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コラム『歯科医院経営を考える』

デンタル・マネジメント・センター代表 稲岡 勲

バックナンバー 2019

№507 日本国の行く末 

日本は現在小選挙区制をとっており、1選挙区からは1人の議員が選出されることになっている。この制度は1996年の衆議院選挙から導入された。1地域から1人を選ぶわけだが、平均すると人口約30万人から1人の議員が選出されることになる。これはこれで議員の顔が良く見えるし身近に感じることができるという点ではよい制度だと思うが、立候補する人間からすれば選挙人の顔がよく見える反面、どうしても日常的な問題に関心が行きやすい。ついつい私情に走る場合も出てくるのではないか。私情に囚われて贈り物をするという場面も多くなり、週刊誌に記事ネタを提供するという事態になり、就任間もない大臣が辞任するという事態を招いている。議員は広いビジョンで外交を語り、我が国の金融問題、防衛問題、経済問題といった広い、大きい問題に関心を持ち、日本国を常に頭に置いて考えるという発想が少なくなってくるのではないか。我々の住んでいる地域にどれだけ利益をもたらしてくれているかが大きな関心事になり、そちらに目が向いて視野が狭くなってしまったのではないかと危惧せざるを得ない。そうかと言って地元のことに目が向かなくなるのも困るが・・・。そういう意味で。一つの県から複数の候補者が立候補して争う中選挙区制度を考え直してもよいのではないかと思う。それともう一つ内閣府の存在である。何よりも大きいのは、省の人事権を持っていた事務次官から人事権を取り上げ内閣府が握り事務次官以下の人事権を握ったことである。それによって国会答弁で問題になった役人の「忖度」が問題になった。大臣の立場、発言を忖度した役人の発言が多くなったことである。かつての誇り高い日本の役人は政治家の言いなりにはならず、凛とした役人としての誇りが感じられたものだが、最近の役人は一回り小さくなったように感じるのはどうしてだろうか。政治家の考え、行動も以前に比べて一回り小さくなったことと、役人の誇りが消えて政治家の顔色を伺い従順になってしまったことが、日本という国を矮小化してしまっていると思う。今後の日本国の行く末に不安を感じざるを得ない。
                                   (つづく)
玉ヰニュース2019年 12月号より転載。

№506 臓器移植

先日、63歳の知人が自分の息子から腎臓を一つもらって移植手術を受けて元気になり仕事に復帰した。日本での臓器移植は199710月に臓器移植に関する法律が施行され、本人の脳死判定に伴い、書面により臓器を提供する意思と家族の承諾を前提に、死後の臓器移植及び角膜の提供が認められるようになった。以後日本では毎年移植手術が実施されているが、今年9月末現在で14,048件の移植希望登録数となっている。実際の臓器移植数は100件足らずで、数年の待機が必要とされている。ところでドナーの登録という制度がない中国では電話で問い合わせて数日待てば移植手術が受けられるという。1992年に李洪志によって法輪功という中国伝統の仏教と道教の教えを取り入れて体系化した気功法が爆発的に広がったが、政府批判をしたことから、当時7,000万人とも1億人ともいわれた信者が片端から逮捕され収容所に隔離されたと言われている。さらに中国政府はチベットの仏教徒やウイグル地区のイスラム教徒を弾圧し、多くの信者を拘束し収容したが、こうした施設から脱走し、そこから逃げ出してタイやベトナムに亡命した人の証言や、2006年に中国で臓器移植をしていた医者の妻だった人がアメリカに亡命して告発したことから明らかになり、国際NPO法人の調べでは6万件から10万件の移植が行われているという事実が明らかになっている。それも臓器の提供者は収容所に隔離されている受刑者や裁判で死刑が確定した罪人だというのである。宗教の信者は親戚に類が及ばないために姓名を名乗らないから番号で呼ばれているというが、こうした人間の臓器を取り出して移植しているというのである。収容所に入れられると、定期的に身体検査を受けさせられ、血液、腎臓、肝臓、心臓等の検査を強制的に受けさせられるという。恐ろしいことに病院には火葬場さえ持っているというから常軌を逸している。2016613日には米下院議会で、2019617日イギリス民衆法廷(エリザベス女王から権威を授与された法律家による裁判)で中国の臓器移植について弾劾裁判が実施され、中国に対して非人道的な行為として非難している。これに対して日本のマスコミが口をつぐって何も報道しないというのはどうしてなのか。
                                   (つづく)
玉ヰニュース2019年 11月号より転載。

№505 生活整備の基盤は国で

台風15号は千葉県を中心に神奈川県海沿、伊豆半島に大きな風水害をもたらし、914日時点で電力の復旧が2週間かかるという。たまたま台風15号が関東を通過している時に東京に出張していて翌日は環状線JR渋谷駅のホームで2時間半も立ち往生させられたが、未だに被害の実態が把握できていないという。伊豆半島や新島では家屋が壊滅状況だという報道もある。今回の台風は瞬間風速57.5mと風による被害が大きかった。大きな鉄塔が倒れたり、電柱が倒れる等の生活の基盤である電気や水道等の被害が大きいのも大きな特徴だ。それもまだ実際の災害の実態調査が進んでいない。いずれにしてもここ12年を見ても地球温暖化の影響からか自然災害が大きくなってきているように思う。国連の気候変動に関する会議がまとめた報告書によれば、温暖化ガスの排出規制が進まないと今世紀末までに海面が最大1メートルを超えると予測したと日経が報じている。昨年の7月には広島、岡山を中心に集中豪雨によって死者237人、行方不明8人、全壊6,767戸、半壊11,243戸が出ている。9月には台風21号が大阪北部を直撃して死者8名、重傷者4名、家屋の全壊1軒、一部破壊2,820軒という被害を、今年の8月には梅雨前線に伴う大雨で佐賀県武雄市を中心に広範囲の水害をもたらし、死者4人、全壊7軒、半壊1軒、床上浸水1,773軒が出ている。こうした自然災害の頻度と規模の大きさから考えても根本的な治水や災害対策の根本的な見直しが不可欠ではないか。例えば東電の送電設備への投資額は1991年で9,000億円から2018年は3,000億円に縮小していることが指摘されている。鉄塔の設計基準は10分間の平均秒速が40mに耐える設計になっているそうだが、君津市ではそれが12.8m、千葉県中央区でも31.9mしかなかったという。ちなみに沖縄での設計基準はそれが60mになっているそうだ。東電は福島の原子力発電で大きな負担を強いられているが、私企業としての限界にきているのではないか。電力のような基本的なエネルギー政策は全国の電力会社を一本にするとか、国が担うべきではないか。国や自治体は何もかも民営化の方向に舵を切っているが、電力や水道などは本来国や地方自治体が責任をもって維持するべきだと思う。地方自治体は予算が限られており資金不足なら国が積極的に乗り出すべきだ。
                                   (つづく)
玉ヰニュース2019年 10月号より転載。

№504 貧困率15.6%を直視すべき

昨年東京都中央区泰明小学校が自校の標準服に、海外高級ブランドのアルマーニがデザインした学生服に切り替えると発表して話題になったことがある。東京都内でもこの学区の平均世帯年収は972万円とされ、日本で一番の土地高公示価格地域でもある。住宅が極端に少ない地域だから学校選択制(特認校制度:中央区在住であれば学区外からも通学できる制度)を採用しているという事情もあるのだろう。ただこうした一方で、全国に広がっている一食100円~200円程度で子供に提供する子供食堂が16年には319か所だったものが、183月時点では2,300か所に激増している実態がある。最近は貧困の家庭の子供ばかりではないようだが、知り合いが経営している食堂でも、一般客向けに食堂を経営しており、客の有志の人から少額の寄付を募り、食券を発行して貧困家庭の子供の配っている店もある。過去日本は「総中流社会」と言われたことがある。ところが現在(2016年現在)の日本の貧困率は15.6%(年間の等価可処分所得の中央値の半分以下の所得-2016年は122万円-の人の場合)で、先進国ではアメリカ(20.0%)についで2番目に高い比率である。訪問する歯科医院では一人で子供を育てながらパートとして短時間勤務しているスタッフを時々見かけるが、理由はどうあれ、こうした家族を救済できる仕組みが不可欠ではないか?現在子供7人に1人は貧困家庭の子供だという。国は20204月から幼児教育・保育の無償化を、3歳から5歳は世帯所得に関係なく認可保育所や認定こども園、幼稚園費用の無償化を実現するとしているが、それよりももっと根本的な貧困対策が不可欠である。戦後日本は朝鮮戦争等特需で経済が急成長をし、以後高度成長期を迎えたが、1997年になると、今まで高度成長していた日本経済がおかしくなり、以後15年近くに渡り長期経済が停滞した。そうした環境下で労働者派遣法が出来、派遣社員を採用することによって企業は人件費負担を低く抑えることが可能になった。逆に派遣社員の年間給与額は減少して最近の資料でみれば年間300万円以下の労働者が7割に達している。そこに海外からの安い賃金労働者の受け入れを始めたわけだから給与ベースが下落し、さらに貧困化が進む可能性があるのではないか。
                                   (つづく)

玉ヰニュース2019年 9月号より転載。

№503 金属床総義歯(上顎)の価格差

713日から3日間、日本大学歯学部講堂で第60回、日本歯科医療管理学会総会・学術大会が、「新しい時代の歯科医療管理」~「今改めて安全・安心信頼の地域と繋がる歯科医療」というテーマで開催され出席した。今回は興味深い内容の発表があった。特に筆者が興味を持ったのは、愛知県歯科医師会の藤井先生が発表された愛知県で7年間にわたって新規開業の歯科医院を調査したもので、「愛知県歯科医師会における新人会員の実態調査について」であった。H(平成)23-41名、H24-37名、H25-64名、H26-62名、H27-63名、H28-57名、H29-84名で、新規開業が60.8%、事業承継が28.4%、開業までに10年以上の勤務医生活を送った先生が40.4%と最も多かったという。最近は高額な医療機器の購入が目立っているが、歯科用CTを導入した先生が53.6%だという。また北海道医療大学予防医療科学センターを中心にまとめられた「保険外併用療養の『特別の料金』における都道府県格差について」の発表は従来にない内容であったと思う。先ず、地方厚生局が公表しているデーターに基づいて、金属床による総義歯の提供:コバルト(上顎)についての自費診療における自費料金の都道府県格差の有無を明らかにしようとするもので、平成30101日現在のコバルト(上顎)金属床総義歯の全国平均価格は216,941円(n=25,448)であり、上位5県は、東京都:275,035円、神奈川県:254,791円、埼玉県:238,584円、京都府:238,421円、静岡県:234,923円だったという。また下位5県は、沖縄県:142,159円、島根県:145,469円、鳥取県:160,193円、青森県:176,297円、福井県:178,772円であったという。今後ほかの金属における状況やほかの要因との関連性を含め検討すると結論付けられていたが、今後の研究に期待したいと思う。同大学の予防医療科学センターでは、さらにう蝕に罹患している患者の指導管理でフッ化物局所応用における1口腔につき1回の特別料金価格を用いて都道府県毎の平均値を算出し、その比較もしている。全国平均は1,763円、最高額が福井県の2,255円、最低は熊本県の1,196円だったという。その他ポスター発表にもユニークな発表があり充実した学会であった。                                          (つづく)

※ 玉ヰニュース2019年 8月号より転載。

№502 老後の生活資金

金融庁の報告書で、定年後に夫婦で夫が65歳、妻が60歳から30年間生きるには約2,000万円の生活資金が不足するとの試算を公表して問題になっている。しかしこれは一般サラリーマンの厚生年金を前提とした金額であり、歯科医院の院長の場合はとてもこれでは足りない。そもそも国民年金では月額8万円程度にしかならない。仕事を辞めて年金等で生活しようとする場合の夫婦の生活費は最低で月約25万円とされる。年間25万円×12ヶ月=300万円である。仮に65歳で廃業もしくは子供に事業承継した場合は、平均95歳まで生存したとして夫婦で年間300万円×30年=9,000万円である。それも生活の最低額であり半端な金額ではない。歯科医院の場合これをカバーしてくれるのが「小規模企業共済制度」の事業主退職金である。従業員5人以下の小規模の場合なら加入できるが、入会するときに5人以下であれば問題はないし、加入後従業員数が増えても問題はない。また以前は専従者の加入は認められていなかったが、現在は認められている。(ただ医療法人の場合は加入できないことになっている)開業当初では月額7万円の掛け金は厳しいから3万円、5万円から始めて行けばよい。それに国も積極的に推進するために最高月額7万円、年間84万円の掛金を所得控除できるようにしているから節税効果が大きいことである。例えば課税所得が800万円で84万円の掛金の場合、節税額は277,000円、課税所得が1,000万円の場合なら361,000円の節税額になる。つまり800万円の所得で掛金(84万円)の32.9%が、1,000万円の所得では43%が節税になるという訳である。歯科医院を廃業すると退職金として支払われるが、最高額の月額7万円を30年間掛けていたとすれば、約3,043万円が下りてくる。専従者も同額掛けておれば6,086万円となる。この退職金に対する所得税は、仮に30年掛けていたとすれば、800万円+{70万円×(30-20)}=1,500万円が控除され、更にその半分に課税されるから所得税は1,088千円である。3,043-1082,935万円残り専従者と併せれば5,870万円が残る。ただ子供に事業承継した場合は、退職金の5%程度が減額される。歯科医師には定年がないのだから、健康で身体の続く限り長く診療することが何よりも一番だと思う。

                                          (つづく)
※ 玉ヰニュース2019年 7月号より転載。

№501 将来の地域モデル

最近はいろいろ調べ物をするときにインターネットを利用することが多い。例えば知らない土地に出張するときの宿泊先を探す場合は、インターネットの「るるぶトラベル」や「じゃらんネット」から探す。地域別に実に詳細な情報が得られるからすぐ見つかり、予約も素早くできる。それはそれで便利なのだが、一度宿泊すると、そのホテルの広告が全く関係のない画面でも頻繁に出てくるのである。つまり「何月何日にどのホテルを使ったか」の個人情報が利用されている証拠である。またアマゾンで本を探し、購入すると、購入した本と関連する内容の本がずらずらと出てくる。こうした個人の行動をAI等の技術で自動的にチェックし広告に利用しているだけなら問題はないが、意図的に収集、分析されているとなると怖い話である。中国では、当局に何らかの理由で要注意人物と認知された場合、顔認証と市中の至る所に設置されたカメラで徹底的に追跡され、監視されるという。一度日本の某TV局の記者が試験的に追跡を受けたところ1日の行動の全てが当局によって全て把握されていたというから恐ろしいことだ。以前に一度紹介した大分県臼杵市の「うすき石仏ネット」はその点からすると極めて安心のできるシステムだ。病院、医院、歯科医院、調剤薬局、健診、消防署、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション、介護施設を結び患者情報を共有することで、地域住民の医療状況や生活状況をネット上で共有できるように作られたシステムである。しかも上記のようなインターネットではなく、地元のケーブルTVの地域イントラネットを使用することで情報の流出を徹底して防いでおり、しかもサーバーは津波の被害を受けないように安全な場所に設置しているというから凄い。また災害時の救援活動で必要となる個人情報や医療状況も予め70歳以上の高齢者に対し定められた用紙を渡して書き込んでもらい、プラスチック容器を支給して、その中に入れ冷蔵庫に保管してもらっているという。何故冷蔵庫か?冷蔵庫はどこの家庭にもあり、災害時にも壊れにくく救助隊員が見つけやすいからだそうだ。臼杵市では地域振興協議会を住民主導で立ち上げ高齢化しつつある既存の自治会を補完し、住民やPTA、地域の関係団体と連携強化を図り、住民による高齢者の見守りや声掛け等を通じて地域の高齢者を支えあう仕組みづくりをしているというから凄いと思う。

                                          (つづく)

※ 玉ヰニュース2019年 6月号より転載。

№500 歯科医院の安定規模

某歯科医院の親子で3年間一緒に診療を続けてきたが上手くいかず、息子が独立して診療所を立ち上げることになった。大都市の中心地で周囲にはマンションもあり、コンビニが撤退した後の建物を借りて開業するという。チェアー3台を始め、CT、セレック、マイクロスコープ等々機器の設備投資を含めて約8千万円、運転資金を入れると約1億円近い資金が必要だというが、勝手に飛び出しておいて親に保証人になってくれと要請してきたという。院長が筆者に意見を聞いてきたから「院長が保証人になるべきではない。どうしても保証人が必要なら、院長の奥さんが保証人になりなさい」と回答した。独立して開業するということはそのような甘いものではないのである。もし行き詰って倒産すれば親まで倒産する危険性が出てくる。個人の歯科医院の倒産件数は余り表面化しないから分かりにくいが、大都市に行くと突然看板が無くなっているケースはよく見かける。最近は特に多いように思う。決して倒産が少なくなっているわけではない。設備投資が大きくなっている分、倒産も多く出ている。コンビニの建物であれば、来院患者は多いと思うが、地域の特性によっては老人が多くなる可能性や生保の患者が多く来院する可能性もある。その地域の特性をいろんな情報から入手しておく必要がある。例えば年齢構成等から、近くの商店街での商品の種類や価格動向、衣服等から近くの住民の所得階層、生活習慣等々集めるべき情報は多種多様である。その上で自分の診療方針を立て、それを確実に実践することが重要である。しかもスタッフの採用は容易に達成できても、院長の対応次第では簡単に退職するのも都心部での採用事情である。スタッフ教育も徹底して実施するべきである。今後の歯科医院経営の環境を考えると競争環境は益々厳しくなると思う。厚労省の医療施設調査によれば、平成24年の歯科医院数は、医療法人が11,481院、個人が56,378院である。それから5年後の平成29年の最新の統計によれば、医療法人が13,371院、個人が54,133院で、医療法人が2,390院増加し、個人は2,245院の減少となっている。勿論高齢化による廃業もあるから単純に比較はできないが、法人が増加していることは確実である。それは経営規模が大きく膨らんできている証拠であり、ドクターが2人以上いないと経営が安定維持ができないという証明である。 

                                          (つづく)

※ 玉ヰニュース2019年 5月号より転載。

№499 有給休暇の取得義務化

OEDC(経済開発協力機構)が公表している主な国の1週間の平均労働時間数を比べると次のようになる。中国46時間、韓国43時間、日本39時間、イタリア37時間、アメリカ37時間、フランスおよびイギリスが36時間、ドイツ35時間である。我が国もかなり短くなったがそれでも先進国では最高に長い。そうした事情からか、今年の41日から働き方改革関連法案が施行される。大きくは3項目の改革が実施されるが、歯科医院にとっての問題は、「年次有給休暇の取得義務化」である。使用者は10日以上の年次有給休暇が授与される全ての従業員に対して毎年5日、時季を指定して与えなければならないとしている。これは我が国従業員の有給取得日数が低いことが原因で作成されたと言われるもので、すでに休みと決まっている正月休み等の休みを縮小して与えるといったことを禁止している。具体的な基準では、週に30時間以上働いているパート、もしくは週30時間未満であっても週に5日以上勤務している従業員の場合、勤続7か月目から有給10日の付与が義務付けられており、この場合5日の有給休暇の時季を指定して、(〇月〇日と具体的な日を指定)与えることとなっている。つまり強制的に5日の有給休暇を取らせるという政策である。パートの有給休暇の場合は、1日の分の給与が支給されるから、与えられた有給は確実に請求してくるが、常勤の従業員の場合は取りにくいのが現状だと思う。しかし5日は「時季を指定して」与えなければならない。また正規の従業員とパート等の従業員との不合理な待遇差を禁止するという項目も設けられている。こうした法令は人手不足の現状からは厳しい内容だが乗り越えざるを得ない。また働き方改革を実践していくには医療サービスの質を落とさずに医院の生産性をどう高めるか真剣に考える必要がある。私共の試算した100件余の歯科医院の労働生産性として、スタッフ1人(ドクター、技工士を除く院内のスタッフで、パートは0.5人と計算)あたりの月額平均収入を算出しているが、その金額が月額1,234千円となる。これを少なくとも10%、月額1,350千円程度にひきあげる必要があると思う。                                                                                                                                (つづく)

※ 玉ヰニュース2019年 4月号より転載。

№498 公的経営指標

昨年末に総務省の統計委員会が、厚労省の算出した統計結果が不自然であると指摘したことに端を発して、国会を揺るがす大問題になったが、事の発端は「毎月勤労統計」調査の場合、従業員が5499人の企業はサンプル抽出により、500人以上の場合は全数調査により算出することになっていたのを、20041月からは東京都の場合は3分の1程度の抽出調査により結果を算出して公表していたというものである。いずれにしても経済の基本的な指標であり景気判断にも使用されているのだからもっと厳密に調査されるべきである。驚くべきことに、実際に調査員が企業や家庭を訪問して、紙に記録したり回答者に紙の調査票に記入してもらう等の方法で実施されているという。(日経)ほとんどの企業ではコンピューターで計算し、データーも電子化されている。そうした電子化されたデーターを直接受け入れる手法を考えるべきである。歯科医院の経営実態を知る上で最も信頼できる統計は、中医協が実施している医療経済実態調査だが、これは歯科医院の実態に合わせて、県別、規模別、医院別にその割合に応じたサンプル数を割り出して調査しており、より正確なデーターとなっている。先生方にも過去に記入要請があったと思うが、そういう意味で協力していただきたいと思う。今後の歯科医院経営を考える時、スタッフの給与水準に留意いただくことが特に重要だと考えている。つまり医院経営におけるスタッフの役割のウェートが高まってきているからである。ちなみに中医協が平成293月までに終了した(従って平成28年度の給与と考えられる)歯科医院のスタッフの給与水準の調査結果を公表しているので右記に記載しておきたい。                                                                                                                                  (つづく)

職種別給与額(平成28年)                    単位:千円、%
 給与額賞与額合計伸び率
歯科医師5,8785566,4344.0
5,8542056,0605.3
歯科技工士2,6793503,030△3.3
3,2703453,615△4.7
歯科衛生士2,3202952,6154.5
2,8403423,1820.4

◎上段が個人の歯科医院、下段が法人の歯科医院
       (H29年3月公表・中医協「医療経済実態調査」より)

玉ヰニュース2019年 3月号より転載。

№497 災害の備えを

昨年は災害の多い年であった。6月の大阪北部地震、7月豪雨、9月の台風21号の被害、北海道胆振東部地震、台風24号の被害等である。特に7月豪雨は広島、岡山を中心に九州から近畿、四国に及ぶ広範囲で被害が出た。この時広島の床上浸水軒数が3,158軒、岡山の1,666軒を初め18県で7,173軒の床上浸水があった。北海道の地震では死者41人、家屋の全壊が409軒、半壊が1,262軒(いずれも内閣府1月発表)である。年々水害被害が増えているように思う。地震の予知はどうしようもないが、風水害については自分の住んでいる土地や河川の状況を把握しておくべきである。特に歯科医院の場合は患者がいることでもあり、もしもの場合を想定して緊急避難の対策を考えておくべきである。特に基本的なことだが、先ず自己の住んでいる土地の特徴を知ることである。その場合に役立つのが国土地理院の航空写真で、今住んでいる土地の住宅地以前の土地の様子が分かる今昔のマップである。(インターネットで「国土地理院・今昔マップ」で検索すれば見られる)一番古い写真では明治30年頃は山地だったとか、池を埋め立てて住宅地にしているとかが大体わかる。埋立地の場合、地滑りやがけ崩れが派生し易いかどうかの予想が付くから予め調べておくべきだ。その上で国土交通省のハザードマップ(インターネットで入力する)で当該地域の災害リスクを知っておくべきである。北海道の地震でも問題になったが、家の建設前に埋め立て地だったという場合は、液状化現象が発生するから注意が必要だ。住んでいる家の下の土地がどういう経過をたどってきているのかを知ったうえで避難対策を立てるべきだと思う。歯科医院ではすでに火災保険や地震保険に加入されていると思うが、昨今の各地での地震災害から地震保険料が見直されてきている。例えば木造住宅の場合、今年の1月から熊本では25.9%、東京で6.2%の引き上げになっている一方、愛知県では9.8%の引き下げになっている。地震保険単独では加入できないから火災保険とセットで加入するが、もし被害が出た場合は、その状況を必ず写真に撮っておくことである。保険会社に実害の証明として証拠写真は絶対に必要である。それと修理のための見積書は準備しておきたいものだ。                                                                                                                                                     (つづく)

玉ヰニュース 2019年 2月号より転載。

№496 若い労働力を活かす

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
昨年11月に友人の経営する会社のベトナム工場創立15周年記念式典に参加する機会があり久しぶりの海外旅行であった。その会社は油圧ポンプの技術が優れており世界のトップシェア70%という技術の優れた会社である。最初は中国に設立する目的で何度も足を運んだそうだが、最終的には中止を決断してベトナムにしたそうである。中止の決断をした理由は、近くの戦争資料館のような所に、かつて日本軍が中国兵や市民を暴行、強姦、虐殺したという写真や絵が掲示されており、こうした雰囲気ではまずいなあと思ったという。しかし今思うに中国に進出しなくてよかったと心からそう思うと吐露していた。それに比べてベトナムは9,700万人の人口で平均年齢が28歳と若く、日本人にはなじみやすい民族だという。社員2,000人を束ねている社長は日本に留学していた40歳台の女性で、日本からの出向は1人しかいないと言う。技術を学ばせるだけでなく、毎年50人程の従業員を日本に派遣して、製品に対する考え、思いを伝えているという。今は相談役になっている彼が工場内に入っていくと全員が一斉に立ち上がり挨拶するという情景を見ていると40年ほど前の日本の朝礼風景を思い出す。記念式典では若い社員が舞台に出て歌や踊りでにぎやかに会場を盛り上げていてベトナムの熱気を感じる一時だった。もう一つ見学した会社は、日本人の女性が経営する会社で日本から出される着物を縫製している会社であった。しかもすべて手で縫っているのである。若い女の子70名ほどが見事に針を操って綺麗に縫い上げているのを見て驚嘆した。特に高額の着物の縫製の受注をしているそうだが、徹底して針使いを教え込み、全てが手仕事だという。どちらの会社も社員への技術教育だけでなく、どのような思想、考えで製品が作り出されているか、製品に対する創業者の思いを学ばせている点にある。縫製工場でも何人か社員を日本に派遣して礼儀作法を学ばせているという。国は出入国管理法の改正をし、外国人労働者の受け入れを拡大する決定をしたが、日本語や、基本的な技術をしっかり教育することと、給与等の待遇面をしっかり守る体制が不可欠ではないか。                                                                                                                                                 (つづく)

玉ヰニュース 2019年 1月号より転載。

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「ユニットの故障も、(メーカーが対応してくれない時) 対応してくれる。これは我々には非常に助かります。」

「対応も早い。又、色々な情報を提供してくれる事はありがたいです。対応がまじめで、本当に信頼出来る方と思います。」
 

非常に丁寧に迅速に仕事をして頂いています。

ゆめ咲歯科クリニック様(佐賀市)
「非常に丁寧に迅速に仕事をして頂いています。突然の非常事態にも対応して頂き、ありがたく思っています。」
 

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