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コラム『歯科医院経営を考える』

デンタル・マネジメント・センター代表 稲岡 勲

バックナンバー 2021

№530 歯科医院経営の多様化

ビジネス誌のプレジデントが「歯と眼の大問題」という表現を掲げて特集を組んでいる。「歯科医に対する不満の調査」では、「不満」があると答えた人が全体の60.7%もいると書いている。不満があると回答した人のうち多かったのは「治療の質」(54.5%)、「待ち時間が長い」(26.1%)、「予約の取りずらさ」(25.9%)、「態度が悪い」(20.8%)だという。ただ「治療の質」と回答した人のうち54.9%は「歯科医に対する満足度」において「治療の質」と回答しており、半分以上は満足しているということである。特に「予約の取りずらさ」や「待ち時間の長さ」に不満を挙げている人の中で、「治療の質」に満足している人が60.1%もいることであり、治療に満足している患者ほど予約のとりずらさや待ち時間の長さに不満を持っているということだろう。診療内容に満足している患者の場合、待ち時間や予約の取りずらさに少々不満があっても来院してくれるから問題はないが、それでも何回かの通院の中で1回くらいは早く診る機会を設ける等の配慮が必要ではないか。また同誌は自由診療についても取り上げているが、その中に自由診療が愛される4つの理由として、①歯科医のやる気が違う、②だらだら通わず一気に治療、③節税効果、④治療の自由度が高い、を挙げている。節税効果は所得の高い人ほど節税効果も大きくなるから、高所得者にとっては自費診療を選択し易くなる。自由診療を中心に診療している歯科医院も、最近はその経営形態は大きく変わってきているように思う。都心部で経営者等の高所得者を対象に診療する歯科医院や、自費診療を行うだけでなく、郊外に別荘地を確保し、周囲にバラを植え、テニスコートやコンサートの会場を作り、宴会や音楽会を楽しむというような趣味や生き方のグループを形成している医院もあり自費診療中心の歯科医院も多様化してきていると思う。多くの歯科医院を見ていると、市街地と住宅地では医院と患者との関係が少し違うように思う。市街地はいろいろな患者が来院するが、「立地条件の良さ」が来院の動機となっている患者が多い。また院長の治療技術に魅かれて来院する患者もいる。技術ではなく、院長やスタッフとの人間的魅力に魅かれて来院する患者もいるが、上記のようなある種のクラブ的発想集団を形成しているものもある。患者の来院動機が多彩になってきているように思う

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 12月号より転載。

№529 慎重な電力需給の調整を

年の冬は停電が噂されているが、冬季の停電は年寄り身には応える辛さだ。最近省エネと共に再生エネルギーが話題になっている。脱原発とともに、太陽光発電や風力発電を推奨する人が増えつつある。無限に存在するわけだから自宅で利用することは結構なことだが、売電となると問題である。国策となればコストの面で慎重に考え、負担が大きくならないように配慮する必要があり、電気というものの特性をよく理解しておく必要がある。電力というものは、需要量と供給量が同じでないと機械や器具が壊れてしまうのだ。例えば風力発電は風力の強弱によって発電量が変わる。一方で工場や家庭で電力を使う方は、工場が動いている昼は需要が大きいが、機械が止まると必要電力は小さくなる。家庭では昼は余り使わないが、夜は使う量が増える。この電力の需要量と供給量をどこかで調整しないと、機器が壊れるという問題は発生するのである。いらないからと需要を上回る電力の供給があっても放電してしまうこともできず、現在は捨てる量の電力について補償金を支払うという制度を採用している。その負担が電気を使う者に上乗せされているのである。いずれにしても太陽光パネルや風力発電を使えば使う程電力料金が割高になるという問題がある。しかも山の木を切り倒して太陽光パネルを設置している風景を見ると、水源を維持するための山野がなくなっていく風景に愕然とせざるを得ない。将来は蓄電の技術が発展して大容量の蓄電が可能になれば問題は解決されるのだろうが・・・。また太陽光パネルの耐用年数も2030年と言われるが、設置年数が経過すると発電効率が落ちるとも言われており、それほど発電効率の良いものではない。原発の事故以来、脱原発が強調されているが、原発の見直しが不可欠だと思う。それに小型の原子炉の開発を急ぐべきだ。脱原発の先進国と言われたスペインがエネルギー危機に見舞われているという。気候の変動によって風が吹かなくなって発電量が2割減少したところに、ヨーロッパ各国が一斉に天然ガスの発電に切り替えたから天然ガスが高騰して電力市場価格が前年の6倍に高騰したと日経が報じている。脱原発は慎重に考えるべきだと思う

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 11月号より転載。

№528 将来を見据えての投資を

今年8月、将来のノーベル・化学賞の有力な候補者と言われている元東京理科大学学長の藤嶋昭先生が研究チームを伴って中国の上海理工大学に移籍されたというニュースは衝撃的だった。藤嶋先生は故本多健一先生と共に、酸化チタン電極に強い光を当てると酸化チタン表面に光触媒反応が起きることを発見され、「本多-藤嶋効果」と呼ばれ注目されていた。上海理工大学では本多研究所を立ち上げるという。移籍された理由は明らかではないが、研究チームを伴っていかれるということは研究費等の資金的な問題ではないかと想像される。現在中国経済は猛烈な勢いで拡大している。IMFによる主要国の1996年(平成8年)から2017年(平成29年)のドル建てGDP(国内総生産)は、中国が13.9倍、インドが6.5倍、ロシアが3.6倍、韓国2.6倍、米国2.4倍、イギリス1.9倍、フランス1.6倍、イタリア、ドイツが1.5倍、これに対して日本は1.0である。つまりこの11年間日本経済は全く成長していないということである。こうした事情を背景に研究開発や事業投資に対して将来への十分な備えが出来なくなっているということである。このような状況が続くと、日本はいよいよ貧困化していくことは間違いない。また1997年を100とした場合の、2018年における日本の平均経営指標は「売上高」は107、経常利益が31.9、配当金が620、平均役員給与額が132、設備投資が98、平均従業員給与が96である。注目すべきは売上高が11年間に7%しか伸びていないのに、配当金の伸びが6.2倍に、役員報酬も32%も伸びているのに、設備投資が2%もダウンしており、従業員の平均給与額も4%ダウンしていることだ。これを放置すれば日本経済はますます疲弊して、優秀な頭脳や技術が中国等の外国に流れていくことになる。しかも株の配当金に対する税金は最高でも20%しか課税されないという仕組みになっている。日本経済を活性化して国民全員の所得を引き上げる政策をとらない限り日本経済は回復しない。自国通貨建ての国債は破綻しないと証明されているのだから、国債の発行を増やして国が積極的に投資するべきである。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 10月号より転載。

№527 イベルメクチンとWHOの闇

ある先生からコロナウイルスに効果があるという「イベルメクチン」という薬を教えて頂いた。ただ市販されておらず、インターネットでの購入申し込みで、注文が殺到し入荷は何時になるか分からないという返事であった。調べてみたらノーベル医学生理学賞を受賞された北里大学医学博士の大村智先生によって開発された日本製の寄生虫病薬であった。しかもイベルメクチンはもう30年以上も前に作られており、毎年約3億人が服用していて大きな副作用もなくイベルメクチンは安心だという評価を得ているという。しかもこのイベルメクチンはコロナウイルスにも効果があるとして世界中で大きく注目されているという。国際ジャーナリストの堤未果氏が指摘しているが、2020128日、アメリカの上院国土安全保障委員会においてFLCCCFront Line COVID-19 Critical Care Alliance)のピエール・コリー会長(前ウィスコンシン大学医学部准教授)は、「精査された臨床試験の結果を根拠に、イベルメクチンはCOVID-19の重症を防ぎ死亡率を低下させる」と指摘しているという。その他にも27ヶ国、86の地域で臨床試験が実施されており、初期症状では71%、後期治療でも50%、予防的には91%の効果があると報告されており、価格も650円と、コロナワクチンの4,140円(2回分)に比べて極めて安い。イギリスの医学統計の専門家であるテレサ・オーリエ博士は、WHOに対して、世界に向けて「イベルメクチンは、COVID-19の治療・予防に効果がある」と勧告するよう要請したが、WHOは「有効である根拠が不明確なので使うべきではない」と断言したという。日本で開発されたイベルメクチンが日本政府やマスコミで何故取り上げられないのか?WHOを見る時は二つの視点から考えるべきだと堤氏はいう。億万長者といわれるビル・ゲイツが立ち上げた「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」がWHOに寄付した額は600億円だという。また「SAGE」という予防接種に関する戦略諮問委員会があり、ここでコロナパンデミック宣言もなされているというが、この会議のメンバーは上記のビル・ゲイツ財団の関係者やグラクソ・スミスクラインやノバルティス等の巨大製薬会社の関係者だという。つまり巨大企業がすべてを牛耳る世界になっているということである。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 9月号より転載。

№526 専従者の認知症

ある先生から相談の電話が入った。奥さん(専従者)が歯科医師会から送られてきた書類を従業員に渡してしまったら、そこにはコロナ感染に関するワクチン接種の問題や個人情報に関係する内容が書かれていたため、従業員間に広がり問題になってしまったので、どうしたらいいかという。以前にも各個人に配布する給与計算明細書を間違って渡してしまったために、お互いの給与額が分かってしまい気まずくなった例がある。いろいろ聞いてみると、その奥さんが軽い認知症になっているというのである。最近は時々ふっとおかしい行動をとることがあるという。三十数年間専従者として経理や給与計算、カルテ等の整理やスタッフの管理に至るまで、全て取り仕切ってきた専従者である。とりあえず早急に経理の仕事を外して通いで来る長女に任せる、それ以外のカルテ整理や書類の整理もできるだけ早く外すよう話したが、何故私を外すのかと言い納得しないのだという。今の奥さんの立場からすれば、今まで第一線で活躍して、院長を支えてきたという誇りがあり、自負があり、腹立たしい限りであろうと思う。奥さんのプライドが許さないのだと思う。だとすれば、なおさら時間をかけて、丁寧に納得できるように話しかけていくべきである。同時に長女を介在させてできるだけ早く引退に導くべきだと思う。専従者という立場は、微妙な位置である。経営的には院長の右腕として、場合によっては経営者として判断し、行動しなければならない立場だ。一方従業員に対しては、経営者としての立場と、院長に対しては従業員のトップとして対峙するという立場に立つ。だから二面性の顔を持つ。従ってその専従者が認知症になれば医院の経営危機と判断するべきである。本人のプライドに配慮しつつ、できれば早急に有料老人ホームに入れて、残りの人生をゆっくり過ごせる機会を設けるべきである。有料老人ホームは決して安いものではないが、将来を見据えて院長自身の将来を考え、真剣に考えておく必要があると思う。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 8月号より転載。

№525 医薬品研究開発への支援を

今回のコロナ騒動で鮮明になった問題がある。薬剤に関する高い技術力を有する我が国が、何故コロナワクチンの開発ができなかったのか、また外国からのワクチン確保が遅れてしまったのか?(524日から武田モデルナ社のワクチン接種が始まったが・・・)これまでの薬剤に対する政策課題が浮かび挙がったということではないかと思う。ただワクチンは薬価の対象になっていないが、新薬開発の意欲を削ぎ落すような薬価の大幅な改定は今後の政策課題として検討すべきであると思う。例えば2014年に小野薬品が開発したオプジーボは当初メラノーマ皮膚がんの治療薬として薬価に収載されたが、100mg73万円という高薬価であった。体重66kgの人に1年間に投与すると年間3800万円になるということで話題になった。2015年には肺がんに適用されたが、20172月薬価改定では365千円に改定された。その後皮膚がん、腎細胞がん、胃がん等に適用され、2018年には100㎎当り28万円に引き下げられたが、それでも66kgの人が1年間26回使用すると1090万円になるという。このような投薬を受けた患者でも、高額療養費制度があり、実際に負担する金額は、年間所得が7701,160万円の人でも月額17万円ですむというから日本の保険制度は素晴らしいと思う。しかしそれによって薬品メーカーの経営が厳しくなり開発研究の余裕がなくなったのでは元も子もない。このような素晴らしい保険制度に手を付けるのではなく、国として薬品メーカーに対して薬品開発、研究への支援を手厚くすることだと思う。国として重点的に支援していく医薬品業界には思い切った支援策、助成を展開するという姿勢が必要ではないか。最近国は最低賃金を引き上げようとしているが、それによって技術力のある小規模・零細企業でもたちいかなくなり、企業淘汰が進む。そのようなことよりも大所高所に立って、残すべきものは残すという姿勢と先を見据えた手厚い支援策と補助が必要なのではないか。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 7月号より転載。

№524 公的機関の果たすべき役割とは

516日付日経新聞は、現在の新型コロナ感染者数は、東京が152,239人、大阪は94,775人と報じている。ところが前日からの増加数では、東京が542人に対して大阪は620人となっており、人口比では東京が、大阪の約1.5倍だから人口比から計算した大阪の感染者増加数がきわめて大きいと分かる。こうして発表されている感染者数だけではわからないが、実はその裏にコロナのPCRの検査数がかくれている。新型コロナの影響でオリンピックの延期が決定されるまでの期間、日本では新型コロナの感染の有無を調べるPCR検査の拡大に対して慎重論が主流となり、諸外国に比べて極端に少なかった。その後の検査数でも、例えば42日(金)のPCR検査数が東京で7,934件に対して大阪は11,358件で東京に比べて極端に多い。一方東京ではオリンピック開催を控えてPCR検査数を意識的に減らしている可能性がある。一方コロナによる死者数では516日の東京が1,951人、大阪が1,958人と大阪の方が多い。しかも97.7%60歳以上の高齢者だという特徴がある。患者の急増を前に大阪の吉村知事は自衛隊や近隣の府県に対し応援の要請をしている。そもそも大阪府は病床数や医師や看護婦を含む病院の公務職員を減らし続けてきた。2007年に在籍していた8,785人の病院職員を、2019年には4,360人と半減(▲50.4%)させている。同時に府下の衛生部門の職員を、上記の年間に12,232人から9,278人へと▲24.1%減らしてきている。こうした政策の付けが回ってきているということだ。また大阪府は総病床数を、2007年の110,840床から2018年の106,920床へと3,920床減らしてきている。こうした医療分野の施設、人員を、効率の名のもとに徹底して減らしてきた付けが出てきているのだと思う。行政として本来守るべき府民の命を、効率を理由にして軽視してきた結果がこのような状況を招いている。大坂に限らず国も小さい政府を謳い、国鉄の民営化によって、北海道や四国ではどれだけ交通の利便性が損なわれたか。国営の鉄道で地方の人にも最低の利便性を確保するという基本理念や政策を忘れているのではないか。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 6月号より転載。

№523 コロナ感染対策の徹底を

最近になって日本でも新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るい出している。欧州主要国では新規感染者に占める変異株の割合が8割を超えたと言われている。日本全体では36%だそうだが、大阪では67%、兵庫県では77%に達したそうだ。封じ込めの鍵を握るのはワクチン接種だそうだが、そのワクチンの接種が日本ではようやく医療従事者から高齢者を対象に始まったばかりだ。日本はワクチンの確保が何故このように遅くなったのか、その原因は検証されるべきだと思う。そもそも日本では最初のPCR検査が極めて少ない。当初陽性サンプルの10%しか検査しない方針だったが、変異株の蔓延を受けて40%に検査数を拡大したのだそうだ。そもそもPCR検査が少なすぎるという問題がある。もっと多くの場所で唾液検査や鼻腔検査を実施して、感染の有無を調べるべきではなかったか。PCR検査を抑制してきた日本では、第三波で感染者が急増した1月でさえ、人口10万人当たり検査数は1,489件で、アメリカの15,067件、イギリスの26,191件、韓国の2,824件よりも少ない検査数である。特に今年はオリンピック開催を控えて、早期に徹底した予防対策と感染対策を実施するべきではなかったか。公衆衛生上のロックダウンを実施して、営業上の損害賠償を徹底すれば完全封鎖も可能である。アメリカの国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が「米医師会誌」にコロナが蔓延した国では、ウイルスは変異し続け、遅かれ早かれ誰もが変異株に感染する」と明言している(雑誌「選択」)というから恐ろしいことだ。しかも日本が導入して使いだしているファイザー社のワクチンは変異株が蔓延する前に治験が終わっており、変異株に対する臨床的有用性が確認されていないという。アメリカのロックフェラー大学はファイザー社のワクチンは変異したブラジル株に対して効果が減弱すると報告しているというから心もとない話だ。また北海道大学と東京大学の研究チームが、下水から変異株を検出することに成功したそうだが、それが市中感染の頻度を反映するというから、そうした指標を基に徹底した感染対策を立てるべきではないか。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 5月号より転載。

№522 老後の資産管理

今年で82歳になるのを機に加入している生命保険会社の「家族情報登録制度」に子供(2人)の情報を登録することにした。老けて記憶力が低下し、保険契約の内容が分からなくなった時に、親に代わって保険内容の提示を受け、契約書類等の請求ができ、緊急時の連絡を受けることができる者の登録である。ただ本人に代わって預金を引き出したりはできないので、さらに記憶力が低下しているようなら、子供の一人を成年後見人として家庭裁判所に申し立てて専任してもらっておくべきだが、そこまで至っていないと自分は思っているが・・・。なおさらに弁護士等成年後見人を監督する人間を選定する場合もあるが、費用もかかるからそこまではしなくてもよいと思う。なお成年後見人として長男を選んだら、他の兄弟にもその旨を知らせておき、年に1回くらいは、兄弟間で情報の共有を図る機会を作っておくべきである。親が長生きして100歳近くまで生きる人が増えてきており「老老相続」等と言われるご時世だが、先を見据えて準備をしておくことを勧めたい。日本老年医学会では「高齢者」の定義で、65歳~74歳を「准高齢期」、75歳~89歳を「高齢期」、90歳以上を「超高齢期」と定義している。准高齢期はまだまだ元気な人が多いが、親が健在なら親の財産管理がしっかりしているか、高齢期を迎える自分の資産管理と日々のキャッシュフロー表(月々入るお金と出ていくお金の流れを把握する)を作成して今後のライフプランを把握しておく必要がある。20197月に大きく相続税が改正された。相続争いが発生している相続の遺産額は5000万円以下が75%だという統計が発表されているが、遺産額が大きい場合は、それほど争いが発生していないという。注意したいのは、今回の改正で基礎控除が引き下げられていることだ。以前は「5000万円+1000万円×法定相続人数」だったが、改正されて⇒「3000万円+600万円×法定相続人数」に変更されたことだ。妻と子供の2人の場合なら、以前では8000万円までは課税されなかったが、今は4800万円を超えれば課税の対象になるということだ。争いが増えている少額の遺産総額にわざわざ焦点を合わせるように改正したのだと思う。最近の医療法人の設立増加もこうした相続問題が絡んでいるように思う。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 4月号より転載。

№521 お互いの感情の共有と交流

 昨年、令和元年分について収支アンケート調査を実施(回答数98件)したが、対前年比収入増加医院が73.2%、減少医院が26.8%だった。また調査対象の医院全体でコロナウイルスの影響を聞いたところ、75%の歯科医院で影響があったと回答しており、その影響度合いは収入が2割減少、患者数では2.2割の減少と出ている。しかも院長の年齢が3040歳の医院では53.1%の医院で影響が出ていると回答、5060歳では79.4%70歳以上では90%と高くなっておりコロナの影響は高齢者に厳しい状況である。今年はコロナの影響で収入がさらに減少する医院が出てくるのではないか。特に都心部での落ち込みが大きいと思う。現在10都道府県に対して緊急事態宣言が出され、37日まで継続されるという。飲食関係やイベント業界は壊滅的な影響をうけているが、歯科医院経営も少なからず影響を受けている。前年の収入が50%以上落ち込んだ場合は、「持続化給付金」として国から支給される給付金(100万円)を受けることができる制度があるが、東京の某歯科医院もその支給を受けて助かっている。新型コロナの影響は人々の考えや行動に大きな影響を与える。マスクをしてこないで来院し、大きな声で話す患者や、逆にそれを非難して言い争いになるといった患者同士のトラブルも発生している。また医院のスタッフ同士でもトラブルになるケースも出ているが、コロナによってスタッフ間の人間関係、チームワークが壊れないように注意する必要がある。自由に行動できないと感情が鬱積して、ちょっとしたきっかけで感情が爆発する。あるボランティア団体の会長を務めているが、毎月コロナの影響でズームを使ってのTV会議を実施している。ところがこれでもお互いの微妙な感情が読み取れなくて、会議後に不満を抱え込む人が出てくる。そこで3回に1回は実際に顔を突き合わせて会議をするようにしているが、お互いの感情を共有することの難しさと、重要さをつくづく感じている今日この頃である。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 3月号より転載。

№520 院長の閉院計画

 先日A歯科医院の42歳の衛生士と話す機会があり雑談していると、自分の勤務している歯科医院の院長が、70歳を迎えるにあたり、あと5年診療を続け75歳になったら閉院すると話しているが、現在子供の矯正も実施しており、子供の患者をどうするのか、またこのままこの院長の下で働いていると47歳で退職しなければならなくなるが、今退職した方がよいと思うか?と言われて絶句してしまった。院長は自分のことしか考えていないとこの衛生士は考えたのであろう。彼女は現在若い衛生士3人を束ねているベテランの衛生士で主任格だが、自分の今後の人生を考え悩んでいるのであろう。助言したのは、先ず院長と話し合うこと。その際は自分の将来を考えると、50歳近くになって退職せざるを得ない環境に置かれるのは大変厳しいこと等を正直に話して、院長と話し合ってみることを勧めた。個人の歯科医院ではあっても、患者や働いている従業員にとってみれば公的な職場としての意味を持つことになる。矯正の場合は、自分の実施している治療方法と同じ方法で治療している歯科医院の院長と話し合って、その患者を引き継いでもらう準備をすべきであり、患者の意向も聞いておく必要がある。ただ同じ手法かどうかは、ある程度時間をかけて情報収集しないと分からないのではないか。だいぶ前の話になるが40歳代の院長が自殺して亡くなり、後に残された奥さんが矯正の患者さん一人一人に事情を話して、前金で受領していた患者さんには返金を、治療中の患者さんには同業の矯正を実施している医院に連絡して院長に事情を話し、患者の治療を引き継いでもらうよう走り回った例がある。全て解決するのに2年ほどかかったと思う。A歯科医院の場合は息子が別の場所で開業しているが、矯正の治療の方法がまったく違うから引き渡せないと思う。典型的な手法での治療ではないということなら、なおさらのこと長期にわたって計画的に引き際を考えるべきである。事業を閉めた時点で、患者を路頭に迷わせないためにも事前に説明し、患者を引き渡す先生にも患者の個人情報に配慮しつつ情報を伝えておくべきである。北欧の国だったと思うが、閉院する時はカルテも添えて有料で他の医院に引き渡すという方法で引き継いでいるという話をきいたことがあるが・・・。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 2月号より転載。

№519 コロナによる医療崩壊

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
昨年は年初から流行り始めた新型コロナウイルスの感染が一向に収まる気配を見せなかったが、今年はどうなるか気がかりだ。日本国内では1216日時点で、感染者総数187,640人(日経発表)で、死者の累計も2,731人となっている。ただ感染が拡大しているだけではない。最近の傾向として、コロナから回復後にいろいろな後遺症に悩む患者が増えているという問題がある。国立国際医療研究センターにコロナで入院した63人の患者を対象に後遺症について調査したところ、発症から60日の時点で19%12人が嗅覚障害、11人(18%)が呼吸苦、10人(16%)が倦怠感、3人(5%)が味覚障害を訴えたという。さらに14人(22%)では脱毛が確認されたという。またフランスのパリ大学の発表では、100日以上入院し、回復した患者120人を対象にアンケート調査をしたところ、入院後4か月の時点で55%が倦怠感、42%が呼吸困難、34%が記憶喪失、31%が睡眠障害を訴えていたという。今専門家が注目しているのは自己免疫反応だという。自己免疫反応とは、体内に侵入した病原体を攻撃するために活性化した免疫反応が、誤って宿主を攻撃してしまうということで、時には病気を引き起こす。神経難病のギラン・バレー症候群がその典型だと言われており、女優の大原麗子がこの病気で死亡したのが記憶に新しい。また注目されるのは、心臓障害への懸念である。アメリカのオハイオ大学の医師が医師会雑誌に発表して注目されているのは、コロナに感染した運動競技選手26人の心臓を調べ、うち4人が心筋炎だったと報告しているという。心筋炎はウイルス感染による心筋症障害以外に、感染に伴う免疫異常が関与すると言われ、不整脈による突然死以外に長期的に心不全等の合併症を引き起こすという。また心筋炎に関する研究で注目すべきは、対象者の多くが新型コロナ感染そのものでは無症状、あるいは軽症だということである。つまり軽症や無症状の感染であっても安心できないことを意味している。コロナワクチンの開発も目途がついたようだが、今後ワクチン接種に伴う問題は免疫異常だろう。これは避けて通れない問題ではあるが、海外での医学研究所の結果は、コロナ感染は免疫異常による長期的な合併症を生じやすいことを示している。また日本は病床1床当たりの看護師数は0.6人に対して、アメリカは2.84人、イギリスは3.09人で5分の1程度しかいない。しかも看護師の離職率が10.7%もあるということは看護師の負担が大きすぎるということを裏付けている。医療崩壊が起こらないことを祈るばかりである。

                                   (つづく)
玉ヰニュース2021年 1月号より転載。

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