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コラム『歯科医院経営を考える』

デンタル・マネジメント・センター代表 稲岡 勲

バックナンバー 2009

№387 特措法26条のゆくえ

先日正倉院展にでかけた。天平時代に作られた帳簿類が出ていて興味深い内容であった。「計帳」というのは調や庸といった租税を徴収するために作成された古代の住民台帳だが、神亀3年(西暦726年)の計帳が展示されていた。山背国愛宕郡出雲郷(現在の京都市上京区から下京区にまたがる地域)の計帳(徴税の基本台帳)である。計帳の作成は、先ず各戸に手実(しゅじつ)という「申告書」を提出させ、それに基づいて「歴名」(れきみょう)という「名簿」を作り、そこに記された人数や課税額を計算して「目録」にまとめられたという。税金を課税するための資料を提出(申告)させていたというが、現在の確定申告にも似ていて面白い。出展されていたのは出雲臣(いずものおみ)文田を戸主とする計帳で、冒頭には戸主名に続いて前年の計帳からの構成員の出入りが記帳されており、「課口」(かこう:税負担者)等の人数と調の税額が記載されている。72歳の戸主文田をはじめ男9人、女10人の計19人の所帯で、「右頬に黒子がある」等と各人の身体的特長まで記載されている。息子の忍人(おしひと)は「左大臣資人」の職に就いていたとある。(「資人」とは大臣等の下で警護や雑務に従事する役で、当時の左大臣は長屋王であった)1283年前の徴収制度だが、予想以上にしっかりした徴税制度であることに驚く。
さて平成の徴収制度はどうか。政権の座に就いた民主党のマニフェストには、「公平で簡素な税制を作る」と方針を示している。先ず税制方針として、「税制の既得権益を一掃」し、「租税特別措置法の効果を検証し、税制の透明性、信頼性を高める」としている。その具体策として、
①租税特別措置法の適用対象を明確にし、その効果を検証できる仕組みを作る。
②効果不明のもの、役割を終えた租税特別措置法は廃止し、真に必要なものは、「特別措置」から「恒久措置」へと切り替える、としている。
このような経緯からみて、租税特別措置法26法の廃止は確定的になったと思う。これが廃止された場合、経営規模の小さい歯科医院に大きい影響が出てくると思う。だいたい保険診療収入が5000万以下で、総経費率が65%以下の場合であると措置法26条使った方が税務上は有利になる可能性が高くなる。現在でもこの措置法26条を使って申告している先生は7%程度はいるのではないか。
また保険診療収入に対する事業税の問題は近い将来課税の対象とされるのではないか。事業税は地方税であるが、これはもともと学校医の報酬が当初極めて低く、それえを補填する意味もあって保険収入に対し事業税を低くするという合意がされたと聞いたことがある。(真偽の程は確かではないが・・・)最近校医手当も徐々に引き上げられてきており、もしそのような合意の下での課税免除であるなら課税が検討される可能性は大きいと思う。

№386 患者の価値観・行動様式の変化 

先の衆議院議員選挙では、民主党が大勝して政権が変わり、政治が今大きく変貌を遂げようとしている。大型のダム工事の中止、ハブ空港の見直し、日航の再建問題、また医療行政では「後期高齢者医療制度」の廃止等々大きく政治も変わりつつある。医療では日歯も日医も、自民党を押したが結果は歴史的な自民党の敗北に終わりどちらも執行部に対して厳しい批判が噴出している。そうした中、日医の方針に逆らって民主党候補を推薦して話題になった原中茨城県医師会長が日医の会長選挙に正式に出馬表明をしたという。その記者会見で日医より送り出していた中医協の3人の委員が改選時期になっても、まだ決定していないことを挙げて執行部の政治への対応をめぐって批判を強めている。
「重厚長大型産業の利益を優先しがちな日本経団連の歴史的使命は終わった」としてIT等ベンチャー起業家等中堅の経営者約100人が、新たな経済団体「日本政府倶楽部連合会」発足に向けて動き始めた、と10月20日付毎日新聞夕刊は報じている。「1000人の坂本竜馬を育てる」「未曾有の危機から日本を救うのは私たち」等という文言を設立趣意書に謳っているという。「バケツの穴をふさぐ」ような場当たり的な政策ばかり実施し、国家像を語らない今の政治家と経営者、経済団体への不満もあったと同紙は解説している。政策研究のために併せてシンクタンク「日本政経連総研」も設立して政治家とも定期的に対話して政策提言に取り組むらしい。
アメリカに始まった金融恐慌により、世界のほとんどの国々がその影響を受け、経済不況を経験しているなか、人々の考えや行動も大きく変わってきている。今まで欲しいものは借金をしてでも買うという行動のアメリカ人の貯蓄率が最近高くなっているというし、日本では最近デパートが値引き合戦を繰り広げており、有名ブランドの日本からの撤退も相次いでいる。今世界的な規模で思考回路の組み換え、つまり価値観の変化、行動様式の変化が始まっているのではないか。エコ問題も大きく話題になって社会的な関心が高まっており、価値基準が大きく変わる分岐点に立っていると思う。
今後日本では高齢者の人口が急激に増えているが、こうした高齢者の口腔衛生はどちらかといえば後回しになっていた観がある。今後はクオリティーライフが大きなテーマになるだろうし、身体の健康と共に口腔衛生にも注意を払い豊かに生きることが求められる時代を迎えると思う。グループホームや仲間同士の共同生活の普及または在宅が重視され、ボランティア活動も活発になると思う。身体の健康という視点から口腔衛生や歯の健康を考える時代を迎えており、その時代にふさわしい啓蒙活動が求められている。

№385 小規模だからこそ経営戦略を 

今年の夏は夫婦でスイスに8日間の旅をしてきた。行く前は欧州の一小国で精密機械の時計の生涯が有名で、永世中立国だということぐらいしか知識がなかったが、いろいろ見聞してみて、スイスという国は実にしたたかで、賢い国だと思った。
九州ほどの大きさに人口は約760万人、26の州で成り立ち1291年にスイス連邦が成立している。スイスの各地の諸侯(土豪)が力を持ち、それらの諸侯が集まって作った国である。もともとスイスは資源もなく、工業力もない農業国であった。国土の70%は山脈が占め、気候条件の厳しい国だから、牧畜が盛んなくらいで貧しい国だった。山が多いから高地に種を蒔いて牛を放牧しており、予想もしない2000mや3000mの高い所にまで牛を放牧している。昔は熊が出没して牛が殺されることもあったらしいが、観光客が増えるとともに熊を根絶やしにしたというから凄まじい。3000m級の高い山でも車椅子で行けるよう徹底した施設を整備し、標高3970mのアイガーにトンネルを掘り、標高3571mのスフィンクス展望台まで電車を走らせるという発想は想像を絶する。1789年にフランス革命が勃発すると、傭兵としてスイスの若者が出稼ぎに出て行ったというくらい貧乏な国だったから、自然の山岳風景を見てもらうために観光に力を入れ観光客のおもてなしに徹している。今は時計を初め精密機械、金融で豊かな国になっている。日本で有名なネスカフェを製造しているネスレはスイスが本社であり、世界最大の企業である。過去の建国当時の状況から、どこの国とも等間隔の外交を徹底させ永世中立国となった。2002年には国際連合に加入したが、今でもEUに加盟せず、EUと2国間の同盟を結んでいるに過ぎない。
永世中立というのも生半可ではない。各家庭には機関銃を装備させ、若い時には徴兵制で軍隊の経験を積ませて、その後30歳、40歳の節目にも何ヶ月かの訓練を受けさせる等徹底している。田舎ののどかな風景の真っ直ぐな道路の地下には戦闘機が格納しており、いざという時には即座に戦闘機が飛び立てるようになっているという。WHO(世界保健機構)やIOC(国際オリンピック委員会)、WTO(世界貿易機関)等22もの国際機関の本部がスイスに拠点を置いているが、インフラを整備し、家賃等は取らず、維持費は取るが職員等の採用を促すことでもとを取っているというから、これも計算された戦略なのだ。小国だからこそこのような国の戦略が必要不可欠なのであろう。
歯科医院とて基本は変わらないと思う。歯科医師1~2人の小規模歯科医院だからこそ徹底した戦略思考が不可欠なのではないか。規模が大きくなればなるほど患者との密接な信頼関係が築きにくい。そのようなスキマを徹底的に埋める関係作りが求められている。それを埋められるのは小規模の患者の少ない歯科医院である。一点集中主義といわれるが、漫然とお金をかけるのではなく、何か特徴のある方針を打ち出して、それに徹底したお金と人の能力をかけることが効率的であり、密接な関係作りにも役立つと思う。

№384 歯科医療の長期ビジョンを 

今年の8月は衆議院議員選挙で一段と暑くなっている。各党ではマニフェストを作り支持者作りに余念がないが、マニフェストを見ただけでは、その党がそういう国を作り、どういう方向を向いているのかが全く読めない。長期の国づくりビジョンが抜け落ちているのが各党のマニフェストである。有権者には良いことずくめで、バラマキ政策を発表しているのが実態ではないか。国の借金である国債発行額がGDP(国内総生産)の約170%に及ぶ膨大な金額になっているという事実を直視すべきだ。オバマアメリカ大統領が金融危機に際して発行した膨大な国債発行額でも、まだ国内総生産の100%以内に収まっているという現実を見ても日本の借金の異常さが分かる。国の借金は若い世代への「つけ」だから、もっと深刻に考える必要があると思う。
日本経済新聞の世論調査によれば、今回の選挙で全回答者の55%が「年金・医療」を重視し、60歳代では66%になるが、20歳代では37%にとどまり、彼らの最も関心のあるのは「景気対策」で49%になっているという。こうした調査は統計学の理論に基づいて科学的に実施されているのだろうが、大きな問題がある。2009年のデーターで言えば、55歳以上の人口は全人口の37%に相当するが、全有権者の中では45%を占めるという。一方20歳未満の人口は、全人口の18%を占めるが選挙権はない。こうした事実を踏まえて考えると、高齢者の意見が政策に反映され易いこと、政治家は有権者を意識するだろうから、若い層、特に未成年層に対する政策が無視ないしは手薄になる可能性が高いということだ。多額の借金を押し付けて、我が国の将来を担う子供や若者への思い切った投資を怠ればどのような結果を招くかを考えるべきであり、将来の保証は年金の多寡ではないことを知るべきだ。アメリカの人口学者ピーター・デーメニが「デーメニ投票法」を提案している。子供が2人いる家庭では、親に子供の人数分の票を与えるというものだ。2人の子供がいれば両親は2票ずつ投票できるようにするというのである。個々には問題もあるが、検討に値する提案だと思う。
今後医療問題は我が国の重要な政策課題になってくると思われるが、現在の歯科医療行政を見ていると、その場しのぎの法改正のつぎはぎで、歯科医院経営の長期展望の立てようがない。予防をどのように位置付けるのか、補綴治療をどのようにするのか、保険診療と自費診療をどのように区分し、どの程度国民に負担を強いるのか等々によって歯科医院の経営方針が大きく変わるからである。どちらの政党が政権を取るにせよ、医療の長期ビジョンを示してもらいたいと思う。

№383 医療の品質と医療費負担 

平成20年の診療行為別に見た1レセプト当たりの点数と構成比を見ると、1レセプト当たり1285.5点、前年比伸び率は4.1%のマイナスである。その内訳で一番大きい比率を占めるのが「歯冠修復及び欠損補綴」で、550.7点(構成比42.8%)である。前年の平成19年それと比較してみると、619.2点(構成比46.2%)で68.5点(3.4%)も減少している。5年前の平成15年の「歯冠修復及び欠損補綴」は、693.9点(47.7%)であるから5年間に143.2点、構成比で4.9%の減少となっている。何よりも平成15年の1件当たりの点数が1452.6点で、167.1点減少、率にして11.6%も減少していることだ。1日の患者数40~50人(Dr2人)の知り合いの歯科医院の現状を見ていると、最近治療が忙しい割には点数が上がらなくなってきており、逆に忙しい日ほど点数が下がるという日がある、という現状に驚いている。もう抜き差しならない時点まで来ているように思うが、これ以上下がると、治療手順まで変更しなければならなくなるのではないか。このような状況は患者にとって不幸なことであり、歯科医院にとっても不幸なことだと思う。根管治療や処置といった基礎的な治療の点数を引き上げ、じっくり時間をかけて高い品質の治療ができる点数にするべきであり、その上でどうしても医療費が膨張するようであるなら、補綴の金属や技工料は保険から除外するという方法も考えるべきではないか。このような点数に対して「もういい加減にしてくれ!」と声をあげるべきではないかと思う。
一橋大学教授の井伊先生が、日本歯科医師会雑誌に「データに基づいた政策論議の重要性」で、二つの問題点を指摘されている。一つは「予防が保険適用ではないこと」もう一つは「歯科診療を安く受けられることは良いのですが、保険診療があまりにも安すぎるということです」と書かれている。そうして先進国平均価格の4分の1から10分の1であり、安すぎるために診療時間は短くなり、治療の質の低下を招くと指摘されている。
筆者も何回か歯の治療を受けて思うのだが、キチンと治したいと思うなら、噛み合わせも含めて、1口腔単位の治療が一番望ましいように思う。しかし一方では患者サイドの要望もあるから、説明が不可欠になるが、現場を見ていると話をする時間が全くない。患者が多ければ多いほどその傾向が強い。そうすると患者を流すように診療をせざるを得ない。逆に計算すると、1レセプト単位が1,850点くらいになると、1日8人から10人で充分採算がとれる。患者負担は3割負担で、5,550円だが、この程度の負担なら充分支払えると思う。医療の品質と医療費負担をどのようにバランスさせるかは、国民の多くは少々の負担増でも健康になりたいという思いを共有しているのではないか。厚生労働省の舛添大臣は“ 聖域なき ”厚生労働省改革を実施しているが、診療報酬についても医療の品質という視点で見直しをしてもらいたいと思う。

№382 人材を育てる 

以前にも取り上げた「百マス計算」の陰山英男先生(元尾道市立土堂小学校校長)が「娘が東大に合格した本当の理由」という本を出されている。先生の持論である「早寝早起き朝ごはん」と「陰山メソッド」といわれる読み書き計算の徹底反復で子供たちの学力を驚異的に伸ばすという考えを、自分の子供の東大合格によって実証された。自分の孫を見ていて思うのだが、小さい子供の脳というのは、鍛えれば鍛えるほど伸びるから神秘的である。百人一首を何分で全て取らせるかを実施されており、最初は1時間ほどかかっていても、最後はわずか7分で取るという。重要なことは脳の活力であり瞬発力(脳のダッシュ力)だという。
陰山先生は現在教育再生会議有識者委員をされているが、その座長であるノーベル賞を受賞された野依良治先生が「塾を潰せ」と発言されたという。それは学校の帰り道、寄り道しながら川に石を投げたり、きれいな夕日を見たりしながら帰る事は実は科学の土台になっているという。そうした環境の中で子供達はいろんな興味や関心を育むのであろう。ところが最近の子供達は朝日や夕日を見ることがないまま育ってくるという。朝日や夕日を見ないことはないのだろうが、塾通いでそのようなゆとりがなくなっているのであろう。子供の教育を考えるとき、きちんとした生活習慣、読み書き計算の徹底反復、それと自然や社会への興味関心を育てることが重要ではないかと思う。
陰山先生の娘さんも受験体験記を書いている。その中で「東大に入ったからといって必ずしも人生が変わるわけではないけれど、東大を目指すことで人生が変わった」と書いているのが印象的である。東大受験という過酷な環境に身を置くことで、親や友人との関係、自分の感情や欲望を律すること、ものの見方や考え方等々多くのものを学び自分が成長出来たと実感できたからであろう。
これは東大受験の話だが、歯科医院のスタッフ教育においても原則は変わらないと思う。入ってくる若いスタッフ、特に受付や歯科助手募集の場合は興味や関心が高い。特に歯の治療や歯周病、根管治療等々、興味津々だから、ある程度の理屈(理由)も説いて教えることが大切である。同時に基本的なことは徹底して覚えさせることだ。小さい子供ではないから闇雲に覚えることができないから、暗記することとある程度の理由、理論を並行させることが必要である。最初は少し緩やかに、興味や関心が高まり、知識や技術がある程度身に付いてきたら、徐々に厳しくしていく。常に少し負荷を大きめにかけるのがコツである。覚える内容は6箇月くらいの間に基本的な知識を身につけさせる。衛生士の場合は、再復習を兼ねて基礎を見直すとともに、実習を並行させる。これとは別に人間関係に関する知識、技術は最初から徹底的に教えることである。

№381 インフルエンザへの対応 

5月22日より神戸市の国際会議場で開催予定であった「日本精神神経学会学術総会」が5月18日になって急遽中止となった(20日時点では中止か延期かは決まっていない)。新型インフルエンザの国内感染が神戸市で確認されたからである。5000人の参加者が予定されていた大きな学会が、1週間を切った段階で突如中止というのは我が国では初めてではないか。海外からの招聘された講師もいたと聞いているし、多くの参加予定者もホテル予約をしていたと思う。また会場のキャンセル料も多額で、その影響は大きい。同時に神戸市内で開催予定であった日本麻酔学会学術集会も急遽8月に延期になっている。19日現在で神戸市内の感染者は64人である。これしきの感染者数で中止や延期とは・・・等々の意見もあろうと思うが、しかしどちらの学会も英断であったと思う。それは対象者が医師だからである。弱毒性とはいえもし感染すると患者や病院等に甚大な影響が出て社会的な問題になるからである。より慎重に対応するというのがこの場合の対応方法だと思う。
今回、初めて国内感染が明らかになったきっかけは、神戸市内の開業医の機転があったとされている。5月17日、渡航歴のない男子高校生が、せき、のどの痛みを訴えて来院したが、風邪だと診断して帰している。ところが翌日午前に再来院した時には37.4度の熱があった。検査をしたらA型であったという(同じA型でも、従来のソ連型、香港型があるという)。そこで、①海外では若者を中心に感染が拡大している。②季節性インフルエンザの予防接種を受けている。③所属していたバレーボール部では複数の生徒が発症している、という事実と、④国は入国する人を機内や船内で防疫しているが、感染しても発症前でまったく症状が出ない人がすり抜けている可能性があると推定して、医師会を通じて県に検査依頼をして、初めての新型(豚)インフルエンザの国内感染の患者と診断されたという。
これに対して連日のTV報道に見られたように防疫服を着た検査員が次々と飛行機に乗り込む映像が映し出されて、国の防疫体制のものものしい対応ぶりをみてきた。また冷静な行動を望むといいながら、一番あわただしく過剰に反応しているのは国である。弱毒性と致死率も季節性のインフルエンザ余り変わらないということが分かっているのだから、もう少し規制をゆるめてもよいのではないかと思う。それよりも発症前で本人も自覚しておらず何らの異常が認められない人がすり抜けて入ってくることを想定していなかったのかと疑問に思う。このような場合は、個人情報保護法の適用除外として徹底した追跡調査が不可欠だ。対策として、①栄養と休養、②室内の湿度を高める、③予防接種、④マスクの着用、⑤手洗いとうがいが有効だそうだが、そのマスクも売り切れて手に入らない。心臓病や高血圧の患者や妊産婦が感染すると重症になる可能性があるそうだから、先ずこうした人を重点的に保護すべきだ。和泉大津市では妊産婦に対してマスクを5枚ずつ無料で配布しているが、このような対応を国や自治体はもっと積極的に実施する必要がある。歯科医院においても感染した患者が来院する可能性が出てくることを想定して、職員のマスクの準備や患者への対応を想定して訓練しておくべきである。

№380 寺院の経営 

今年の桜は、咲き始めてから低温の日々が続いたから、半月ほど咲き続けて鑑賞期間も長かったように思う。たまたま時間がとれたので奈良県・吉野の桜を見に出かけた。吉野の桜は一目千本といわれ、下千本、中千本、上千本に分かれていて、うまく開花時期に訪れると全山が桜の花に覆われ、眺めが最高になる。中でも如意輪寺(後醍醐天皇陵があり、南北朝時代の武将、楠木正行が天皇に別れを告げ、寺の扉に辞世の句を刻んだという)からの眺めが穴場で最高の眺めである。
その如意輪寺では1本に付き8万円を支払うと、桜の木に名前を付けて管理するというサービスをしている。なかなか面白いアイデアだと思う。桜が増えてお寺も潤うし、観光客も自分が付けた名前の桜があり存在感がある。政治家や有名人の名前も見かける。それにしてもなかなか商売熱心なお寺である。寺院経営も檀家が多い場合は、安定した経営ができるが、檀家の少ない寺院は極めて経営が苦しいのが現状である。如意輪寺の檀家はどのくらいあるのか知らないが、寺院経営の損益分岐点は檀家数250~300軒である。入園や宝物殿への入場料400円、お守りをはじめ数珠、線香、楠木正行絵入りローソク、寺号紋入り葛菓子等々の品を販売しているところを見ると檀家が多くはないと思う。筆者も寺に生まれたから分かるのだが、今どきの寺院経営は、ただ広大な敷地の寺宝や建物、庭園を維持していくことは並大抵のことではやっていけないのである。精神的な拠り所としての寺院の存在が薄れていく中、信者を獲得していことが極めて難しい現実がある。そのような中で、信仰を深めて檀家をしっかりつなぎとめていく寺院と、観光に依存した一部の寺院とに二分化してきているように思う。
歯科医院経営もそうだが、一般大衆の求めに応じて医院経営も変えていかねば成り立たない。ただ歯の悪い患者の歯を治療するというだけの歯科医院は徐々に淘汰されつつある。筆者は1年半ほど前から顎関節症に悩まされているが、咬合面がかなり磨り減っているのが自分でも分かる。当然若い時のような噛み方ではなくなり、顎関節も狂ってくると思う。同年輩の人に聞いてみると以外に顎関節症にかかった人、今現在かかっている人は多い。今後高齢社会になると筆者のような顎関節症の患者が激増するのではないかと思うが、顎関節症は口が開かないとか、痛くて我慢ができないという場合は別だが、不自由しながらでも何とか我慢ができるから、多くの人は我慢し、ひどく痛むとか口が開かないという人が歯科医院を訪れているのだと思う。何故かと言えば、確信的な治療体系ができあがっていないからか、あまり熱心に治療してくれないからである。

№379 医療という船のエンジン 

毎年20数件の歯科医院の決算(個人事業)を見ているが、今年は、対前年比で収入が伸びている歯科医院は68%で、で、減少している歯科医院が32%、約3軒のうち2軒が収入を伸ばしていた。今年(平成20年)の大きな特徴は、後期高齢者医療が4月より実施されたことにより、社保収入が減少し、国保も若干減少して、後期高齢者医療費収入が国保の半分程度になっている。全体としては保険収入が若干増加している。地域によっては、不況の影響をまともに受けた歯科医院もあり、都心部では自費収入が2~3割程度減少している。
上記の歯科医院の収入の平均伸び率は3.2%で、平均収入は51,146千円である。最高の収入が86,116千円、最低は15,455千円(共に院長1人の医院)である。年齢とともに収入が減少していくのは如何ともし難いが、若い働き盛りの先生の収入が減少しているケースもある。
若い働き盛りの先生で収入を落としている先生の問題点は、百年1日の如く、同じコトを言い、同じコトを繰り返している。つまり自分のことしか考えていない姿勢の医院か、スタッフとのコミュニケーションが上手くとれず、スタッフとの間に隙間風が吹き、ちぐはぐな対応をしている医院である。また逆にやる気が前面に出すぎて患者の腰が引けてしまうケースもある。このようなケースの場合は、こちらの収入を上げたいと言う姿勢が見えみえになり、患者の思いや期待や悩みに充分耳を傾けていないことが多い。しかもスタッフが非協力的で、院長だけが一人頑張っているという例が多い。今後の歯科医院経営を考えると、スタッフの協力なくしては成り立たない。そのためにはスタッフの思いや悩み、期待にも応えていかなくてはならない。患者に対しても、スタッフに対しても気配りは避けられないが、気配りだけでは消極的になり強い体質の歯科医院にはならない。他人への配慮をしつつ、自己の意思や考えをどのように伝えていくか、どう折り合いをつけていくかが問われる。船が前に進もうとすると、水の抵抗を受けるが、それを押し戻して力強く前に進まないと船は進まないのと同じである。その場合の船のエンジンに当たるのが、院長の医療への情熱であり、責任感であり、目の前の患者に対する「何とかしてやりたい」という思いである。
例えば、自費診療を勧める院長に抵抗するスタッフがいる医院があるが、これは保険診療の採算性の認識をしっかり教えるとともに、徹底した医療の品質へのこだわりを認識させていないからである。同時に医療の品質にばかり目を向けていると、保険診療なのに、時間コストは自費診療なみに掛け、それが当然のように考えてしまうから、この両面の認識を高める努力が必要なのである。

№378 治療技術水準 

名古屋に住む筆者の義弟が、昨年の6月から歯が痛いと、近くで最近開業した綺麗な診療所で、若い先生の医院に半年ほど通院したがよくならない。歯石を取ったり歯を消毒したりしたそうだが、一向によくならない。そこで歯科医院を変えたところ、歯に異常はないから、神経内科に行って見てもらうよう勧められた。そこで神経内科でCT写真を撮ってもらったところ、聴覚神経が骨にくっ付いていて、それが神経に触り痛みを発していることが分かり、入院して手術を受けて無事退院してきた。義弟の話では、清潔で綺麗な診療所であり、歯石を取りましょうとか、応対も優しく丁寧な説明で申し分ないと思ったと言う。しかし約半年にわたる通院はなんだったのかと言う。
最近はデザイナーを使った綺麗な診療所で、患者応対も洗練されていて「患者様」等と呼び、院長の応対も優しく親切であり申し分ないように見える。歯周・予防に力を入れ、衛生士による患者指導に力をいれる歯科医院は多い。しかし基本的な診断技術や治療技術に疑問符がつくというケースを時々見かける。歯周・予防も重要だとは思うが、基本的な診断、治療ができるという前提の話であって、最初から歯周・予防のみというのは有り得ないと思う。
神戸大学大学院経営学研究科では、リハビリテーション型の医院での「患者満足」について患者やスタッフに対してインタビュー形式で調査をしたという。その結果、患者満足は次の三つの要素で決まるとしている。それは、①医療水準、治療技術、②施設の利便性、付帯するサービス、③コミュニケーション、接遇、おもてなし、の三つである。特に慢性期疾患を扱うリハビリ型施設のような場合、③「コミュニケーション、接遇、おもてなし」という部分が何よりも「患者満足度」に大きな影響を与えているという結果がでたという。①の「医療水準、治療技術」は患者が期待している最低限度が維持されない場合は、非常に大きいクレームや不満、更には訴訟の対象となり得ることも示されたとしており、一定水準の品質が保障されていることが「不満」を防ぐためには極めて重要であるとしている。(詳しくはデンタルダイヤモンド社「自費攻略-TCのいる歯科医院」の諸井先生執筆『量から質へと移行する歯科医療』を参照いただきたい)これらの調査結果は、歯科医院を対象にしたものではないが、現在の「歯周・予防」を診療の中心に捉えている歯科医院の場合、リハビリテーション型医院と診療体質が似ているから、これは大いに参考になると思う。
ただ歯周・予防を診療の中心においていない、補綴中心の歯科医院の場合はどうか。基本的には上記の三つの要素と変わらないと思うが、治療技術への患者の期待はより強くなるのではないか。特に口コミや評判によって患者が多く通院してくる歯科医院の場合は、患者が身を持って治療経験をするから、その治療水準をかなり引き上げていかないと評判を落とすことになる。不況になると患者の見る目がより厳しくなることを自覚する必要があると思う。

№377 心の触れあい 

現在我が国の結婚に関する統計で、結婚後、第1子が生まれる期間の平均が0.6箇月(約7ヶ月)という統計がある。つまりなかなか結婚に踏み切れないが、同棲、半同棲している間に妊娠してしまったから結婚するというパターンが定着して、なし崩し的に結婚するという「出来ちゃった婚」が、結婚するカップルの50%以上を占めているという。現在男性の結婚平均年齢は34歳だそうだが、面白いことに所得の高い人ほど早く、所得の低い人ほど遅くなっているという。何故か?
今や結婚するか否かの決定権は女性が握っているという。その女性の多くは親と同居していて、独身貴族を満喫し、海外旅行や、買い物をして、親の生活レベルをスタンダードと考えているからだという。子供の親離れ、また親の子離れができていないことが原因の一つである。だから若い男性はせっせと貯金に励んで生活インフラが整った段階で求婚するから晩婚になり、インフラの整わない者は結婚できなくなる。都心の歯科医院のスタッフでも意外に同棲している人が多いという。しかしそれが日本の少子化の大きな原因の一つであり、我が国将来の社会福祉制度にかかわってくるとすれば問題視せざるを得ない。昨今話題になっている派遣社員となると、その生活基盤は極めて脆弱だ。当初労働者派遣法は専門性の高い人の派遣がテーマだったはずだが、メーカーの単純労働に拡大され、メーカーの景気調節弁に利用されたのは、15年程前のバブル崩壊後のことである。急激な景気後退局面で派遣切りやリストラが始まっているが、メーカー側のとっては当然のことで、そのようにしないと会社が倒産する可能性があるからである。いずれにしても今後急速に経済が冷え込むはずだから、更に失業者は増えると思う。
しかし一般業界の不況は、医療界、福祉事業界にとっては追風であり、人材確保の好機である。今まで医療界で働くことは3K「キツイ、キタナイ、キケン」等といって敬遠されてきたし、特に最近は福祉施設から若い人材が逃げ出していたから、この機会をとらえて優秀な人材獲得に本腰を入れるべきである。と同時に医療機関で働くことの意義や意味をPRし、職場環境を整備すべきである。
先日、NHKのTVで、20歳代の若者3名(学生、フリーター、女性会社員)が、愛媛県の蜜柑農家に1週間体験入村して蜜柑の摘み取りを手伝うというドキュメンタリーを放映していたが、農家の人たちと触れあうことで、人情のこまやかさや温かさに触れて懸命に働き、指示されてもいないお宮さんの掃除をするというハプニングも紹介されていた。感想を聞かれて涙する光景を見て、その3人の若者の「人の心」を忘れていないことに何故かホッとするとともに、そのような出会いの場を提供する医療や福祉の場をもっと準備すべきであると思う。

№376 ノンバーバル・コミュニケーション 

新年明けましておめでとうございます。何時もご愛読ありがとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
最近、大きい病院ではすべて患者に対して「○○様」と呼んでいるが、歯科医院でも、特に若い院長の歯科医院では、患者を「○○様」と呼ぶところが増えてきている。歯科医院もサービス業だから「○○様」と呼んで何ら問題はないのだが、少し違和感がある。大病院のように個人と個人との関係が希薄になる場合では、そのように呼称する方がいいのかもしれないが、個人の医院で何時も患者と顔を合わせているような規模の歯科医院では、かえって逆によそよそしい雰囲気になるのではないか。筆者も昨年大きい病院に10日ほど入院した経験があるが、外来等では「稲岡様」でも、入院患者には「稲岡さん」と呼んでいる。それは日本の社会では「様」よりも「さん」の方がより親しみを感じ身近に感じるということではないか。長野県の某病院では「○○様」から「○○さん」に変えたところがある。それは患者へのアンケートの結果、「気持ちが悪い」「商売のような気がする」「親しみがもてない」等々の結果からの結論であったそうである。地方に行けば行くほどそのように感じる人が多いということだろう。
人間の脳は左脳と右脳とではその働きが異なると言われる。(科学的な裏づけがなされた訳ではないが通説として)左脳は言語認識、論理思考、顕在意識、論理的な思考の働きを、右脳はイメージ記憶、芸術性、創造性、感覚的な直感、ひらめき、潜在意識等の働きがあると言われる。それに伴ってコミュニケーションの方法についても「バーバルコミュニケーション」(言語を介した会話)と「ノンバーバルコミュニケーション」(言語以外による会話)があるとされている。どれだけ丁寧な言葉を使っていても、「下を向いて話す」とか「相手を見ずに話す」「表情が暗い」「低い声で話す」「声の調子が強い」では本当に親密な関係はできない。先ず言葉よりも態度が重要な意味を持つのだ。つまりノンバーバルなコミュニケーションが重要になるということである。特に注意したいのは、耳で聞く言語よりも、目で見る視覚の方がはるかに早いということだ。だから「○○様」という言葉を使っていても態度が荒っぽい行動であるとか、視線が患者に向いていないということであれば、なにか「胡散臭いもの」(患者を人間ではなく収入源としてみている)を直感で感じ取ってしまうのである。「○○様」という言葉を使うのであれば、徹底した患者指向の経営理念がスタッフに浸透している必要がある。ここまで患者のことを考えてくれているのか!と患者が認めてくれるぐらいの経営理念、経営姿勢、患者応対でなければならないと思う。患者の話す言葉や態度から、患者の思いや感情を推し量ることができるレベルの応対ができて初めて「○○様」という言葉が生きてくると思う。
今後さらに厳しい経営環境が続くと思うが、歯科医院にとっても真に患者を大切に、患者の心を捉えた経営かどうかが問われてくると思う。

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