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コラム『歯科医院経営を考える』

デンタル・マネジメント・センター代表 稲岡 勲

バックナンバー 2014

№447 エンディングノートの作成

ライフプラン(主に資金的な面からの人生設計)作成等についての相談に乗るファイナンシャル・プランナーという仕事がある。自分の夢や目標に対して総合的な資金計画を立て、経済的な側面から実現に導く方法がファイナンシャル・プランニングである。このためには、金融、税制、不動産、住宅ローン、生命保険、年金制度などの幅広い知識が必要になるが、これらの知識を備え、夢や目標がかなうように一緒に考え、サポートするパートナーが、FP(ファイナンシャル・プランナー)の役割である。顧客である個人から、収支・負債・家族構成・資産状況などの情報提供を受け、それを基に住居・教育・老後など将来のライフプランニングに即した資金計画やアドバイスを行う職業である。若い人の場合は結婚して子供ができたあたりから「ライフプラン」の作成を勧めたい。自分の仕事上の目標や夢、家族の目標や夢を実現までの計画をしっかり設計することが重要だと思う。ましてや歯科医院の院長として開業するとか親の後を継いで医院を経営するといった環境にあれば尚更である。事業には多額の資金が不可欠だが、銀行や親からの借り入れや医療機械器具の購入等事業計画の作成は不可欠であり、それを含めた自分のライフプランの作成を勧めたい。夢や目標をかなえるには、先ず事業計画とともに人生設計とその裏付けとしての資金計画が不可欠である。筆者も仕事の性格上CFP(サーティファイド・ファイナンシャル・プランナー)という資格を取得しているが、先日NPO法人日本ファイナンシャルプランナーズ協会の研修会に出席した。テーマが「エンディングノートの作成」である。最近はこのエンディングノートの作成がはやっているという。作成しているのは主に高齢者が多いようだが、突然死という事態もあり得るから50歳代くらいから作成しておくべきだと思う。最近は本屋で多種類のエンディングノートが売られているから自分で書いてみることを勧めたい。相続という視点とは異なり、自分史でもあり、自分がどのような思いで歯科医院を経営してきたか、どのような思いで診療してきたか、今までを振り返って家族への思いをまとめておくのもよいのではないかと思う。相続の契約書ではないから拘束力はないが自己の歴史、生きざまとしての意味もあり、寝たきりや介護を受けたい場所や、認知症になった場合の希望や延命治療に対する考え、病名の告知、死後の臓器提供の有無等々、家族に知っておいてもらいたい内容を明記しておくことも必要である。淡路島では放置された墓石が話題になったが、各地で放置され草ぼうぼうの墓が目立っているという。そういう事情から葬儀や供養について考えを記録しておくことも必要だと思う。最近は海洋散骨、樹木葬、宇宙バルーン葬、果ては宇宙創葬というのもあるのだそうだが、自分の意志を伝えておくことは重要である。

№446 人手不足の時代をどう乗り切れるか  

神戸のF先生の診療所には衛生士4名(内1名はパート)、歯科助手2名(1名はパート)、受付が1名の7名のスタッフがいる。先生の診療方針は歯周・予防に重点を置き、補綴治療や矯正治療も手掛ける中堅の歯科医院である。スタッフは56歳のパート助手が最高齢だが、衛生士は43歳、32歳、31歳、21歳と若く、歯科助手が33歳、受付は44歳と若いスタッフが多い。ところが32歳と31歳の衛生士が育児休暇に入っており、さらに追い打ちをかけるように受付が「膠原病」で入院するという事態になり大騒動となっている。若いスタッフが多いことは活気もあり、仕事の能率も高くてよいのだが、育児休業というハードルも大きい。院長がミーティングで非常事態宣言をして、残りのスタッフの結束を図り患者数を制限してなんとか乗り切っている。この先生の就業規則によれば、介護および出産・育児休業の場合は、給与は無給となっているから費用という点では問題はないが、(従業員の方でもハローワークによる「育児休業給付金」制度を利用すると、月額給与の67%が支給され、何日か働いた場合でも一部給付金が支払われる場合がある)問題は人手不足が続くことである。このような非常事態の時は余りみんなに無理をさせないで、患者に説明をして患者数を減らし無理なくやれる体制に切り替えるべきである。事情を説明すれば患者も分かってくれるし、分かってくれない患者がいても、そのような患者に決して医院にとってプラスにはならないから心配しないでよいのである。ただ患者を制限しても勤務する各スタッフに負担はかかるから、長期にわたるようであれば、パートの採用も視野に入れる必要がある。特に1日の患者数が40~50人となると受付1人では負担が大きくなるから、パートを考えるか2人体制にすべきである。衛生士の育児休業の場合は、メンテナンスの患者を絞って少なくし通院期間を延長するとともに、出産後のパート勤務を促す政策を考える。これには個々の衛生士の事情を十分考慮しなければならないが、個々の事情に合わせて働き易い環境を整え、できるだけ長期に勤務してもらう体制作りが不可欠である。それは今後スタッフの採用が極めて難しい状況になることを考えるからである。ブラック企業と言われた企業は、昨今の人手不足で倒産の憂き目にあっていると報告されている。若い人材が相対的に減少する一方高齢者が増加していくから、介護や福祉関連従事者の絶対数が不足してくると予想されている。電気設備工事会社や危険物取扱い業者では人手不足が激しく70歳、75歳の従業員も働いているというから、今後歯科界においても高齢の従業員といえども確保しておく必要が出てくるのではないか。歯科医院のように規模が小さいからこそ、一律に考えないで、各スタッフの事情を考慮して柔軟に対応することが重要だと思う。

№445 メディカルトリートメントモデル

最近は歯科衛生士を何人か置いて患者にPMTCやSRPを実施し予防に力を入れている歯科医院は多い。しかしこうした歯科医院が実践している予防と酒田市の日吉医科診療所が実施しているメディカルトリートメントモデルとの中身の差が今一つ理解できないでいたが、ザ・クインテッセンスの2014年1月号(vol33)でアメリカ・タフツ大学に留学された新進気鋭の熊谷直大先生と築山鉄平先生の対談記事を読んで氷解した。メディカルトリートメントモデルというのは、同誌63頁の定義によれば、「医科領域と同様に診査・診断に基づくリスク評価を行い、治療法を提示し、治療結果のモニタリングを行い、その再発を予防、あるいは健康状態を維持するための個別のメインテナンス策を講ずる」というものである。二人の先生が目指しておられるのは、このメディカルトリートメントモデルであり、歯科衛生士、GP、専門医とのコラボレーションの必要性を強調されている。お二人の先生の対談は日本の歯科医療の本質に迫る基本的な問題点を指摘されていると思う。上記の記事の冒頭のプロローグで熊谷先生は、歯科医師数の増加やう蝕罹患率の低下に伴い、昨今のマスコミで取り上げる歯科医師がワーキングプアと呼ばれている現状から「国民は本当に健康な口腔を獲得したのか」と問い、厚労省の統計等からは依然として日本人の口腔環境は劣悪な状況にある事を憂いておられる。残念ながら日本の歯科の保険制度には「予防」という概念が抜け落ちているといわれる。その上保険の医療費が極めて低い値になっている。同誌の58頁には、アメリカ、スウェーデンとの治療費の比較図が掲載されているが、アメリカを100とすれば、スウェーデンは47.1%、日本に至っては8.0%だそうである。また100院余りの歯科医院の経理を見ている熊本市にある某税理士事務所の資料によれば、平成15年の1レセプト当たりの点数が1,507.3点、10年後の平成25年の同平均点数は1,257.3点であり、16.5%も低下している。医院経営を安定的に維持しようとすれば治療する患者数を増やすか、自費診療の比率を上げざるを得ない状況にある。患者も「歯医者へ歯が痛くなったら行くところ」という既成概念ができてしまっているから、衛生士がカリエスリスクを説明してもなかなか聞く耳を持たない。我が国の歯科保険医療制度がさらにそれを助長する制度になっており、その結果が現在の国民の口腔衛生環境になっている。せめてスウェーデンのように未成年者には無償で予防処置ができるようにすべきだと思う。毎日が削ったり詰めたりして治療を行う今の日本の歯科治療から、どうしたら患者の口腔衛生意識を高め、患者一人ひとりの体質や口腔環境からカリエスリスクを計算して提示することで、患者自らが口腔衛生の向上に関心を持ち、努力して歯を磨くようになるか。築山鉄平先生も述べられているが、医科と違い、歯科は通院回数が多く患者教育のチャンスは多い。だとすれば特に若い歯科医師の先生方決断と実践以外に解決策はないのではないか。若い先生方に期待したい。

№444 ありがとう断食セミナー 

8月1日~3日の3日間、中国山脈の真ん中、吉備高原の一角にある神石高原ホテルで実施された町田宗鳳先生(広島大学教授)主催の「ありがとう断食セミナー」を受けてきた。常石造船が作った風光明媚な高原ホテルでの3日間は心身ともに軽くなるセミナーであった。今回で44回目だそうで「二度とない今」をテーマに実施された。このセミナーの目的は「心と身体の大掃除」である。断食はどちらかといえば苦行の一種と考えられているが、この断食セミナーは実に楽しくユニークなセミナーである。参加する初日の朝食と昼食を抜いて夕方参加し、オリエンテーションがあり、自己紹介の後に「ありがとう禅」が始まる。感謝の対象を決めて「ありがとう」を唱える感謝念仏、ハミングで「ありがとう」を唱えることでその音声に浸る観音禅、自分の願い事を叶える夢実現念仏の3種類の瞑想法である。感謝念仏は自分の先祖や家族の顔を思い浮かべながら大きな声で「あ、り、が、と、う」を繰り返し唱える。家族だけではなく知人や友達、仕事上の人への感謝をささげる。これはSOHO禅と呼ばれており、このSOHO禅を30分ずつ繰り返し唱え、散歩や簡単なヨガ体操、講話、歓談、写経等が織り交ぜて構成されている。その間野草や果物を材料とした酵素・野菜ジュース・青汁等を繰り返し飲むのでそれほど空腹を覚えないで座禅ができる。3日目の朝、SOHO禅を済ませて、梅干入り水を大きな鉢に3杯、ふろふき大根とその煮汁を入れた鉢で2杯飲み、ふろふき大根や野菜サラダを中心とした「感謝の食事」をいただく。ところが食事を始めて30分ほどすると急に便意を催してくる。尾籠な話で恐縮だが、真っ黒な糞が4~5回、まるで滝のように一気に宿便として出てくる。そうすると実に爽快な気分になる。体の宿便だけでなく、心の宿便も排泄してしまうことが「ありがとう断食セミナー」であり、断食によって長年体内に溜め込んできた毒素を体外に出し、本来持っている自然治癒力や免疫力を高めることが目的だと案内書にある。本当は身体が求めるものを少しいただくだけで満足できる食生活へと変わっていき、少食の身体になるといわれている。町田先生が対談した鍼灸師の森美智代さんの場合は、毎日青汁1杯(60キロカロリー)だけの摂取で13年間生きておられるという。しかも太って困るというほど体重もあるというのだから、人間身体の不思議さ、神秘さを感じざるを得ない。興味のある方は森さんの著書「食べることを、やめました」(マキノ出版)をお読みいただきたい。飽食の時代といわれ貧欲に食欲を追い求め、果ては病気や不安感に苛まれるという状態から解放され、必要なものを少しいただいて明るく、楽しく健康に生きることが求められていると思う。町田先生のホームページには「希望と喜びが光の意識としたら、怒りや不安は闇の意識、知らず知らずのうちに闇の意識が自分を苦しめてしまうものです。でも「ありがとう」を唱えていれば、光の意識が強くなります」とある。

№443 周術期口腔機能管理と医科・歯科連携

全国特定施設事業者協議会やサービス付高齢者向け住宅協会等4団体が5月下旬~6月10日にかけて1764か所の高齢者向け住宅や集合住宅を対象に実施した医科の訪問診療に関する調査では、調査対象の8.8%に当たる155か所で医師の撤退や交代が発生したと報じている。(平成26年7月5日、日経夕刊) 今年の点数改定では、医科においても(歯科は前から実施されている)同じ日に、同じ建物内で複数の患者を診察した場合従来の点数を大幅にカットしてしまったからである。例えば「在宅時医学総合管理料」は「同一の建物内」であれば(月2回の訪問が前提)4600点を一気に1100点に、訪問診療料は特定施設等が400点から203点へと減点された。これは在宅医療に手厚い診療報酬を出すことによって入院患者を減らそうとした方針に対して、若いドクターを採用して多くの患者を短時間で手早く診察するといった不適切な例や、介護付き老人ホームなどに入居する患者を紹介する見返りに医療機関から手数料(約20%と言われている)を取る患者紹介ビジネスを排除する狙いからだといわれている。いずれにしても性急な方向転換がもたらす弊害が発生した今年の点数改定ではあったが、今回の改定で注目すべきは「周術期口腔機能管理」である。全国公私病院連盟(1526病院が加盟)が96病院を対象にした調査では、9割近い83病院が歯科機能については「医科疾患で入院している患者の口腔管理」「入院患者誤嚥性肺炎予防」「入院患者の栄養摂取管理」を求めているといった歯科との連携に期待する回答が多かったという。(日本歯科新聞) 千葉県旭市の総合病院国保旭中央病院では、2012年4月から2013年9月までの間、胃癌で開腹胃切除・全摘出した全114症例について、歯科医や歯科衛生士による口腔機能管理を実施した群と、従来の看護師による口内清拭のみを行った群とに分けて術後の入院日数を比較した結果、有意差はなかったが、口腔機能管理実施群は11.7日で、実施なし群は16.0日より短く、在院日数が短縮する傾向が見られたという。(日経「ヘルスケア」5月号) 全床が回復期リハビリテーション病棟である長崎リハビリテーション病院では、地元の16歯科医院と連携して「長崎脳卒中等口腔ケア支援システム」を構築しているという。(同誌) こうした病院側の取り組みは口腔機能の回復によって入院医療の質を高め、退院を早める結果につながっているからである。歯科医師の教育内容には当然医科の内容も含まれているが、残念ながら医師の教育課程には「歯科」に関連した教育内容がなく(口腔外科では受けていると思うが)、病院側からの歯科に対する積極的なアプローチが低いのではないか。とすれば歯科の方からの積極的な働きかけが不可欠ではないかと思う。最近病院で歯科衛生士の採用が増えていると言われているのもこうした傾向の反映ではないかと思う。

№442 医療の永続性と法人化

グリム童話にこういう話があるそうだ。神様が動物にそれぞれ30年の寿命を授けるといった。そうしたらロバは「ムチでたたかれて労働を強いられる毎日だから、そんなに長い寿命はいらない」といった。そこで神様は18年引いてロバの寿命を12年にされた。次のイヌも「足尾を振って愛想しても足腰がつらいから、そんなに長い寿命はいらない」といった。そこで神様はイヌには12年を引いて18年にした。さるも「そんなに長い寿命はいらない。ボケて人の機嫌を取るのはごめんだ」といったので神様は、10年引いて20年の寿命にした。最後の人間は、「30年では足らない」といったので、神様はロバの18年、イヌの12年、サルの10年を足して、人間には40年を加えて70年を授けられた。だから人間は、30年間は楽しく充実した人生を歩むが、それを過ぎて48歳ころまではロバが経験するつらい厳しい人生を、続いての12年はイヌが経験する歯もダメになり足腰も立たないつまらない人生を、続いての10年はボケて人を笑わせるすべも持たない人生を送るのが人間であるというのである。しかし神様はさらに人間に10年を加えて今では80歳をはるかに超えている。人生80年とすれば、60歳が定年とはあまりにも早すぎる。少なくとも70歳までは現役で頑張るべきだと思う。歯科の先生でも身体が元気なら70歳までは診療を続けるべきだと思う。そうすると30代、40代は駆け出しである。この時代は徹底した学びの時代として、治療や診断の技術や管理ノウハウを徹底的に追い求め、極める時代ではないか。特にこの時代は修得した技術やノウハウを深める時代にするべきだ。50代、60代はそうして学んだ知識、技術を自分の中でまとめ体系的する時代である。それは実際に学んできた知識、技術を実際に自医院の患者に広め普及するとともに、後輩の歯科医師の教育と指導に当たるという時代ととらえる。そういう意味からも歯科医院の安定した経営を確保する適正規模は歯科医師が2~3名といったところだと思う。そのうえで法人化するのが望ましいと考える。現医療法での医療法人は持ち分の定めのない医療法人しか認められていない(解散時には出資した金額しか戻らず、余剰の資金は国もしくは地方公共団体に没収される)が、それだけ公共性を強くしたいという国の考えであろう。優秀な勤務医でも無理して個人開業するよりも、法人化された歯科医院で勤務医として働き、治療や研修にじっくり取り組める環境のほうが、将来性からみても最善だと思う。また相続問題で悩むこともなくなるし、歯科医師が3名いれば、矯正や歯周治療の専門医が在籍することでより広い治療も可能となる。しかも国は国の競争力を高めるために法人税率を35%から25%に引き下げようとしているから節税効果も大きくなる。思い切って法人化することを勧めたいと思う。

№441 労働条件の見直しを 

先日日本歯科医療管理学会関西支部の会議があり出席した。その折の課題の一つに歯科医院での労働基準法の遵法問題が話題になり、本当に労働基準法通り実施しているのは何院あるかが問題になった。例えば残業手当の試算式は、次のようになっている。
当月の残業代=当月の残業時間×{(基本給+手当)/(1か月の所定労働時間)}×1.25 
この計算式で、「当月の残業時間」というのは1週40時間の法内残業を超える時間(時間外労働)である。例えば1日の勤務時間が8時間で、始業時間は9時、終業時間が6時、昼休み時間が1時間とすれば、診療が始まる前の診療準備や掃除をする時間も時間外労働に含まれるし、就業規則には終業時間が午後6時となっているのに、実際の終業時刻が7時であれば、1時間の時間外労働(残業)となる。その場合の計算も30分未満であれば切り捨て、30分以上は1時間として計算することは認められているが、端数の時間(分)を切り捨てることは認められていない。また時間当たりの給与額を計算する上式{(基本給+手当)/(1か月の所定労働時間)}では、分子の「手当」には通勤手当や家族手当等は含まれないが、職務手当、衛生士手当、精勤手当等は含まれる。計算方法においても50円未満は切り捨て、50円以上は切り上げ100円にすることは認められているが、100円未満の端数は全て切り捨てという計算は認められていない等かなり厳格な計算を要求している。多いのは残業代の計算で、従業員各人の残業1時間当たりの定額を設定して、それに残業時間数をかけて算出する場合である。雇用環境が好転してきて人手不足が広がっている一方、過労死や長時間労働が増えつつあり、国は今後雇用環境改善に向けて労働基準法の順守を強く求めてきている。実際にも労働基準監督署の調査が増えてきているように思う。ある歯科医院で技工士とのトラブルがあり解雇したら、労働基準監督署に訴えられ、過去の残業代1000万円近い金額を請求され裁判で争ったが敗訴して698万円支払ったケースが出てきている。特に最近退職者からの残業代請求が増えてきているといわれているから注意したい。労働基準監督署には調査権や逮捕権まであり、侮ってはいけないと思う。一度調査を受けるとその後必ずチェックし、改善されているか監視されるから丁寧な対応が必要である。今までの慣行上なあなあでやってこられたことでも、今後徐々に規制が厳しくなるから見直してみることを勧めたい。先ず自医院のどこに問題があるかを見直してもらい、問題点があれば、それを3~5年の間に是正するような計画を立ててもらうことだ。従業員が何も言っていないのに条件をよくすることに抵抗を感じる場合もあると思うが、その計画を従業員全員に公表することで自分にプレッシャーをかけて実施していただきたい。そうすることで従業員の院長に対する信頼や態度も変わるはずである。就業規則も10人未満の場合は作成義務がないが、ぜひ作って従業員に公開することを通じて医院の体質改善を図っていただきたい。

№440 気遣いのできる人柄

先日、30年ほど前に法人設立のお手伝いをした歯科医院の院長から写真集が送られてきた。その添え書きに「この度『おもてなしの心を学ぶ』と題しました私たちの活動記録とも言うべき内容の写真集を作成いたしましたのでお送りさせていただきます」とある。この先生は都心から近い某県の市内で、守衛によって24時間守られている超高級住宅街の別荘に、ありとあらゆる種類のバラを植え、プールを設置し100人ほど収容できる部屋にピアノを置き、20名ほど宿泊できる超高級の別荘を持っているのである。そこでは研修会や勉強会を開き、時には患者を招いてスタッフ料理講習会や音楽会等を開いている。また才能はあるがまだ売れていない若い音楽家や車イステニスプレーヤーを招き、彼らの努力する姿勢や生き方を学び、支援するというNPO法人活動もしている。「ローズガーデンとゲストハウスを通じて様々な体験をさせていただき、手料理研究委員や文化活動委員をはじめTeam HDCが一丸となって皆様におもてなしをさせて頂く記録をご紹介させていただいております。どうぞよろしかったらご覧ください」と書いてある。この先生の場合、歯科大卒業と同時にアメリカに渡りインプラントや歯周治療の技術を学び、帰国後現在までに5診療所を設立し法人化して今に至っている。「医療に関する専門的な知識や技術以外に大切なことがあります。それは気遣いができる人柄であり、皆様が信頼してくださる教養を身に着けることです。世界の一流に触れる様々な体験によって個性や感性を磨いてきました。さらに輝く努力を惜しまずに続ける姿を見て頂きたいと思います」と結んでいる。自費診療収入は一時に比べてかなり減少したが、ほとんど減少していない医院もある。自費診療受診患者の層の厚い医院の典型が上記のような医院である。勿論保険診療も実施しているが、5割強が自費収入である。大阪に阪堺電車という市電がある。帝塚山近辺は比較的所得の高い層が居住しているが、それ以南は下町の中を走っている。ある駅に降りて30mほど歩く間に新築された比較的小さい家の軒先にベンツが1台、BMWが3台駐車している。風情は下町でも結構所得が低くないことを示している。30分で都心に出られるから、都心からこちらに移り住んできている人が多い。しかも比較的年齢構成が若いのが特徴である。今政府は混合診療の拡充の実施を検討しているといわれている。おもに景気刺激策の一環としての政策誘導のようだが、現在の年齢別人口構成を見れば、消費税が引き上げられたとしても、少なくとも5~6年先には医療保険の財政が行き詰まることは目に見えている。点数の上げ下げに一喜一憂をするだけでなく、もう少し先に目を据えて、現在通院してきている患者の歯への意識改革と患者一人一人との密着した関係づくりが不可欠ではないか。

№439 生活支援としての歯科の役割 

平成26年度の診療報酬の改定が実施され、初診料が218点→234点、再診料が42点→45点に引き上げられた。初診料が7.3%、再診料が7.1%の引き上げである。確実に現実の収入が増える点数だからプラスにはなるが、現実にどれほどの収入増加が実現するか注目したい。日歯では消費税増税分の初再診料に明確に加算することを求めていたから、初診料が16点、再診料が3点増となったのは一応日歯の主張が通ったことになる。またいろいろ条件がついているようだが、CAD/CAM装置を使って(実際に設置していなくても設置している技工所と連携があればよいとされている)作られたCAD/CAM冠1歯につき1200点が保険導入された。これなどは今後増えてくる可能性が高く収入増の一翼を担うのではないかと思う。CAD/CAMやCT等の先端の器械装置使用に対して、条件付きではあるが保険導入がなされてきた。医科のように新しい治療技術が保険に導入される傾向がつづくのかどうか注目したい。昭和50~60年にかけて日本経済の高度成長が進み歯科は治療技術の進歩とともに、自費診療が盛況の時代であった。一般に保険診療への関心が低く、医科のように保険にこだわって新しい技術の保険への導入に対して、歯科の先生方の関心が余り向いていなかったように思う。その後差額徴収が問題となり差額徴収禁止の時代を経て以後、保険診療と自費診療の区分が明確になり、保険と自費の併用診療の禁止とともに、日本経済の停滞が続き自費診療需要の低迷時代となって歯科医院経営受難の時代に入ったと認識している。今後の日本経済の構造的な問題や人口構成問題、或は所得格差の問題、財政状況等を考えると果たしてこのような状況下で未来は展望ができるのだろうか?医療費全体に占める歯科医療費の比率が徐々に低下してきており7%を切る状況にある現状を見据えて、自医院の長期経営戦略を立てておく必要があるのではないか。日歯の大久保会長は、日本インプラント学会関東・甲信越支部学術大会の基調講演「高齢社会における歯科医療の役割」で、「歯科は患者の生活を守る医療であり、医科は患者の命を守る医療である。どちらも同等の重要性を持つ」とし、今後歯科が進むべき道として、①ガン連携及び周術期口腔機能管理、②在宅医療の推進の二つが柱になると話されているが、患者の生活の質を高める医療をどう展開するか具体的な提案ができる医療造りが不可欠だと思う。食道ガンで経管栄養を受け徐々にうつ症状になり、ボケも始まっていた患者が、自分の歯で食物を噛んで食べるようになって以後、意識も明瞭になり他人との会話もできるようになったという報告がTVで紹介されていたが、こうした患者の生活支援としての歯科の役割は今後益々重要になってくるのではないかと思う。

№438 患者との強固な絆を 

比較的大都市やその周辺の市に多く設立されているサービス付高齢者向け住宅は営利法人が経営する有料老人ホームだが、そうした老人ホーム等との間で契約を結び、歯科医院に在宅診療への紹介を行うという患者紹介ビジネスや架空の診療所で往診のみを行う歯科医院の存在が問題になっている。筆者の近くでもバラックの診療所を建てチェアーを1台置いて、朝から晩まで毎日往診だけしている医院が出てきて大騒ぎになった例もあるが、1年ほどで潰れて長続きしなかった。最近の患者紹介ビジネスの例では老人ホーム等の施設と歯科医院との間に会社が介在し、先ず老人ホームとの間で契約を結び、在宅診療の紹介を受ける歯科医院から手数料として診療報酬の20%前後(定額のケースもあるようだが)を受け取り、一方老人ホームにもいくらかの報酬を支払うというものである。某企業の場合、実質は会計事務所が経営しており約30施設と契約してかなり稼いでいる会社もあると聞いている。知り合いの歯科医院で在宅診療を実施している医院があるが、以前に来院してきていた患者が寝たきりになったとか、足が悪くて通院できないからやむを得ず往診に出かけている医院が圧倒的に多く、採算を考えると積極的にはできない状況にある。その一方歯科の往診に20分ルールといわれる制約を設けたり、患者2人以上診た場合に評価が変わるというのも上記の患者紹介ビジネスの実態を想定しての対策なのだろうか?医科にはそのような制約はないと聞くが、真面目に往診している先生からみれば腹立たしい制約と言わざるを得ない。しかも在宅診療で平均点数が高くなると指導の対象になり、あらぬ疑いを受けるとなれば無理して往診しようという意欲が落ちてしまう。今厚労省は本格的な調査に乗り出しているというが、こうした指導の在り方を含め、根本的に歯科の在宅診療のあり方を見直す必要があるのではないか。真面目に真剣に取り組んでいる歯科医院を腐らせ、このような法律の隙間で稼ぐ企業をはこびらせる現状を何とかできないものかと思う。今回の診療報酬改定では歯科医院の訪問診療に1000円の加算が認められたが、具体的にどのように運用されるのかに注目したい。ただ診療報酬だけでこのような企業を排除することは不可能だと思う。研究会名目で歯科医師を集めて高額な入会金を取る業者も出てきていると聞くが、そのような業者の甘い誘いに乗らないことだ。それよりも自医院に通院してきた患者の口腔意識を高め、患者との絆を高めておけば、その患者が仮に老人ホームに入っても患者からの強い要求であれば、施設の方も無視することはできまい。今回の診療報酬改定の動きから、国も病院から在宅へと比重を移してきており、今後高齢化が進むとともに在宅診療への要望が強くなると思う。在宅診療を考えておられる医院は、先ず通院してきている患者との絆を強めることだと思う。

№437 医院の断捨離 

「断捨離」(だんしゃり、著者:やましたひでひこ、株式会社アスコム刊)という本がある。片付け術あるいは整理術とでもいえる内容の本である。誰でも感じることだが、部屋やものを整理するとなんとなくすっきりした気持ちになるのはなぜか?何故気持ちが良くなるのか?とある。実は家の中あるいは部屋の中と心の中は連動しているというのである。筆者の部屋も本や資料でごちゃごちゃである。部屋の中がとり散らかっているのは、心の中がとり散らかっているのと同じだと断じている。実に痛いところを突いていると思う。記憶力が低下していることもあるが、毎日ものを探すのに1時間程度費やすことがある。「断捨離」はヨガの修行を日常に落とし込んだ「生き方」術だという。ヨガには「断行」「捨行」「離行」の行があり、欲望を絶ち、執着を捨て、あらゆることを手離して自在に生きるための行法哲学だという。「断捨離」はモノ、コト、ヒトに向き合うことだといい、部屋の状態を客観材料にして、自分を診断し、部屋が散らかっておれば、それを基にして自分の心の中もケアしていくという考えを説いている。「断捨離」は徹底的に見える世界を整えていく行動であり、その結果として人間関係や小さいころのトラウマ等見えない世界をも変えていく力を持っているというのである。
先日小原啓子先生より「はいしゃさんの仕事・段取り術」(共著・医歯薬出版刊)を送っていただいたが、これは歯科医院の整理・整頓術であり、歯科医院での「断捨離」だと思う。作業のマニュアル化でもそうだが、単に規則を作り、文章化して書類として残すというものではない。何よりも院長の経営理念及び診療方針がスタッの頭に刻み込まれていて、医院全員の行動として反映されないと意味がないものである。そのためには院長がスタッフと真正面から向き合い信頼関係をがっちり積み上げていないと形だけ真似をしても生きた段取りができてないということだ。先ず前提として院長とスタッフ間の心理的距離を締めておく必要がある。日常の院長の行動からスタッフを信頼し、スタッフのために何が必要かを真剣に考えている院長があってこそスタッフも真剣に考えるものなのだ。院長の経営理念や診療方針がスタッフ行動規範として浸透するとともに、問題意識や能率向上への思いや患者への思いやり等の具体的な行動に反映されるものなのだ。患者が多く毎日バタバタ忙しく働いている医院ほど、効率の良い行動やマニュアル化の意味が大きいのだが、得てして実態はその逆で、無駄な行動が多い。それは院長自身の「患者が多い」という自己満足にとどまり、患者の待ち時間の長さや、スタッフの負担や手間が軽視されているからである。医院全体のシステムとしての効率をどう高めていくかをスタッフとともに真剣に考える姿勢が問われているのである。上記の本には、時間に追われず働くためには「時間の看える化」を行うとある。意思統一やチームワーク、スタッフ間の協力関係が充実していなければ本当によいマニュアルはできないのである。

№436 歯科医院経営の現状 

中医協が今年6月に実施した医療経済実態調査の結果(平成24年の実績値)が発表された。(別紙参照)それによると個人立歯科医院の1院当たり平均収入は42,318千円(注:校医手当等を含む)であり、内保険収入が35,891千円(介護保険の収入も含み、構成比率は84.8%)、自費収入とその他の収入の合計が6,427千円(同15.2%)である。対前年の収入伸び率は、保険が0.8%、自費その他の収入が2.4%のマイナスとなっている。経費の方は材料薬品費が3,555千円(同8.4%)、外注技工料が3,604千円(同8.5%)である。給与費が12,717千円(同30.1%)となっているが、専従者給与は比率から見て給与費に含まれていると考えられる。差引損益は10,965千円で25.9%である。私共の方も平成24年分の収支アンケートを実施しているが、保険収入比率が83.2%(その他の収入比率は16.8%である。校医手当等は含めず)また材料薬品費の構成比率が7.5%、外注技工料のそれは7.3%、福利厚生費、専従者給与を含む給与賃金は31.6%である。差引所得金額の比率は25.5%で医療経済実態調査とほぼ同じ比率になっている。歯科医院経営の現状を一言でいえば、約85%の保険と15%の自費によって収入を確保し、原価(材料+技工料)に16~17%支払い、専従者、スタッフに30%程度の給与を、その他の経費に27~28%程度支払うと残りの所得は25%(収入の4分の1)程度になるというのが現状の姿である。こうした実態を基に来年には保険点数の改定が実施されるが、来年は消費税も3%引き上げられる。前回引き上げ時の0.58%程度では明らかに損税になっているから、何%引き上げられるか注目したい。

 

項目個人・歯科医院法人・歯科医院
金額(千円)構成比金額(千円)構成比
保険収入35,89184.8%59,18878.1%
自費・雑収入6,24715.2%16,55021.9%
収入合計42,318100.0%75,738100.0%
材料薬品費3,5558.4%6,8869.1%
外注技工料3,6048.5%5,5237.3%
給与費12,71730.1%40,25253.1%
減価償却費2,3915.7%3,5364.7%
その他医業費用9,08621.5%14,44219.1%
医業費用合計31,35374.1%70,63993.3%
損益差額10,96525.9%5,0996.7%

注)資料:平成25年厚労省発表・中医協による医療経済実態調査
個人事業の場合の専従者給与について明記されていないが、給与費に含まれていると想定している。

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