備され労働環境が整う歯科医院が志向される状況です。また、中堅・中小企業の新人社員を対象に行われた「入社した会社を選んだ理由」の結果では、仕事の内容がおもしろそう(42.6%)、職場の雰囲気がよかった(39.8%)、自分の能力・個性が生かせる(35.5%)という回答が、待遇(給与・福利厚生等)がよい(25.3%)を大きく上回っています。給与条件だけではない小規模事業所ならではの魅力の発信は重要なポイントです。大企業並みの労働条件の実現は難しくとも、従業員が長く安心して働くことができる職場として、多くの人材が歯科医院を目指すようになることを期待したいと思います。

(つづく)

玉ヰニュース 2023年 4月号より転載。

№542 認知症を考える

仕事の関係で若いころから歯科の先生とお会いする機会があり、歯を大切にするという習慣が身につき、84歳になった今でも自分の歯は26本あり、毎晩寝る前には15分かけて歯を磨くことにしている。お蔭で少々硬いものでも噛み砕くことができ、なんでも食べられるからお蔭で病気らしい病気をしなくなった。もう10年近く続けているのは、朝起きて1時間近く歩き、帰ってきて水をかぶるというのが習慣である。若いころに結核になり、また胃が垂れ下がっていると言われて、毎日のように医者通いをしていたが、今は胃も正常に戻り、お蔭で風邪をひくことがなくなった。ただ最近の悩みは記憶力の低下である。顔は浮かぶが名前が出てこないとか、過去の経験や体験が思い出せないといった悩みである。普段の生活の中で悩みを抱えて悶々としていたが、先月22日に奈良県歯科医師会による一般県民を対象にした「お口の健康から考える認知症」という公開シンポジュームが開催され早速出席させていただいたが、非常に内容の濃い講演会だった。元日歯会長の大久保先生による「8020運動」は国民運動として成果を得たが、「最も重要なことは多くの歯を保った高齢者がどのように人生のラストステージを自分らしく心豊かに暮らしていけるかにあり、それを支えるのが歯科関係者の役割だ」という言葉は重い言葉だと思う。また末瀬先生の講座では、口腔内の残存歯数と認知症の発症リスクの研究では、歯の数が20本以上の人に比べて、歯がほとんどなく、入れ歯を装着していない人の認知症発症リスクは1.9倍であるという。噛む行為によって脳が活性化するためで、咀嚼によって脳の記憶をつかさどる海馬の神経細胞は増えるが、口腔ケアを怠ると、歯が失われていき咀嚼機能が低下し、必要な栄養が摂取できなくなり、認知機能や運動機能が低下するという。歯周病と認知症とのかかわりについてもアルツハイマー型認知症の人の脳内(海馬)から歯周病原因菌が検出されているという。また認知症の両親を25年間にわたって介護してきた経験を基に「認知症にやさしい社会を」の運動をされているNPO法人ハート・リング運動の早田専務理事の体験談には身につまされる思いがした。介護生活を経験していえることは、①認知症を「あってはならない」ことと捉えて否定し続ける限り苦しみは続くこと、理解し寄り添うことで介護する側も、される側も楽になれること、②「食べる」チカラと食べる生きがい、栄養を守ることの大切さを再認識するという言葉が身に染みた。

長期にわたって「タマイニュース」の原稿を担当させていただきましたが、今後はデンタルダイヤモンドのQ&Aを担当している門田亮氏に後を託したいと思います。長い間ご愛読いただき誠にありがとうございました。

玉ヰニュース 2023年 3月号より転載。

№541 不況下の物価高騰

ウクライナへのロシア軍の侵攻が始まって以後、世界の治安状況が極めて悪くなってきており、東アジアの軍事情勢も大きく変わりつつある。それに並行して生活上不可欠の燃料や食料がスムーズに海外から入らなくなると同時に、円安で輸入物価がじわじわと上がり始めており、それがじりじりと消費者物価の上昇に表れている。日本のカロリーベースの総合食料自給率は38%と言われるが、食料の海外依存の大きさから見て、今後世界経済の状況によっては極端な輸入の物価上昇、生活費の高騰を予想せざるを得ない。日銀の令和410月の企業物価指数は、対前年比で8.2%の上昇、輸出は13.0%、輸入は36.5%の上昇となっている。これが今後実際の物価に影響を与えることは明白であり、これが更に消費者物価に反映されることは確実である。例えば国は今年の4月に小麦の民間への売り渡し価格を17%値上げしたが、ロシアのウクライナ侵攻への影響が出る前の価格だと言われている。それ以後の価格は据え置いたままとなっており、令和54月に再改定の予定だというが、その場合はウクライナ、ロシア双方の輸出停止後の影響が確実に出てくるのではないか。さらに電力会社が3月から3割程度の値上げを国に申請しており間違いなく引き上げられるだろう。新年にはいって諸物価の値上げラッシュが続く可能性が避けられない。一方で台湾を中心とした東アジアの政治状況が極めて危機的状況になってきており、他国の支援を前提にした我が国の防衛政策は絵に描いた餅になりつつある。防衛の専門家による日本の防衛予算費の増額は5年間の予算額として48兆円が必要と提言している。こうして急に浮上してきた巨額の財政問題について財務省は法人税の引き上げ、高所得者の所得税引き上げ、及び東日本復興税の1%を転用(復興税を1%引き下げ延長する)するとし、防衛費については令和5年に先送りをしている。ただこうした巨額の資金を調達する方法は、増税以外に一つしかない。この経済状況で増税はあり得ないから国債(国庫債券)を発行して日銀に引き受けさせる方法だ。ただ財政法第5条で「日銀に引き受けさせてはならない」と禁止しているが、「但し特別の理由がある場合には国会の議決を得た範囲内で」認めている。変動為替相場制度を採用している日本で、自国通貨建て国債が債務不履行になる可能性はゼロに等しいから早急に実施すべきである。政府が国債を発行し、それを政府の子会社である日本銀行が買い取れば、償還(返済)や利払いの必要性がなくなるからである。但しインフレへの配慮は必要であるが・・・。

                                   (つづく)
玉ヰニュース 2023年 1月号より転載。

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