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コラム『歯科医院経営を考える』

デンタル・マネジメント・センター代表 稲岡 勲

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№399 事業承継

知り合いの先生の息子が他の医院(インプラント等自費収入の多い医院)で勤務医を3年やって帰ってきた。ところが根管治療も完全にはできない。(そのような医院の場合、腕の未熟な勤務医に重要な仕事をさせることはない)しかも勤務態度が余り良くない。朝の朝礼には遅れてくる、症例研究会に出ても何も言わない、患者からは頼みもしない歯周検査をやると苦情が出る始末で、とうとうスタッフから文句が出てきた。院長の息子さんに対する姿勢が甘すぎるのではないかと言うのである。スタッフから文句が出てきて院長が複雑な思いになった。直接息子に文句を言うなら分かるが、何故院長である自分に向って批判してくるのか?というわけである。院長がスタッフの意見や考えを取り入れて運営していくと、スタッフのやる気が出てきて、スタッフの自主性や仕事への意識が高くなってくる。スタッフの仕事に対する参画度が高まってくる。つまり「私達の歯科医院」という意識が芽生えてくる。それは極めて大切なことで、いちいち院長が「ああせいこうせい」と言わなくてもある程度院長の考えに従って自発的に動けるようになってきているのだ。だからそのような兆候は歓迎すべき現象なのである。ところが息子のこのような態度、行動を院長が統制できないとスタッフは失望し、やる気をなくしてしまう。自分の息子であっても医院のルールに従わず、勝手気ままな行動を取る人間を放置するのか、と考えているからである。院長の息子という特別な存在ではなく、1勤務医という見方をしているから苦情が出てくるのである。このような歯科医院の場合、院長の息子に対する姿勢(寛容性、指導力、コミュニケーション力)が問われるし、後を引き継ぐ息子の方には技術の習得だけでなく、働く意欲や自主性の高いスタッフのモチベーションをどのように維持し管理していくかの自覚がないと現状の維持すら出来なくなる。院長の技術面や経営業績面の実績がよければよいほど、後を継ぐ息子や娘の力量不足が目立ってスムーズな承継が難しいのである。それだけ後継者の高い技術力や高い経営管理能力が問われるのだ。だから院長はそれを踏まえてより厳しい姿勢で後継者の育成をするべきで、業績や技術力の高い医院ほど妥協することなく厳しく育てるべきなのだ。大阪商人は娘に婿養子を迎えて、その婿養子を跡継ぎにしたというのはそのような事情が背景にあるのだと思う。先の院長のケースでは、そこに母親が入り、院長が厳しすぎるとくちばしをいれるからややこしくなる。このような場合、スムーズに承継できない。何とか引き継いでも業績はガタ落ちにならざるをえない。父親の技術やスタッフ管理の技術を盗み取るぐらいの貧欲さが求められるのだが、それが出来ない場合は、親と全く異なる治療技術や管理技術を身に付けることである。しかしそれを今後は親の院長が許容できるかどうかが問われる。事業承継とは経営権の奪い合いの側面を持っている。それを双方が自覚してお互いの思いを尊重しつつ譲渡していくというのは簡単なことではないのである。

№398 根管治療と混合診療 

某TV局が放映した「歯医者のソントク」という番組が面白かった。日本は治療費が安いから「ソンをしている」という。1人平均年間4万円の歯の治療費を払っているが、ハブラシを使って歯垢を取り除き、定期的に歯科医院へいって検査を受け、磨き残しの歯垢を除去してもらえば歯は長持ちして年間1万円程度で済むのだという。だから歯科医院に定期的に行って検診を受けるのがトクだというわけである。自分の歯を大切に磨いて、虫歯にならないよう注意するという意識が低いことが問題として取り上げられていた。
日本は保険制度が完備しているから、歯の治療代が他の先進国に比べて安い。しかしそれが逆に患者の歯への意識を低くしているというのなら問題である。そのTVの番組で、東京医科歯科大学の川渕孝一教授の調査した資料が紹介されていたが、1本の歯の根管治療の治療費の国際比較では、日本が5,839円、アメリカが108,011円、イギリスが92,220円、フランスが43,920円、スイスが36,601円だそうである。計算根拠は不明だが、アメリカの18分の1の治療費であり、他の先進国の治療費と比べても余りにも低い治療費である。根本的な制度や治療点数の見直しが行なわれないまま放置されてきた結果がこの金額だと思う。
知り合いの先生が、アメリカで歯内療法の専門医だった先生の「歯内療法研修会」に参加して帰ってきて嘆くことしきりである。ストレスが溜まってしようがないという。講師の先生は東京で「歯内療法専門医」として自費で治療をしているというが、自費診療できる環境ならよい。現実は下町の住宅街である。目の前の患者を前にして根管治療を自費でとはなかなか言い出せない。根管治療後はすべて自費診療扱いになるというから負担が極端に大きくなる。しかし研修を受けた治療内容は、目からうろこの理想的治療法であったから、良心にさいなまれてストレスになるのである。「全ての歯の治療を保険で」というのは理想である。しかし一方で医療財政がひっ迫しているという現実も直視せざるを得ない。しかし理想的でレベルの高い治療法があるのなら、他の治療は保険を使い患者の同意を前提にして、高度な治療内容を自費診療で患者負担にしてもらうというのは合理的かつ現実的な方法ではないのか?混合診療を拒否する厚生労働省のかたくなな対応は理解しがたい。
理想的な方法の根管治療を、自費診療で行なう歯内療法専門医の歯科医院で根管治療だけを受け、保険診療の歯科医院で補綴治療を受けた場合は、果たして混合診療になるのか?その場合はどのような理由で問題になるのだろうか?

№397 無駄な医療費 

厚労省が発表した平成18年度の国民医療費は33兆1,276億円であり、一人当たりの医療費は259,300円である。ところで年齢別医療費の医科と歯科を比較してみると、65歳未満の一人当たり医科の医療費が112,800円に対して、歯科は17,000円、65歳以上の医科医療費は512,600円、に対して歯科医療費は29,400円である。さらに75歳以上では医科が648,800円に対して、歯科は25,000円である。
高年齢化するほど歯科医療費の割合が医科に比べ低下していく。足腰が悪くなれば歯科医院への通院が困難になり、寝たきりになれば在宅診療に頼ることになる。従って今後歯科医療費を減少させないためにも在宅診療に力を入れる必要があり、さらに高齢化する前に歯や口腔の健康に対する意識向上を徹底させ、歯を残す戦略が不可欠であると思う。我が国の医療費は毎年1兆円ちかく増え続けているが、GDP(国内総生産)比は8%とOECD加盟国(EUとアメリア、日本、カナダ、オーストラリア等加入)より1%程度低い値になっている。相対的に低い医療費で世界トップレベルの死亡率の低さや健康を維持しているというのは優れた医療水準であり効率だというべきだが、しかし医療費を公的部門が負担する割合が82%と、他のOECD加盟国(平均72%といわれている)と比べて10%ほど高い値になっている。今後急激に高齢者が増えていくが、その場合の医療費の膨張は計り知れない。その場合不評であろうとも高齢者の自己負担をある程度引き上げないと効率の悪い医療費の無駄な消費に結びつくのではないか。
2008年現在の透析の患者は28万人と言われているが、生活習慣病といわれる糖尿病から腎不全に移行するケースが急激に増え、新患者は年間3万人といわれる。2000万人の成人に腎機能低下がみられ、うち400万人が透析予備軍と発表している(日本腎臓学会)。現在すでに透析医療費が1兆円を越えているという。(「日本の聖域」選択編集部編、新潮社刊) 1人の患者で月40万円かかるが患者の自己負担は1万円であり、その1万円も自治体から補助されるから患者自身には負担感がないといわれる。それよりも問題なのは、透析病院では透析に至らない患者でも前倒しで導入させられるケースが相次いでいるという。それが事実とすれば由々しい問題である。2006年に240万円のワイロを受け取ったとして豊橋市民病院腎臓内科の部長と紹介先のAクリニックの院長が逮捕される事件があった。Aクリニックは2005年の収入は7億2,000万円、うち上記の部長が紹介した患者の医療費は1億600万円にのぼっているという。医療といえどもどこかでチェック機能が働かないと暴走して無駄な医療費が使われてしまう。

№396 真剣勝負 

同郷の友人の中で刀に詳しい人がいて、その人の案内で、奈良県東吉野で刀鍛冶をしている河内国平刀匠の鍛冶の現場を見せてもらった。炸裂する火花、腹の底に響く鍛冶音等想像を絶する現場であった。今年は殊のほか暑い中、閉め切った薄暗い部屋の中で、青白い松炭の火を焚きながらの作業で汗びっしょりの現場であった。砂鉄を「たたら式製鋼法」で低温還元(1300度~1500度)して作った鋼のうち、含有炭素量が約0.3%~0.5%ぐらいのものが刀剣を作る玉鋼(たまはがね)である。(「刀匠が教える日本刀の魅力」著者河内国平他著、里文出版刊)この玉鋼を薄く平に打ち伸ばして小割りにし硬い皮鉄(かわがね)用、柔らかい心鉄(しんがね)用に分け、心鉄は刀身の中心に、皮鉄は刀身の外側に入れて作られるが、それぞれ10回程度火に入れ打ち付けて鍛練して最後に重ねる。だから切れ味鋭く、且つ折れない刀ができる。
刀から出たことばに「鍔(つば)迫り合い」「日貫通り」「鎬(しのぎ)を削る」「反りが合わない」「元の鞘(さや)におさまる」などがあるが、面白いのは「折り紙つき」という言葉で、室町時代から刀剣の鑑定は本阿弥家が発行しており、奉書の紙を二つ折りにした折り紙に刀剣を乗せ作者の真否、代金の評価を行い、金子4枚(1枚は10両大判1枚)以上を評価する高額の刀剣に発行し、それ以外の刀剣には「下げ札」と呼んで幅の狭い断ち切りにした紙に鑑定を書き裏に印を押して発行したという。それが人物評価に使われ、優秀な人を「折り紙つき」といい、良からぬ人を「札付き」というようになったという。こうした河内国平親方の話を聞いていて、刀が日本文化として、我々の生活の中に根付いていることを実感せざるを得ない。
今や刀は武器でもあると同時に美術品でもある。従って美術品としての刀には登録証が存在し、その刀を購入した場合は名義を変更するだけでよいが、登録証がない場合は、武器となり速やかに警察に届け出なければならない。(銃刀法)刀の形をしていても古来の製法で作られた刀剣でなければ登録できないという。河内国平親方の話では、刀は1振り(1本と言わずに1振りもしくは1腰という)として同じものはないという。1振り1振り個性を持って生み出されているということだ。鍛冶の現場での光景を思い出すと、それは生みの苦しさというか、「親方と鉄とが取っ組み合って文字通り火花をちらし、鎬を削っている」という印象であった。人の組織も、お互いに真剣勝負で渡り合うからこそ切磋琢磨できるし、成長するのではないか。そうした過程を得ないと真の関係が出来ないように思う。

№395 飴玉の害 

以前から下顎左側の第1大臼歯、上顎左側の第1大臼歯が、冷たい水を飲むとピリピリ浸みることと、下顎右側の第1大臼歯のクラウンが取れてしまったので知り合いのA先生に診てもらった。まず下顎右側の第1大臼歯のクラウンはビスのようなネジで固定してもらい、左側上下の第1大臼歯は歯肉が退化していて露出しているというのでレジン(?)で補強してもらった。ところが浸みるような痛さは少し軽減されたが、痛みがとれない。また下顎右側のクラウンも硬いものが噛めないのである。この先生には何回か診てもらっているが、最初にパノラマ写真を撮り、その診断結果を基に治療を進めてくれているのである。冷たい水が浸みることを訴えているのだが、歯の根っこが露出しているせいであるという結論を変えないので、別の知り合いのB先生(自宅から1時間30分はかかる)に診てもらうことにした。B先生は私の訴えを聞いていたが、すぐ歯科用のレントゲンで何枚かの写真をとり(9枚法?)、即コンピューターの画面に出して診断してくれた。その結果は驚くべき内容で、左側上下の第1大臼歯の隣接面にかなり大きいう蝕が見つかったのである。しかも上顎の第2大臼歯にもう蝕があるという。即治療にとりかかってもらったが、1回では治療しきれず、こんど3回目の通院予定である。また右側のクラウンも3根にそれぞれネジが打たれているのだが根管の大きさに比べて太く、根管が破折する可能性があるという。そういえばA先生はインプラントに使うものだと言っていた。これで5年はもつでしょうと言ってくれていたのだが・・・。
今回期せずして2人の先生に診てもらう機会があって思うのだが、A先生も一生懸命診断して治療してくれたと思うのだが、診断のあり方が問題ではないかと思う。水が浸みてピリピリするという原因が何通りかあるとすれば、その一つ一つに対して検討を加える慎重さがあってもよいのではないかと思う。パノラマレントゲンも重要だと思うが、局部の診断には2~3根が大きく映し出される歯科用レントゲンに限るように思う。
以前から歯磨きに注意して、毎日寝る前の15分間は歯を磨くことに専念することにしていたので絶対の自信を持っていたのだが、今回のような事態には自分が一番驚いている。そうして反省することは、筆者の食生活についてである。口臭が気になってついつい飴玉をなめてしまうのである。それも仕事中になめるケースが多い。これではいくら歯を磨いても虫歯になるはずだ。今はB先生の医院に通院しているが、B先生の衛生士さんは、筆者の食生活についてまで知ろうとしないのは何故だろうか?以外に年配の人は筆者のような口臭や口腔の乾燥で飴玉をなめている人が多いと思うのだが。

№394 人材(財)力 

パナソニックが公表した2011年春の新卒採用計画は、国内外合わせて前年比10%増しの1390人で、うち国内採用は前年比210人減の290人、一方海外採用は、47%増の1100人で過去最多だそうである。今後新卒採用に占める海外採用の比率を8割まで高めるという。最近は旭硝子や楽天といったグローバル企業といわれる企業の多くは、国内ではなく海外の人材採用を大幅に増やしてきている。2000年前後の就職氷河期に次いで第二の就職氷河期が始まったといわれるが、このような状況が続けば学生の就職環境が良くなることはないのではないか。大企業の多くは海外採用を増やして、国内の採用を抑制している事実を公表しなくなっているという。世論の反感を買う恐れがあるからである。就職環境ばかりでなく、学生の学力も低下しているといわれる。今年3月に来日したハーバード大学のドルー・ファウスト学長は日本人留学生の減少に懸念を表明したという。ハーバード大学は理工系のマサチューセッツ工科大学とともに、世界から優秀な学生が集まる屈指の大学だが、今年の1年生の内韓国人は200人、中国人が300人に対して日本人はたったの1人だという。留学がすべてではないが、日本の若者の学力も積極的な意欲も減退しているのであれば問題だ。国にしても、企業にしても今後の発展を左右するものは人材である。国力も企業力も結局は人材(人財)力なのだ。国際競争も、企業間競争も優秀な人材なくして成り立たないのである。最近国際受注競争の原子力発電所建設や高速鉄道設置で日本は立て続けに韓国に敗退しているのもこうした人材力の差が出てきているのかもしれない。歯科医院のようなサービス業においては特にその傾向が顕著にでてくると思う。歯科医院の競争力は技術と設備、応対力にあると思うが、特にスタッフの占める能力が大きい。例えば衛生士の能力ではスケーリング・ルートプレーニング等の技術とともに、患者との人間関係をスムーズに築けるコミュニケーション能力が要求される。それと「医療職」に従事しているという誇りと意欲である。このような職業上の意識を高めるために院長の理念の浸透が欠かせない。院長は繰り返し理念を語り、何のために存在しているかをしっかりスタッフの心に浸透させる努力が重要だと思う。それもスタッフの目線で考え、目線で語り訴えるこだ。と同時に待遇面でも高い水準を維持する努力を惜しまないことである。常に設備、医療技術、応対そうしてスタッフの待遇面でも最高の水準を目指し、他の医院との差別化を図ることである。

№393 先を見据えることとニンビーの排除 

EU(欧州連合)加盟国のギリシャが経済的苦境に陥り、EUと国際通貨基金(IMF)から2兆3000億円の緊急融資を受けることで合意されたという。しかし事態はこれだけで終わりそうにはない。同じ問題を抱えているポルトガル、イタリア、スペインにも波及して欧州全体の信用不安が起きている。EU各国のソブリンリスク(それぞれの国で発行されている国債が償還されないのではないかというリスク)のためにEU全体で93兆円の資金を拠出するというが、一時的な信用不安を抑える程度に過ぎないという見方もある。ギリシャはせいぜい神奈川県程度の大きさの国だが、脱税天国で、ギリシャ経済の4分の1がヤミ経済といわれる。2009年に150人の医師に関する調査をした資料があり、年間所得が3万ユーロ(273万円)という医師が約半分を占めている。そういう医師の多くが車は勿論ヨットも所有しており、優雅な生活をしていると言われている。1万ユーロ(91万円)の所得しかないと回答している医師が30人もいたという。単純な比較はできないとしてもヤミ経済が4分の1というのは凄まじい。過去に、失業者に仕事を与えるという名目で多数の人を公務員として採用したから人口の5人に1人が公務員と言われており財政が破綻寸前という状況にある。EUは政治的に結びついた組織ではあるが、経済的にはそれぞれの国で独占しているので、一旦経済的な不安が生じるとなかなか治まらないという問題がある。
しかしギリシャの問題は日本にとっても他人事ではない。単純に比較してもGDP(国内総生産)に対する借金額の比率は、ギリシャの125%に対して、日本は181%だというから比率だけを見ると更に日本は深刻な状況にある。日本の国債(借金)は国民や政府機関が所有しているから大丈夫だという声もあるが、国の政権が国民に大盤振る舞いをした結果の付けは最後に国民に戻ってくることを銘記しておくべきだ。と同時に沖縄の普天間基地に象徴されるようにNIMBY(Not In My Back Yard、「ゴミ処理場は他所に設置するのはよいが、自分の裏庭に設置するのは絶対に反対」という利己主義)の考えを反省してみる必要がある。過去の高速道路やダムの建設等の巨額な公共投資を、あれもこれもと地域エゴをむき出しにして要求してきた結果が、今の事態を招いている。10年、20年先を見据えて、今何をしなければならないかを考えるべきである。
歯科医院経営とて先を見据えることが肝心である。高齢社会に突入して高齢者が蓄えを引き出したときに国債が償還できるのか、国の財政は大丈夫か、歯科保険医療費は確保できるのか、等々目をそらさずに直視して、患者の健康のために今何をすべきかを考えておくべきではないか。

№392 歯科医院経営の黄金ルール 

筆者が所属している国際ボランティア団体のパイロットクラブ(アメリカ、ジョージア州のメイコンが本部)の全国大会が高松で開催されたので行ってきた。その会議の講演会で講師を務めた高松市の「NPO法人セカンドハンド」の理事長、平野キャサリン氏の話が興味深い内容だった。同氏はカナダのODAのコンサルタント会社に勤めて、主として開発国援助の仕事をしていた人だが、作りっ放し、やりっ放しの援助に疑問を感じて、これは先進国のためにやっているのではないと不信感を持ち、一人の学生が始めた奉仕活動に参加して、現在はその活動拠点「NPO法人セカンドハンド」の代表を務めている。(セカンドハンドとは、「一本の手は自分のために、もう一本の手は他人のために」という意味である。支援者から無償で提供された品物を、無料もしくは格安で借りた店舗で販売し、収益金を国際協力の資金に充て、運営は無償のボランティアスタッフが行い、主にカンボジアを中心に支援している。カンボジアはポルポト政権によって優秀な人材が根こそぎ殺されてしまい、国を背負う優秀な人材が少ないと言われている)同氏がボランティア活動の黄金ルールとして挙げた中で次の2つが歯科医院経営にも通じると思う。
その一つは、「相手を幸せにしようと思うなら先ず相手のことを考える」ことにあり、先ず相手をよく見て何が必要かを考えることだという。魚を与えるだけでなく、魚の釣り方を教えることだという。2番目は人材育成である。エンパワーメントつまり組織自体が成長していくためには、基本的な考え方や手法、ビジョンを共有化して、そのビション実現のために学習し、その過程で成員の潜在力を引き出し生かすことだという。セカンドハンドの学生部である「小指会」は中学生から大学生まで参加しており、毎年そのうちの数名をカンボジアに連れて行き、カンボジアの学生と交流体験をさせている。「小指会」の「カンボジア体験記」には、次のような女子高校1年生の体験が掲載されていた。「電気があって、綺麗な道路があって、綺麗な水があって・・・当たり前だったことが当たり前じゃない生活。私には時間が、物が、お金が全てそろっている。だからこそ私なりの無駄のない時間の過ごし方をしたいし、しなくちゃいけないと思った。カンボジアの人たちのように心の強さを持ち続けたいと思う」と綴っている。
患者の幸せを考えるなら、患者のことを考え、この患者にとって何が今必要かを考え、患者自身にそれを気づかせることであり、エンパワーメントつまりスタッフの潜在力を引き出すためには、基本的な考え、ビジョンを語り共有化して、そのビジョン実現のため学習し学びあうことである。それが組織全体を成長させていくのだと思う。

№391 歯周・予防のメンテナンス 

今年も20件足らずの歯科医院の確定申告書作成のお手伝いをしたが、全体の対前年比の収入は4.2%の減少であった。増加した医院数は42.1%、6割近い歯科医院が減少したことになる。最高の落ち込み額は18,983千円、最高に伸びた額は7,431千円の歯科医院であった。大きく収入が落ちたこの歯科医院は自費収入の減少が大きいが、大きく収入が減少した歯科医院には二通りのパターンがあるように思う。一つはこの歯科医院のように自費収入の落ち込みの大きい歯科医院であり、経済の好不景に左右されており、どちらかといえば都心部に多い。一方保険収入が大きく落ち込んでいる歯科医院があるが、これも立地条件の影響が大きいように思う。比較的所得の低い階層の多い地域では、患者が次の予約を取らずに「電話で予約しますから」等といって治療が中断になるケースが多い。従って患者数の減少が影響している。一般的には地方の歯科医院の収入が安定していると思うが、地方でも平均年齢が50歳、60歳代の歯科医院では平均して収入減少が目立っている。徐々に世代交代が進んでいるようである。院長の高齢化と共に患者層も高齢化していくが、若いスタッフを多く入れたり、内装を変えたりして積極的に「アンチエイジング戦略」をとっている歯科医院の場合はそうでもないが、子供が全部大学を卒業して夫婦2人だけで、のんびり診療等という歯科医院の収入の落ち込みが大きい。しかし経営的には何ら問題ないのである。先日聞いた話だが奈良県の平均レセプト枚数が100枚足らずであるという。もっと多いのではないかと意外な感じがするが、高齢の院長の歯科医院が相対的に多く平均値を引き下げているのである。
比較的安定した実績を挙げているのが、歯周・予防のメンテナンスに力を入れている歯科医院の場合である。歯科衛生士を2人以上置いて、専門的に積極的にメンテナンスを行なっている歯科医院の場合は収入が安定しており上下幅が小さいように思う。患者にメンテナンスの知識が普及してくると、年間3回~4回は来院するからそのような患者が何人いるかでメンテナンスによる年間収入が読めるのである。またこのような患者は歯に対する意識が高いから院長の方針にもよるが、積極的に自費診療を勧めると自費への移行が多くなるのである。
今後益々高齢化が進むと同時に、医療保険財政は極めて厳しい状況に置かれることは明らかである。とすれば若い院長の場合は特に自費診療に活路を見出さざるを得ない。そのためにも歯周・予防のメンテナンスを積極的に取り入れることが不可欠ではないかと思う。それも衛生士の丸投げしないで最初は院長自らがスケーラーを握るくらいの積極的な姿勢で臨むべきである。

№390 医療関係者への歯科関連知識の普及を 

政権が交代し民主党になって初めての保険点数改定が中医協で決定された。驚いたのは歯科の初診料が36点も引き上げられ218点になったことだ。(医科は2点引下げられて270点になった)しかし依然として52点の差がある。ともあれ一気に差が縮まったことは朗報である。再診料も歯科再診料は2点上がって42点になったが、医科は71点が2点下がって69点になったから、差が31点から27点へと縮まったことになる。いずれにしても初診料や再診料で医科・歯科に差があること自体が異常だと思う。しかし一方ではスタディーモデル(50点)の廃止や、デジタル加算がなくなったし、義歯管理料も新製有床義歯管理料が、これまでは装着日から1ケ月に2回、100点が算定できたが、1回に限定され150点になり実質減点になった。どのくらいの減収になるか見当もつかないが、全体としては収入増加になることは間違いないと思う。ただ医科と歯科に微妙な隔たりが出来たことは避けられない問題で、今後の共同歩調に影響してくると思う。その意味で医科との関係は対政府との戦略的交渉の視点から共闘と独立の関係作りが不可欠になってくると思う。
ただ個々の歯科医院の段階では、各地域の医科の先生との連携の必要性は増してきているように思う。先日岐阜のある歯科医院を訪問したが、近くに若い院長の内科医院が開設されたことをきっかけに連携され、患者の内科的な問題では相談に乗ってもらっているという例があった。その先生に患者を紹介したり、その先生の往診先を紹介してもらって在宅に力を入れると共に、協同研究のテーマを見つけて勉強会を持ったという例があった。これなどは稀なケースだが、もっともっと広げるべきではないかと思う。介護や在宅診療は医科の先生が中心に展開されるが、だからこそ医科の先生方に歯科関連の情報を提供して理解を深めてもらうことが重要ではないか。疾病の予防並びに健康を維持増進させることを目的として設立された「一般社団法日本健康医療学会」では、これからの歯科医療では、健康に関する全身的知識が必要だという趣旨で、健康医療コーディネーターの養成を行なっているが、こうした医科と歯科の橋渡しになるような人材も必要になってくるのではないか。特に医科の先生やスタッフに対する歯科関連知識の普及が非常に重要ではないかと思う。

№389 保険の枠を超えた発想を 

日本からも多くの患者が治療のために訪れている韓国のYe歯科医院では、独自の治療のための歯科材料ブランドまで作って成功を収めている(一時経営不安の情報が流れたが、現在は経営を継続している)。また韓国の病院でも特異の治療技術を活かして海外、特に中国から患者を呼び寄せて繁盛を極めているという。これは昨年からのウオン安も大きな味方になったものと思うが、国を挙げてこの戦略に取組んでいる。こういう点で日本は大きく立ち遅れていると思う。財政状況の先行きに暗雲が立ち込めているのだから、医科・歯科ともに思い切って海外からの自費の治療ツアーを誘い、技術の高度化に力を入れることが重要なのではないか。Ye歯科医院の経営ノウハウ等いくら仕入れても日本独自のノウハウを作らなければどうにもならないのだ。アメリカを始め一部の国の富裕層の観光客が京都や奈良にやってくるが、多くは日本の旅館に泊まるという。それは日本独自の親身なサービスであるといわれており、常に満杯になっているという。日本の治療技術は安い治療点数の下で効率よく、献身的な対応で発展してきた。それを今生かすときではないかと思う。高齢者が増えていく中で高齢者の慢性医療に努力するのも必要ではあるが、もっと急性医療の治療にも力を入れるために海外から若い患者や人を呼び込み高度医療の技術を高める必要性があるように思う。
徳島大学と徳島県が連携して、得意の高度な医療を打ち出し海外から患者を呼び寄せると共に観光にも力を入れて治療と観光のツアーを組むと言う戦略を立てているという。また九州では「航空券はタダ」という航空会社の設立が構想されていると日本経済新聞は報じている。訪日客には航空券の代わりに「九州バウチャー」という「擬似通貨」を買ってもらい、それで九州各地で買い物や旅行をしてお金を九州内に落としてもらう。1人10万円分を九州各地で落としてもらえば、1日1000人として年間1000億円になるという。そこでJTB九州や西鉄、九州電力等と福岡県、九州大学が中心になって構想しており、九州各地の空港と北京、上海の空港を結び、中国人旅行客の訪日需要を掘り起こすという。以前にも取上げたが、日本には計画中も含めて98の地方空港がある。日航が法的整理に入ると飛行機が飛ばない空港になる可能性が高い。能登空港は定期便が1日2便しかこないが、チャーター便は年40~50便が飛来しているというので、中国や台湾からの観光客を呼び込む戦略を考えているという。国境を越えて観光客や医療ツアー客を取り込む戦略は人口減少の日本にとって経済活力の源泉になり、また医療需要の再生につながると思う。歯科は差額徴収に走って保険点数の引き上げに積極的に運動してこなかったという反省が聞かれるが、今後は保険に頼れなくなるという発想を持つべきだ。そのためにも国や地方の規制を緩め、地方が自由に動ける体制が不可欠である。いちいち国の許可を取らなくても民間企業や医療機関が自由に行動できる態勢(ただし保険医療以外)が必要だと思う。

№388 日本の財政事情 

今政府は来年度(2010年)の国債発行額を44兆円にするかどうかでもめている。2010年度の概算予算の要求額が96兆円、不景気で税収が落ちて47兆円しか入らないという。それを国債で埋めてもなお歳入不足になるからである。
財務省の平成21年9月末現在の国債残高表によれば、内国債694兆2982億円、借入金が56兆2036億円、政府短期債が114兆208億円、それに政府保証債務が45兆6008億円で、合計910兆1234億円となっている。税収が47兆円だとしているから税収の20倍近い恐るべき借金である。
日本の場合、日本銀行の統計によれば個人の金融資産が1400兆円あるという。ところがこのうち、400兆円は家計自身の住宅ローン等を抱えているために帳消しとなり、約300兆円は株やファンドを通して企業部門に投資されており、200兆円が海外に投資されているという。残りの500兆円は一般政府や負債をファイナンスするのに使われているのだという。910兆円から500兆円を引いた約410兆円分は郵貯銀行や一般銀行の預金を通じて、国債の購入に充てられていると、慶応義塾大学の池尾教授が指摘している。(週刊東洋経済09年10月17号)しかも一般政府へのファイナンスの500兆円も、実態は公的年金等の積立だというから、1400兆円といっても投資している500兆円以外は、ほとんど借金の担保に入っているようなものである。日本はGDP(国内総生産)の170%に及ぶ国債(借金)があるのに、国の信用格付けが落ちないのは、そのほとんどを国民が買っているから国際的な信用ランクが落ちないだけなのだ。ところが個人が所有している国債を老後資金のために国民が一斉に売り出したら、日本の国債は暴落すると同時に金利が高騰して一気にインフレになる可能性があると同教授は指摘している。国民が一斉に国債売るという事態が起こらないことを祈るばかりだ。戦後昭和23年頃に自宅に5銭や10銭の国債が何枚もあったが、物価が暴騰して紙くず同然で、玩具にして遊んでいた記憶がある。従って10年以上の長期国債はもたない方が賢明であると思う。
日本の民間銀行は稼ぎが悪く、その多くは国債を購入することで辻褄合わせをしているといわれる。超低金利で資金を集め、それを国債で運用してなんとかしのいでいるが、このような民間銀行や国の経済を見据えると、将来展望が極めて厳しいものにならざるを得ない。医療の確保は最重大課題であり、簡単に削られるものではないが、いずれにしても医療の長期展望をする場合、国の財政を視野に入れて考えざるを得ない。特に歯科医療の場合は将来保険財政の圧迫を受けて、緊急性が低いという判断をされれば点数が上がらないか、材料や補綴が保険からはずされるか、もしくは混合診療を認める方向に動く可能性が高いと思う。そのような事態も視野にいれて「今何をするか」を考え準備しておくべきである。

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