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コラム『歯科医院経営を考える』

デンタル・マネジメント・センター代表 稲岡 勲

バックナンバー 2013

№435 症例検討会

大阪市内で開業しているF歯科医院では、衛生士と分っていても、患者から「先生」と呼ばれ尊敬の眼差しを受けていると聞いたことがあるが、院内にそのような雰囲気があれば、スタッフも自然と勉強への意欲を高め仕事への意欲も高くなるものである。ただそのレベルまで持っていくために何が必要か、どうすればよいのか?当然ながら院長自身の医療技術や歯周予防への関心と意欲、同時にそれへの実践が不可欠である。今年の夏に実施した収支アンケート調査の分析を進めているが、衛生士が2名以上いる歯科医院の収入が比較的安定しているという結果が出ている。全ての医院で言えることではないが、これは衛生士により患者の口腔衛生意識を高め患者自身の歯への健康観を作り上げて、患者が自発的に歯科医院に通院してくるからである。1日の患者数の3~4割がメンテナンスのために通院してくるようになれば、収入は実に安定した状況になる。そこに至るまでには院長の歯周・予防への取り組み姿勢が不可欠だが、衛生士と一緒に研修会や講演に出かけ学んでいただき、院長自身が歯周・予防への知識を高めていただく必要がある。何故か?院長が衛生士に丸投げしてしまい意識、関心を自分の専門の補綴に向けたまま衛生士の業務や問題に無関心だと衛生士の能力が伸びなかったりチームワークが崩れたりする。また逆に衛生士の能力が高くなってくると院長の診療方針に対して批判してくる場合がある。これは医院の理念やビジョンに歯周・予防への取り組み姿勢が明記されていないか、明記されていてもその実践面の行動が伴っていないからである。つまり院長自身の意識がそこまで高まっていないからである。その意味で院長(歯科医師)と衛生士による症例検討会を持ってそれぞれの立場で議論しあう機会を作って勉強していただくことを勧めたい。最初からレベルの高い症例検討会にならなくても、院長の方から質問や問題を投げかけて調べたり、勉強しないと答えられない雰囲気を作るとともに、よい回答や案には賛辞を送り励ます等、対等に議論する雰囲気を作ることが大切である。このような症例検討会を持ち議論することで補綴領域の問題と予防領域の問題の接点が具体的に明確になってくるはずである。しかも患者の人間性(性格、嗜好、好み、考え等)の領域まで踏み込んでどのような治療や口腔衛生指導を行うことがその患者にとって最良か、等の深い議論をするとともに、衛生士がその患者にどのように話してあげるべきか、どう指導するべきかまで視野に置いて議論することを勧めたい。こうしたスタッフと密接に議論しあいながら診療を勧めていくには、①院長自身が実行するという覚悟を決めること、②素直にスタッフの意見に耳を傾ける、③イエスかノーかの結論を早く出すことと即行動を起こすこと、④必ず成功するという思いを描き信念を持つことである。

№434 歯科医業の承継 

歯科医院の事業承継は、院長の医業に対する理念、考え、方針の承継、患者の承継、歯科医療事業の承継、医療従事者の承継、医療器械器具設備の承継といった側面がある。親の診療所、患者、スタッフ、治療器具等々の事業資産を子供に引き継いで継続して歯科医院が維持されれば最高である。ところがこれが上手くいかない。人口密度の高い立地条件の下町で、親子(親64歳、息子35歳)で3年間一緒に診療してきたのに、突然息子が出て行ってしまい、1日45人の患者を診ることができず、急遽勤務医を募集して何とかしのいでいるという歯科医院がある。歯科医院という医療事業の承継は親も子もともに歩み寄りの姿勢がないとなかなか難しい。特によく勉強され研究熱心で患者に受けの良い院長ほど承継が難しい。研究と熟練を積み重ねてきた親からみれば、口下手で簡単な治療にもたもたして時間ばかりかけている息子の治療につい口が出るというのも分からないわけではないが、自分と比較して息子が拙く見え、ついつい厳しい言い方になるからである。それほど厳しい言い方はしていないというが、院長に仕えた勤続20年、25年のベテランのスタッフが4~5人おり、彼女からみれば息子がどの程度の技術力があるかよく分かり、院長の姿勢につられてそれがつい態度に出てくるのである。それを肌で感じるから息子は面白くなくなり飛び出してしまったのだ。最近の新卒歯科医師の研修制度では治療の実力を上げる制度になっていないように思うが、研修医制度を終了したらできれば他の医院で3年程度の研修を積ませた方が良いと思う。それもできれば院長に近い治療方針の医院が望ましいが、その段階で子供がどのような方針や希望を持っているのかの意見をよく聞いておくべきだ。上記の先生の場合、毎週のように研修会や講演会にでかけて勉強しておられるし、治療が上手と近隣でも評判になっている。少なくともそれが院長の生きがいややりがいになっており、その自信が息子を寄せ付けない雰囲気になっている。将来は息子に譲りたいと思っていても、現状では息子を育てるという心境にはなっていないのである。意外に子供と診療のことについてじっくり話をしたことがないという院長が結構多いが、一緒に診療を始めたらできれば親子で症例研究会を持つことを勧めたい。それも親が主導するのではなく、相互に意見や考えを話し合うというのが最高だと思う。症例検討会ではあくまで治療の理論になるが、実際に治療してみてどこが難しいのか、院長はどのような治療をしているのか、自分はどこが拙いのかが理解できれば自ら率先して技術習得に努力するものである。忘れてならないのは、子供の治療内容について良い点は必ず褒めることである。母親がいれば母親の役割も重要で、院長や子供の直接言いにくい内容の話を間に入って伝える役割が極めて重要である。間違って子供の方に肩入れして、父親である院長に食って掛かる等という態度をとると家族が崩壊する。「お父さんは治療について文句を言っているけど、早く1人前になって欲しいのよ」くらいしておくべきである。

№433 高齢化率の上昇と医療費 

日本の高齢化率(全人口に占める65歳以上の人口比)が急激に上昇している。2010年における高齢化率は22.7%で世界最高の率だと言われている。(第2位はドイツで20.4%、3位はイタリア、ギリシャの18.6%)今後も高齢化率はさらに高くなり人口問題研究所の推計(出生中位、死亡中位で推計)によれば2020年で19.1%、2030年-31.6%、2040年-36.1%となり2080年には41.2%になり、率、スピードともに世界最高である。理由は日本人の寿命が延びたことと子供の出生率の低下である。現実を受け入れるしかないが、それを逆手に取って売り上げを伸ばしている業界もある。流通業界の大手では食品関連のデリバリー(配達)に力を入れてきている。セブンイレブンが「セブンミール」という名称で惣菜や弁当を宅配しているし、マクドナルドの実験店では宅配ビジネスを始めているところもある。帝国データバンクの資料によれば、食材宅配会社の数は全国で2058社に達するという。これには店頭で購入した商品をその購入した人の自宅まで宅配する会社も含まれるというが、その売上額は2010年度で11兆5070億円になるというからその大きさに驚く。しかもこの統計には出てこない個人の商店でなじみの顧客の買い物を自宅まで届けている商店も含めれば膨大な金額になると予想される。また日本生活協同組合連合会の2010年度の経営統計では個人宅への宅配供給高が、店舗での供給高を初めて上回ったという。いずれにしても宅配が年々増加するのは、一つには主婦が働きに出るようになり、買い物ができないから宅配が増えるということと、買い物に行けない、ないしは行かない高齢者が増えてきて宅配に頼る家庭が増えてきている証左でもある。ヨシケイという夕食食材宅配会社の場合の例を見れば、高齢者向けに冷凍弁当3食セット(栄養士がカロリーや栄養等考えメニューを考え調理されている)を990円で配送料無料の宅配をしている。このように増え続ける高齢者をプラスの消費力、需要増にどう結び付けていくかが我が国にとって重要な課題だと思う。ただ医療に限って言えば、GDP(国内総生産)に占める医療支出の割合が9.5%(2009年)とOEDC参加国34ヵ国中19位でアメリカの17%の約半分でしかない。アメリカの場合は、公的保険は高齢者及び生活保護者向けの保険しかなく、また医療訴訟も多いからその分医療費も高くなるのだろうが、日本の医療費の場合は公的医療保険でかなり厳しい制約が課せられているからではないかと思う。GDPに対する医療費の比率が低いということは医療費の効率が高いという面もあるが、人口の高齢化率から見てももっと医療費が大きくなってもよいのではないか。特に最近の歯科医療においては歯周病や糖尿病の関係に見られるように口腔疾患と全身疾患の関係が解明されてきており、今後の超高齢化率の社会が実現する前にこうした医科、歯科連係による治療を進め、80歳、90歳になっても健康に過ごせる健康づくりや予防にもっと医療費を使うべきではないか。

№432 マイナンバー制度の問題点 

税と社会保障の情報をまとめて管理するための共通番号「マイナンバー制度」の導入が平成25年3月24日の通常国会で法案が成立、平成27年秋までには「個人番号」(11桁の数字)と「法人番号」が配布され、平成28年1月から本格的に運用される見通しとなった。これは我が国の場合、基礎年金番号、健康保険被保険者番号、パスポートの番号、納税者番号、運転免許証番号、住民票コード、雇用保険被保険者番号等を、縦割り行政の各行政機関が個別に番号を付けていて、国民の個人情報管理に関して重複投資をしており、行政サービスを包括するものが存在せず、無駄な投資が多いとされている。行政をもっと効率よく運営していくためには国民に背番号を付けて一元管理することは、今の時代不可欠なことは理解できるが、本当に安全なのか?いささか不安を感じざるを得ない。アメリカでは社会保障番号、イギリスが国民保険番号、イタリアが納税者番号、ドイツが税務識別番号と先進国のほとんどは国民に番号を付けて税務や社会保障の充実のために管理している。(但しフランスには納税者番号もない)韓国では1968年から国民5011万人の住民に全て住民登録番号が付与されており税務はもとより、社会保険、年金、住民登録、選挙、兵役、教育、諸統計に利用されているが、2011年7月、中国のハッカーに全国民の7割に近い3495万4887人分の個人情報が盗まれるとういう事態が発生し、大問題になり再検討すべきだという議論が起こっている。わが国の場合、2002年に導入された「住民基本台帳ネットワークシステム」(通称「住基ネット」)は3000億円が投資されて制定されたが、問題とされたのは、①ハッカー等による住基ネットへの不正侵入、②住基ネットにかかる構築費用や運用経費に対して国民に提供されるサービスがあまりにもお粗末(平成24年3月末の時点で発行されている住基カードはわずか656万枚である)、③住基法の国会審議に際し、政府は個人情報保護に「万全の措置を講じる」と約束し、同法の付則に「所要の措置を講ずる」との文言が挿入されたが、「個人情報保護法」を未制定のまま住基ネットをスタートさせたという事実、④国家による国民の監視・管理につながる危機性等が指摘されている。「マイナンバー制度」の導入で全国民に背番号を付けて、住基ネットに結び着ければ、全てについて名寄せが可能となる。社会保障制度との関係から、所得だけではなくその個人が所有する不動産や金融資産の把握にまで及ぶと④の問題が浮上してくる可能性もあり、その運用面でどこが行政に抑制監視をするかが大きな課題だと思う。歯科医院の立場で言えば、患者の一人一人に背番号が付加されるからレセプト等の書類作成が重要になるし、取扱いを厳重にしないと個人情報保護法に抵触し、患者から訴訟を起こされるリスクが大きくなると思う。

№431 子女の事業承継 

今年の日本歯科医療管理学会総会・学術大会は朝日大学で実施されたが、筆者にとって興味を引いたのは「歯科医院の事業承継」問題であった。講演された若い先生は、初代が開業してからすでに100年以上続いており、第5代目になるという2人の先生が講演された。それに対して税理士の角田祥子先生が講演とコメントをされていた。こうした歴史のある歯科医院の承継事例は案外スムーズにいくものである。それはその医院の歴史とともに、通院してくる患者層やまたその医院に脈々と流れている経営姿勢が若い息子や娘に浸透しているからである。勿論院長が身体でそれを教えてきたからでもあるが、以前に東京・台東区で開業している3代目の若い女の先生を訪問したことがあるが、何故歯科医師になったのかという質問に対して、ある日診療室に入ったら普段の父親とは予想もつかない優しい態度で患者に接しているのを見て父親を見直し歯科医師になろうと決心したという回答が印象的だった。理屈ではなく案外そのような父親の背中を見せることが大切だと思う。高校生ぐらいになれば、夏休みには医院に来させて手伝いをさせるぐらいのことはした方がよいのではないか。ただし子供でも意外に鋭い目で見ている場合があるから、父親の態度が逆に裏目に出る場合もあることを承知しておくべきだ。また少なくとも一旦家庭内に入ったらどのような患者であれ、中傷誹謗し批判することは絶対にするべきではないし、院内の悩みや問題を家庭内に持ち込むべきではない。最近はどうしようもない患者がいるが、毅然とした態度で受けておればよいことで、周囲からみればどちらが無理難題を言っているかがわかる。総じて事業承継問題で躓くのは、父親が上からの目線で子供を見て、つい自分の価値観を押し付け批判するからである。子供と言えども国家資格は持ってるから技術は劣っていても自尊心がある。それを頭から批判すればカチンとくる。事業承継でもっとも重要なことは、診療姿勢と患者を引き継ぐことである。最近は歯周・予防メンテナンスへの取り組みが大きくなってきているので、その意味でも父親との考えの相違が大きくなっている。だとすればなおさらのこと子供の考えをじっくり聞いて、親としての立場ではなく先輩としての立場で話し合いを持つことだと思う。引き継ぐ前に内装や器械の更新等実施するケースが多いが、何もかも親の資金で購入して借金ゼロにして引き渡す先生が多いが、無理をする必要はない。ある程度の借入はある方が良いと思う。後継者に引き継いだ後は、経営について一切口出ししないという鉄則が必要である。子供の診療や治療方針が親のそれと違いがなければ問題はないが、異なる場合スタッフの存在が子供の重荷になる場合がある。その場合は父親の退任とともにスタッフを全員解雇し、その上で退職金を支払い、子供が改めて必要とするスタッフを採用するという方法を採用した方がよいという場合がある。

№430 自医院の経営状態の把握を 

月刊誌「ZAITEN(財界展望)」、「週刊ダイヤモンド」がともに歯科医の問題を取り上げている。そのタイトルが「歯科医倒産ラッシュの悪夢」(ZAITEN)、「もうダマされない!歯医者の裏側」(週刊ダイヤモンド)というものだ。「もうダマされない」等という表現はマスコミの読者獲得を意図する常套手段の見出しだ。このような雑誌がよく歯科医を取り上げるのは歯科の先生方の反応が敏感で、こぞって買い求めるために売り切れ書店が続出する場合があるからではないかと思う。発行部数を増やすには格好のテーマなのであろう。週刊ダイヤモンドの方は、厚労省の「歯科疾患実態調査」や「医師・歯科医師・薬剤師調査」「医療経済実態調査」等を参照する等記事の中身の信頼性は確保されているようだが、掲載されているインプラント対応リスト等にはインプラント治療の実績豊富な先生の名前がでていない等疑問を持たざるを得ない。筆者の知り合いの先生もほとんど買って読んでいる。他の医院の動向が気になるという心理は理解できるが、自己の医院の経営にプラスする情報は皆無である。先ず自己の医院の実態をしっかり把握することが重要ではないかと思う。少なくとも5年先の経営環境を想定して、何をどう変えていくべきかを考えるべきである。その場合、①保険制度はどうなるか、②一般的な経済状況、③地域の経済状況(景気がよいかどうか)、④地域住民の人口と年齢構成、⑤近くの学校の生徒数、せめてこのくらいの情報は確保したい。これらの情報を入手しても、今すぐどうするというわけではないが、5年先にはどうなるだろうと想定してみることである。市区町村の役所に行けば、人口の動向はすぐわかる。増えつつあるのか減少しているかもすぐわかる。今、開業間もない先生を見ているが、日々の診療で手一杯という状況で外部に目を向ける余裕がない。忙しく大変だが、それに埋没してしまうとそれ以上は伸びない。治療技術については研修会等に出席して上を目指して貧欲に学んでもらいたいし、歯科界で名の通った先生の治療を見学するよう勧めている。自分の技術に満足してしまうと進歩がなくなってしまい、常に上を向いて挑戦する姿勢が必要だと思うからだ。同時にできるだけ地域の人達と顔を合せること、自治会や、地域の清掃等に顔を出して交流をすることを勧めている。10年前に比べると一段と経営環境は厳しくなっている。だからこそ患者を観察し見る(診る)ことに重点を置くべきである。他の医院を見てもしようがないのである。経営は最終的に経営係数として表現される。従って経営実績を見れば、どのような経営をされているかがほぼ見当がつく。今年も収支アンケート調査を実施しているが、参加を希望いただく先生があれば、下記にFAXいただければ、調査用紙を送らせていただき、12月頃には結果の報告と、先生の経営への簡単なコメントをさせていただくので参加いただきたい。(デンタル・マネジメント・コンサルティング FAX:0744-27-2489)

№429 アメリカの訴訟と先進医療 

先日アメリカで開業している歯科医院の先生の話を聞いた。アメリカは訴訟社会で患者との間で何かトラブルが発生するとすぐ訴訟になるという。だから決められた治療手順(標準化された手順)で、決められた薬を投与し、しっかり説明しないと問題になるのだという。しかもEBM(evidence-based medicine)良心的に根拠に基づいた最新最良の医学知識を用いることが前提になっているから大変だという。だから専門雑誌等で治療方法が紹介され、今までの治療方法ではなく新しい治療方法が紹介され、それが医療の現場では主流になっているような治療の場合、それを知らずに治療して患者の満足が得られなかった場合、患者からの訴訟で賠償金を請求されるというだけでなく、その時点で主流になっている治療方法で適切な治療が行われたかどうかが裁判で客観的に判断されるのだという。何とも凄まじい治療の現場ではある。だから如何に患者の訴訟から身を守るかが医療の現場でも重要な課題になっているのだろう。またアメリカのインプラント学会に所属している別の先生の話も聞く機会があったが、アメリカインプラント学会では、昨年、機材から材料、スタッフまで全て自前で準備して、ニカラグア(だったかホンジュラスだったか聞き間違っているかもしれない)に出かけて、現地の人でインプラントの植立を希望する人に無償で治療を実施したという。とにかく1週間ほど滞在して、その間に1日に何人もの人にインプラントを入れることでインプラントの腕を磨くというのである。この話も凄まじい。机上のシミュレーションをいくらやっても腕が上がるわけではない。それよりも実際に何十人かの開発途上国の人に多くのインプラント植立すれば確かに腕は上がるかもしれない。現地の人にインプラントを入れて、その後どうしているのかは聞かなかったが、患者の訴訟を前に、徹底して自己の腕を上げるためにそのような方法を実践している。こうした話を聞くと、われわれが理解している医療というものの概念がちょっと違って見える。医学の進歩のためにはそれも必要だということは理解できても、すんなり納得はできず、胸につかえるものを感じるのは何故なのか。確かにアメリカの医療のレベルは、極めて高いレベルの医療だとは聞いているが、全てがそうではないにしても、高い医療のレベルはそのような形で達成されているのだろうか。支払能力のある人への最高の医療レベルを保証する一方で、無保険者が4000万人もいるというから、その意味で我々日本人の医療に対する意識とは根本的に違うと思う。公的医療保険に見られるように、われわれには万人共通の、誰でもが受けられるのが医療だという意識が強い。アメリカ社会の訴訟の多さが、逆に医療の進歩を促しているのかもしれないが、アメリカのような高度な医療でなくても、差別なく誰でも受診できる医療の方がすんなり受容できるのは筆者だけだろうか。

№428 有能な人材と国際競争力

大分空港から大分自動車道を通って大分市に向うと、別府湾を一望のもとに眼下に見下ろす展望台がある。絶景の景色だが、その展望台のすぐ下に広大な立命館アジア太平洋大学の校舎や研究棟が見える。風光明媚な立地で日本でも最高の大学立地だと思う。この大学は学生数5,000人とそれほど大きくはないが、90か国から外国人留学生が2,644人と半数以上にのぼる(H20年5月現在)。2位の早稲田大学の2,608人、東大の2,088人に比べ学生総数に対する比率からすれば圧倒的に多い。(2014年に日本で学ぶ留学生は14万人)日英2か国語が自由に話せるよう教育されると聞くが、特にアジアの国々の多様な文化や社会、経済、環境等の内容を、国際経済学部は国際的人材の育成に力を入れている。こうした教育カリキュラムからアジアに進出している企業から求人が殺到して就職率が95%~97.5%という。大学の宣伝をするつもりはないが、こうした国際的な人材育成が今我国に求められていると思う。4月22日NHKの朝のTVで、世界の100か国から5万人の学生のデーターを集めて日本企業に紹介している会社が紹介されていた。インドやシンガポール、イギリス等一流大学を直接訪問してデーターを集め、日本企業100社に1,000人の外国人を送り込んでいるという。生命保険会社の人事部長は「国籍を問わず優秀な学生をどうしても採っていきたい。必然的に外国人採用が徐々に増えていく」といい、学生を紹介する会社の社長は「企業が世界で勝負していくからには、世界中の70億人から優秀な人材を獲得する方向に少しずつ変わり始めている」と言っている。一方2012年に文部科学省が50万人の高校に実施した調査で、「いつか留学したいと思うか」との質問に「留学したくない」と回答した高校生が58%だったという(日経)。その理由は「言葉の壁」(56%)、「経済的に厳しい」(42%)、「外国での生活や友達関係が不安」(34%)としている。一方留学支援をする自治体は12年度で39都道府県、前年比2倍に増えており、下村文部科学大臣も高校生の留学も2倍の6万人に、大学、大学院ではこれも現在の2倍、12万人に増やす方針という。行政府の方では留学生を積極的に増やそうとしているようだが、それに応えて留学したいという学生が多くないようだ。大学生とは違った意識なのかもしれないが、最近の高校生は堅実で現実的なのか、希望を聞いているのだから現実はどうであれ行きたければ「留学したい」と答えてもいいように思うのだが。欧米のように秋の入学を検討している大学が増えてくると、3月に高校を卒業して9月入学までの期間留学するという高校生も増えてくるかもしれない。歯科に限って言えば、保険医療は完全に国内に目が向けられているが、保険医療と国際的な歯科治療技術が徐々に遊離していくのではないかと思う。

№427 TPP交渉と医療制度改革

政府はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加に踏み切った。日本は貿易と技術で成り立っている国であれば、遅かれ早かれ参加せざるを得ない状況にあることも事実だと思う。従って今後の交渉次第ということになるが、国内産業保護を目的に主食の米に778%、小麦に252%の関税をかけて保護し、農業者個別所得補償制度では農業外収入が平均450万円もある零細農家まで補償する必要はないと思う。こうした一連の政策が米農家の競争力を弱め、経営体質を落としてきた。しかしその政策が今後裏目に出る可能性がある。国の食料安全保障という視点も重要だが、体力を弱める政策では元も子もない。これを機に農業政策の根本的に見直しが不可欠だと思う。同時に司法、医療、薬品、教育、郵政に関する問題や人の移動(入出国)の自由化もTPP交渉で課題になってくる。特に保険制度についてアメリカのUSTR(アメリカ合衆国通商代表部)は「医療保険制度を民営化するよう強要する協定ではない」、また「混合診療を含め公的医療保険制度外の診療を認めるよう要求する協定ではない」としているが、そもそもTPPはシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4ヶ国で調印し、締結した協定であり、アメリカ自身も加盟交渉の途上にある。アメリカの他にオーストラリア、カナダ、メキシコ、マレーシア、ベトナム、ペルーが加盟交渉中と言われているが、日本が加入すれば、アメリカと日本だけで域内の経済規模(GDP)の約81%を占めると言われているから、経済の規模からいえばほとんどアメリカと日本の交渉になるのではないか。だとすれば参加して発言権を確保するという選択肢が重要になる。小宮山前厚生労働大臣は、TPPにおいてアメリカ政府は日本の医療自由化に関心を持っており、米豪FTA交渉においてオーストラリアは公的医療保険による薬価負担制度の見直しを要求され市場価格並みの高い価格が設定できるよう制度が改められたという例を挙げている。交渉の過程では当然国民保険制度の機能縮小、混合診療、病院の株式会社経営の認可等要求されることは必定だろう。財政が厳しい中、また対外圧力が増すなか日本の財政や経済に見合った制度やシステムに造り替えていくべきだと思う。ただ日本の公的保険制度は世界に誇るべき制度として死守すべきであり、だからこそ時代に見合った、財政に見合った制度に変えていくべきである。例えば歯科医療において根管治療等の基礎治療は点数を引き上げ、補綴物については保険外診療にする等の抜本的な制度見直しが不可欠だと思う。それは歯科医院経営の現実と財政危機を直視すれば避けられない制度改革だと思うからである。今年度から臨床研修制度が改定されて、医学部5、6年生が臨床実習において医療行為を行えるようになるという。歯科の臨床実習でもただ見学するだけという従来の制度が改められると思うが、アメリカではメディカルスクールの3、4年次には、注射はもとより簡単な開創術さえ行えるという。こうした現実に合わない制度やシステムを見直すよい契機にすべきである。

№426 院長の自己反省 

大阪市立桜宮高校バスケット部の男子生徒が自殺した問題が社会問題となって波紋を広げている。大阪市の教育委員会はバスケット部の顧問による暴力で生徒が重大な精神的苦痛を受け、自殺の大きな要因になったと結論づけている。大阪市の外部観察チームがまとめた報告書を見ると、ルーズボール(こぼれ球)の練習をさせたが、近くに投げているのに「ボールに飛びつこうとしない」ので顔を平手で1~2回たたいた、とかタイムアウト時に走らずにベンチに戻ってきたために顔を平手で3回たたいた、といった状況が報告されている。これを読むと、その生徒が明らかにやる気をなくし、信頼をなくした態度をとっていることが分かる。スポーツに限らず、指導者と選手間の信頼関係なくして、優れた成績等出せるわけがない。乱暴な言い方だが指導者が少々体罰を行っても、受ける側が指導者に信頼を置いている場合は、それを体罰とは認識しないのではないか。運動部のある教師が「体罰の禁止」によって指が触れても「体罰だ」と訴えられるのではないかと心配しているとインタビューに答えている場面があったが、それは生徒との間で信頼関係を作らないからではないか。過去3回全国優勝を達成した智弁和歌山高校野球部の高嶋仁監督は「愛情を持って手を出す」等ということはあり得ない。監督自身が早く成果を出さなければと焦りを感じて、つい「何をしているのか」と感情的になって手が出てしまうのだと話している。いかにやる気を出させるか、一人一人に向き合って、なぜそれが必要なのかを徹底して教え理解させることが大切だと断言している。筆者の知り合いで、ボランティアとして少年野球の監督をしている人がいる。彼は普段は恐ろしく厳しいことを言い、かつ怒鳴り散らして練習させるが、試合で負けた時は少年たちに「よくやった!よくやった!」と言い、少年たちと一緒に大声で泣いて悔しがる。そういう監督に少年たちは一体感を感じ全幅の信頼を置いているのだと思う。高嶋監督は月に2回、夜中の2時に起きて高野山の山道を20km歩いて、自分を見つめる機会にしているという。そうすることでいろんな面から選手を見ることができるようになったと述懐されている。監督あるいは指導者というものは自分の専門技術や知識だけでは、指導はできないのではないか。人間的な広さと、深さが不可欠なのではないか。誰しも完全な人間はいない。だから自分の未熟さを知り、その足りなさを知る努力をする。弱い人間を自覚して努力を積み重ねる謙虚な姿勢が必要なのではないか。ある歯科医院の院長とのお付き合いをしてもう6年近くになる。当初は何を言っているのかハッキリしない言い方で、スタッフに厳しく、失敗するとすぐ減給にするという先生だったが、スタッフが採用するしりから退職していくことに困り果て、自分のどういう考えが間違っているのか、どういう対応が悪いのか悩み抜き、自己反省することが多くなるにつれスタッフの退職も減り、今では実に和やかな雰囲気の歯科医院に変身している。自分と向き合うことでスタッフの心が見えてきたのではないか。

№425 歯科医院の経営実態 

毎年歯科医院を対象に収支アンケート調査を実施しているが、その分析結果が12月に出る。その関係で毎年12月~1月はアンケートに回答いただいた先生の簡単な経営状況についてのコメントを書く時期となり結構忙しい。この調査は昭和53年分の収支から実施しており、平成23年分の収支アンケートで34回目となる。当初は関係先の歯科医院50医院くらいから始まったと思うが、最近は120院弱となっている。最近の特徴は2代目に移っている医院が多くなったことである。総じて収入は子供の代になると減少する傾向にあり、それだけ環境が厳しくなった証拠である。一番大きい変化は人件費の増加である。昭和53年当時は給与賃金の収入に対する比率は16~17%程度で、福利厚生費も2%前後だった。それが平成23年には22.4%になっている。福利厚生費の比率は変わらないが、福利厚生費も含めた人件費は24.4%で、約収入の4分の1が人件費である。これは保険点数等にも現れているように、補綴の点数が低下したことと、人手をかけないと点数にならないという保険請求の内容を反映した形になっていると思う。専従者給与もその内容を見ると、歯科医師の専従者が2,310千円で、歯科医師以外が4,814千円と逆転している。これは息子や娘の力量に応じて支払っている正直な姿を反映しているのだと思う。大雑把にいえば収入の4分の1(25%)が人件費で、外注技工料を含めた原価が20%、専従者給与を含めたその他の経費が30%で、差引所得が25%という比率になる。当然のことだが、院長の診療方針によっても経営指数は大きく変化する。例えば歯周・予防に重点を置いた診療方針の場合は、原価が5%程度になり外注技工も2~3%になる。逆に人件費が30%をはるかに超えてくるし、スタッフ1人当たりの月額収入(生産性)が低くなる。ただしこのような比率になる場合は、院長の補綴治療も少ない医院の場合で、補綴治療が多い場合は、このような極端な比率にはならない。経営的にみて将来を見据えた理想的な方針というのは、歯周・予防をベースにして補綴治療、それも自費診療を総収入の20%程度以上を維持することである。「歯周・予防をベース」にするというのは患者の口腔衛生意識が高くなるからである。逆に言えば高くなるような指導が前提である。歯周・予防をベースにといっても衛生士がいなければどうにもならないが、今後の医院経営を考えた場合、徹底した患者の目線に立った診療方針を徹底させることも一つの方法だと思う。ある歯科医院では全員がTA(エリックバーンの開発した交流分析・トランザクショナル アナリシス)の講習を受けて、「気づき」をどう高めるか、また相手の立場をどう理解して心を通わせるか等実践的な研修を実施し好評を得ている歯科医院もある。その歯科医院では患者にもそのような講習会を1回3000円程度で公開している。

№424 日本の現場力 

明けましておめでとうございます。今年もご愛読いただきますようお願い申し上げます。
日本の電機メーカー8社の平成24年3月期の決算内容を見ると、パナソニックが7,721億円、ソニーが4,566億円、シャープが3,760億円、NECが1,102億円の赤字になっている。一方富士通が427億円の黒字、日立が3,471億円、東芝が737億円、三菱電機が1,120億円の黒字を計上している。上位2社の赤字は過去最高の赤字である。その原因はテレビを中心とした家電事業の失敗とされている。価格下落が著しいテレビ事業にどれだけ早く見切りをつけて撤退したかがその業績に出ていると言う。テレビ事業に集中し、想定していた通りの収益が得られなかったという構造的な経営戦略の失敗ということであり、厳しい言い方をすれば有能な経営者がいなかったということだ。この戦略の失敗によってパナソニック、ソニー、シャープの3社は大規模な人員削減を行っている。ソニーが1万人規模で、パナソニックでも本社の人員を7000人から数百人規模まで削減するという。一方堅調な業績を残しているのが重電系のメーカーである。日立は3年前の2009年3月期決算では7,873億円の赤字を計上したが、家電関連は外注に出し、小型の電力設備やインフラ開発における鉄道システムの保守や点検等のアフターサービス付の事業に力を入れており、また開発途上国のインフラ整備の受注にも力を入れ、安定した経営実績を残している。経営トップの打ち出す経営戦略が的確で、的を得たものであれば、日本「現場力」はどこにも負けない力を発揮し、素晴らしい成果を出す土壌がある。
東日本大震災による福島原発事故の報告書が公表されているが、あれを読めば混乱したとはいえ原発の現場での対応が良かったからあの程度で済んだともいえる。それに比べて東電本社や通産省や政府の対応の拙さが際立っているのがよく分かる。また自動車の制御に使われるマイコンの世界最大の半導体メーカーのルネサス・エレクトロニクスの工場は北茨城にあるが、被災して復旧するのに8月末までかかるとされていたのを、5月の連休明けには工場を再開している。一時は、部品・部材の供給源から日本を外そうという動きも出たそうだが、それが不可能と判断され免れたといわれている。アップルの「iPhone5」は、液晶内部にタッチパネル機能を組み込んだ「イン・セル型」という方式なのだそうだが、これには高い技術力が必要とされ、我が国ではジャパン・ディスプレイとシャープ、韓国のLGしか作れないと言われているし、シャープの「IGZO」(イグゾー)と呼ばれる技術を使った高精細液晶は、ほぼシャープだけが現在世界で唯一量産化に成功した分野だと言われている。日本の強みはこうした「技術を伴ったサービス力」に抜群の強さを持っているといわれているが、今後の飛躍に期待したい。

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