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歯科医院の先生方の協力を得て私どもが行った経営調査によると、院内に期待できる後継者がいる歯科医院は、全体の25.3%と約4軒に1軒という結果でした。事業承継を現実的にお考えであろう60歳代、70歳代の年齢層においても、それぞれ47.6%、31.3%となっており半数以下にとどまる現状です。さらに、引退後の予定について尋ねた内容では、閉院予定33.8%、親族承継32.5%、勤務医への売却6.3%、M&Aによる事業承継15.0%、その他12.5%という結果でした。飛び抜けて高い比率を示す選択肢がないことから、歯科医院という事業を承継していくことの難しさを表しているように思います。
ご子息に事業を承継する親子診療においては、現院長である大先生と次期院長となる若先生の関係性にすべてが左右される現状です。これまでに培ってこられた大先生の経験や実績、一方でこれから主流となる診療を身につけようとする若先生の知識や技術をそれぞれがどう受け入れ合うかが重要であり、院内における役割分担であったり、診療の棲み分けであったりをどう進めるかが事業承継をスムーズに進める上でのポイントでしょう。
令和5年分の、社会医療診療行為別統計によると、歯科の診療行為別にみた1日当たり点数の構成割合をみると、初・再診12.4%、医学管理等14.8%、在宅医療3.4%、検査7.6%、画像診断4.4%、処置19.9%、手術2.6%、歯冠修復及び欠損補綴31.1%、その他行為4.0%となっています。今から25年前の平成10年分の構成割合においては(当時の名称は社会医療診療行為別検査)、初・再診11.2%、指導管理等6.2%、検査4.4%、画像診断3.3%、処置18.8%、手術3.9%、歯冠修復及び欠損補綴48.8%、その他行為(在宅医療含む)3.4%という結果です。大きく様変わりした診療内容の推移を経験してこられた大先生世代と、今の診療内容が自らの経験のすべてである若先生世代との価値観や方針が、完全合致することは極めて稀であるという前提に立つことは、むしろお互いを補完し合うことができるきっかけにはならないでしょうか。
ご子息や親族に承継者がいない事例も多くありますが、第三者に承継することはビジネスライクに割り切れると感じる反面、承継者の選定に予想以上に時間を要することがあります。また、仲介に立つ業者への手数料も大きなものとなり、気持ちの面などでもなかなか現実的に話が進まないということも多々あるようです。譲渡する側、譲渡される側双方には、自らに少しでも良い条件で取引をしたいと思う気持ちは当然にありますが、評価をする業者や選択する方法によっては評価額が2倍以上の開きが出る例もあります。歯科医療を本業とする先生方にとっては、事業承継にかかる負担は副次的なものにすぎません。後継者探しや事業承継に困難を極める、あるいは承継への意義を見失うような場合は、歯科医院という業種を承継することに拘らず、いっそ更地に戻してすべてを清算することも選択肢の一つかもしれません。
(つづく)
玉ヰニュース 2024年 11月号より転載。
令和6年7月26日に、厚生労働省から令和5年簡易生命表が公表されました。生命表とはつまり国民の「平均寿命」を算定した資料であり、その資料によれば男性81.09年、女性は87.14年となりました。簡易生命表は推計人口による日本人人口、人口動態統計(概数)をもとに毎年公表され、国勢調査による確定数を使用した日本人人口、人口動態統計をもとにした資料は完全生命表として5年ごと(次回公表は令和9年)に公表されています。新型コロナウイルスの影響などにより一旦は平均寿命が下がりましたが、令和4年から5年にかけて再び寿命が延びる結果となりました。
平均寿命とともに「健康寿命」についても延びてきており、こちらは2019年(令和元年)が最新ですが、男性72.68歳、女性75.38歳となっています。健康寿命とは「日常生活に制限のない期間の平均」であり、健康寿命の調査資料がある2019年までは平均寿命と健康寿命の差が徐々に短くなっているのが現状です。厚生労働省の調査事業補助金を受けて行われた資料によると、2040年の健康寿命の上位予測値は男性では77歳を超え、女性では79歳を超えるとみられており、今後ますます健康に歳を重ねる人が増えることが予想されています。
現在、日本の人口は減少してきておりますが、高齢でも元気な人の割合が今後増え続けることにより、これまでにない新たな需要や要望が顕在化することになるでしょう。医師・歯科医師・薬剤師調査では、令和2年から4年にかけて歯科医師数および人口10万人に対する歯科医師数ともに減少に転じています。年齢階層別にみますと数字の上では60~69歳、70歳以上の歯科医師数は増加している状況ですが、歯科医院の現状では、70歳~75歳ぐらいの間で後継者や事業譲渡により診療の一線から退く院長が多くみられる印象ですから、今後は診療を続ける現役歯科医師の先生方への期待や需要がますます高まるものと考えられます。
現在、歯科医院で標榜可能な科目は歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科ですが、インプラントや訪問歯科診療、CAD/CAMのほか、マイクロスコープによる精密診療や審美治療など1軒の歯科医院で実に多岐に亘る治療対応をされています。今後、平均寿命や健康寿命の延伸により、さらに歯科医療への需要が高まりますと、歯科医師および歯科医院が対応する領域もますます多岐に亘るのではないでしょうか。歯科医院の特長を打ち出す取り組みが強くなる一方、各専門分野との連携がより強化されるかもしれません。様々な業態の飲食店が、元を辿れば一つの運営母体が統轄して経営を行っている例は多いですが、歯科医院においても大手医療法人によりあらゆる専門分野の歯科医院をグループに備えて幅広く展開することが増えるでしょう。また個人診療所においても、立地周辺における各歯科医院の専門分野を意識した自医院の取組みが不可欠です。専門性を限りなく高めた歯科医院、幅広い診療内容に対応する歯科医院など多種多様のさまざまな取り組みが、患者さんの価値観や需要の広がりに応えることになり、これからもますます歯科医療が発展することを確信しています。
(つづく)
玉ヰニュース 2024年 10月号より転載。
働き方改革などにより、時間外労働時間への意識や有給休暇の取得が推進されること、さらには賃金の大幅な見直しなど従業員の労働環境の整備が急速に整いつつある一方、従業員による一方的な退職、つまり何も連絡がないまま無断で退職するケースなども散見されるようになりました。退職届等の書面による意思表示は少なくなり、院長に直接会って退職の意向を伝えることさえ稀なこととなっています。LINEやメールで連絡を入れてくるのはまだよい方で、ある日突然誰とも連絡が取れなくなり音信不通となるケースもあります。
ただし、どのような辞め方をするにせよ、労働基準法では労働者保護の色合いが強いためなかなか損害賠償請求を行う事例までは多くありません。そこで従業員の退職に対する意識づけという意味で、民法第627条一項に規定されている「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」という条項を基に周知する方法があります。事業者側からすれば、退職の意向を確認したのち、次のステップを充足させるまでの準備や引継ぎを考えますと、一般的には3か月程度の期間を設定したいところです。それでも、退職を希望する当日にその意向を示し、その後出勤をしなくなる従業員が後を絶たず、事業所が退職の意思を受け入れてしまえば、即日退職も受け入れざるを得ない状況ですから、せめて2週間という民法上の規定は遵守することを求めたいものです。
デンタル・マネジメント・コンサルティング社にて毎年、歯科医院の経営指標として歯科医院の経営実態に関する調査を行っておりますが、その中で就業規則の有無について尋ねた項目があります。令和2年分から4年分までの3年間の経過を見ますと、73.9%→72.7%→74.5%となっており、全体の約4分の3の歯科医院が就業規則を備えている結果です。歯科医院の規模が大きくなるとその割合は約8割にまで高くなりますが、歯科医院の規模に限らずいずれの歯科医院も就業規則を備えて、歯科医院で勤務する上での基本的なルールを定めておくとよいでしょう。就業規則には、必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項および、規定した場合に記載しなければならない相対的必要記載事項のほか、事業所で独自に定める任意的記載事項から成り立ちますが、退職の意思を表明する時期や方法などについても就業規則で規定しておくと、労務に関しての一定のルール作りが可能となります。
就業規則を新規に作成するだけでなく、以前から備えている歯科医院においても、労働環境が大きく変化する昨今の状況においては、就業規則の内容と現状が乖離していることがあります。就業規則を有効に活用するために、随時内容の修正を重ね、現状に即した内容を維持することに努めてください。院内体制の整備によって、労務管理を適切にコントロールすることに力を注いでいただきたいと思います。
(つづく)
玉ヰニュース 2024年 9月号より転載。
全国の歯科医院数を把握する調査に「医療施設調査」があります。厚生労働省が毎月行っているものですが、最新の令和6年4月の調査結果を見ると、歯科医院総数は66,768施設、そのうち個人診療所49,222施設、医療法人16,895施設となっています。歯科医院総数は平成28年度調査による68,940施設をピークに減少に転じていますが、個人・医療法人の内訳をみると、現在は個人診療所が減少し医療法人が増加を続けている状況です。全歯科医院数における医療法人数の比率は25.3%と高まってきていますが、10年前の平成26年調査時点では、個人診療所55,558施設、医療法人12,393施設であり、医療法人の比率は18.1%であったことから、年々その比率は上昇傾向であるといえるでしょう。
医療法人数が増加する動きは、歯科医院一施設あたりの診療収入が大きくなってきている影響もあるでしょう。同じく厚生労働省が2年に1度調査を行っている「医療経済実態調査」(令和5年実施)の資料に基づきますと、個人診療所の平均医業収益は47,958千円から47,190千円へと少し減少しておりますが、医療法人については108,852千円から110,768千円へと1.8%の伸びを示しています。事業承継等により世代交代を果たし医院の若返りが進んでいることや、メンテナンスの仕組みと歯科衛生士の配置が整い定期的に来院する患者さんの確保と対応が進むことにより、医業収入が増加することにつながっているものと考えられます。メンテナンス等に対応するためには、比較的多数のチェアーユニットを設置し、多くのスタッフを擁する必要があることから、必然的に個人から医療法人に組織変更をする必要が生まれているのかもしれません。
歯科医院の運営が医療法人となりますと、健康保険や厚生年金などの社会保険への加入や就業規則の整備、有給休暇の取得管理や昇給、賞与の評価などの労働環境が整っていることが問われます。勤務するスタッフから求められるだけでなく、歯科医院に応募する求職者にとっても医院を選択する重要な要素となります。こうしたことは医療法人に限らず、個人診療所においても規模が大きくなるにつれて、給与体系や昇給・賞与の仕組み、あるいはシフトの組み方、休みの取り方に至るまで、スタッフの処遇に関する細かな取り組みが問われることになります。つまり家業・生業としての運営から離れ、一つの事業としてしっかりとした組織的な医院運営を取り組む必要が生じるということでしょう。
今後、診療所規模が大きくなる傾向が続けば、院長をはじめとする歯科医師のほか、歯科衛生士、歯科技工士等の専門職種はより医業活動に専念し、労働管理・計数管理については事務系職種が担うという経営形態が進むかもしれません。院長自身もスタッフとともに組織のルールの中で過ごし、その中で日々の経営判断を行うなど、より組織運営の視点が必要な時代だといえるのではないでしょうか。
(つづく)
※玉ヰニュース 2024年 8月号より転載。
厚生労働省は、今年度の最低賃金を検討するにあたり第68回中央最低賃金審議会の開催案内を発表しました。毎年10月に行なわれる最低賃金の見直しですが、6月下旬から7月下旬にかけて大学教授などの公益代表、労働組合連合会などの労働者側、商工会議所・日本経済団体連合会(経団連)・一般企業などの使用者側との3者により構成される中央最低賃金審議会の審議により引き上げ額の目安を決定します。その決定に基づき、各都道府県による地方最低賃金審議会での審議を経て、各都道府県労働局長により決定され10月から発効される流れとなります。
昨年の最低賃金は全国加重平均額で1,004円となり、初めて1,000円を超える金額となりましたが、金額では前年比+43円、引上げ率は+4.5%もの高い水準になりました。政府は、最低賃金の目標を2030年代半ばには1,500円にするとしていますから、今年度は、大企業を中心とした4月の大幅な昇給等もあり、昨年に引き続き大きな見直しが予想されているところです。時給1,004円の水準は、月労働時間数を173時間とすると17万円台半ばの月給ですが、政府が目指す1,500円の水準というのは月給換算では26万円前後になるということです。毎年4~5%前後の昇給が難しい歯科医院においては、最低賃金の引上げが急速なペースで続くとすれば、いずれ追い付かれてしまうことになります。
そのために今後歯科医院が取り得る対策としては、早い段階から労働効率の向上を図ることに焦点を当てることが急務といえるのではないでしょうか。つまり、いずれ必要となる人件費の単価引き上げに備えて、スタッフ一人一人の業務内容の見直しを行い、効率を高めて対応するということです。日々の業務を遂行する上で大切なことは、ミスを防ぐためのチェックなど業務にモレがないように取り組むことですが、一方で、複数の職種で同じことを行ってしまう業務のダブリや、本来は行わなくてもよい無駄な業務を削減することはより大きなポイントです。複数のスタッフが同じ商品の在庫を確認・発注している、デジタルツールで管理・集計できるデータを手書きで集計している、担当を決めていないことにより業務が遅延しているといったことなどは、無駄な人件費が2重にも3重にもかかっていることになるのです。
スタッフからすると、業務の見直しにより今の作業がなくなるとなれば、自分の存在意義や役割を失うことのように思えて一時的に不安を抱くことがあるかもしれません。しかし、適正な人員で最大限の効率化を図るために、それは本当に必要な業務なのか、業務の整理によってより付加価値の高い業務が可能になるのではないかという広い視点を、院長だけでなくスタッフを含めた医院全体で持つことが重要と考えます。
(つづく)
玉ヰニュース 2024年 7月号より転載。
人材開発や組織開発のための調査・研究事業を行うある民間企業の調査結果を見ますと、最近の若者(=20代)が仕事を選ぶ上で重視することの内容が、価値観の多様化を反映してか非常に幅広いものへ変わってきていることがわかります。ほんの数年前までは、「希望する収入」「休みの多さ」「職場の人間関係」「仕事とプライベートとのバランス」といった項目の比率が高かったものが、現在はそれらの比率が少し下がり、「個性、能力が生かせる」「職場の将来性」「様々な仕事を経験できる」「働く場所の選択」など、自分の可能性を大切にしたいと思う項目が増えてきているようです。一方、転職をすることに対しても大きな抵抗はなく、その割合は高くなる傾向にあるようです。「継続して働きたい」と「他の職場へ転職したい」という意向がともに40%ずつを占めており、昨今の転職サイトの充実も相まって比較的容易に職場を変えようとする意識が高まっているといえるでしょう。
歯科医院の現場においてはスタッフ一人一人の影響が非常に大きく、若者の意識そのままに就労と転職を繰り返す状況がますます多くなることは院長の頭を悩ませるばかりだろうと思います。そうした中で、厚生労働省を中心に国が力を入れてきていることの一つが、年収の壁を超えてより多く働ける環境を整備しようとする動きです。年収の壁というのは、それを超えると自らの所得税がかかるようになる103万円の壁、配偶者の扶養から外れ自ら社会保険料を負担するようになる130万円の壁、所得控除の一つである配偶者(特別)控除が満額受けられなくなる150万円の壁などを指すものです。パートで働くスタッフの中には、これらの年収の壁を意識して、働く時間や金額の調整を行っている方も少なくないでしょう。各家庭の事情に配慮し就労調整を行っている歯科医院もあると思いますが、今、その壁を越えて、自分で税金を払い、社会保険料を払い、尚且つ実質の手取りを減らさなくて済むだけでなく、むしろ手取を増やせる仕組みが整備されつつあります。ご主人が勤務する会社によっては、家族手当など配偶者の働き方によって支給される手当や項目があるかもしれません。それを含めてなお手取りが増える給与基準を検討し、新たな国の制度も活用しながら、すべての壁を超えて働こうとするスタッフがいるとすれば、それは大きな戦力を得る最善の方法であると考えます。社会保険や有給休暇などの福利厚生に関すること、あるいは賞与や勤務時間など諸条件に関することを整備して、医院の方針をよく理解するスタッフが、より多く働ける環境を目指すことがこれからの大きなポイントではないかと思います。
厚生労働省が進める年収の壁パッケージなどの国の政策に関しては、顧問税理士や顧問社会保険労務士の協力を得て、スタッフ向けのわかりやすい説明と理解を深めるとよいでしょう。おそらく4月5月は多くの離職があったと予想されますが、今後も新たな人材の定着が進まない状況が続くとすれば、方針や考え方を熟知したパートスタップの力が最大限発揮される取り組みも大切です。
(つづく)
玉ヰニュース 2024年 6月号より転載。
内閣官房に設置されている「新しい資本主義実現本部」での会議資料において、国立長寿医療センターが発表した資料を基にした【社会とのつながり方の種類数と認知症発症リスクとの関係】という資料によりますと、社会とのつながりがまったくないか、またはつながりが1種類の場合の発症リスクを100とした場合、5種類のつながりを持つ人の認知症発症リスクは54%に低減されるということです。
5種類のつながりとは、「配偶者がいる」「同居家族と支援のやりとりがある」「友人との交流がある」「地域のグループ活動に参加している」「何らかの就労をしている」というものであり、調査内容は、2003年に要介護認定非該当であった男女約14,000名を対象に、その後の認知症を伴う要介護発生状況を10年間追跡したデータを解析したものだそうです。それぞれ、2種類のつながりを持つ人の認知症発症リスクは86%、3種類75%、4種類65%、そして先述の5種類のつながりを持つ人が54%と、社会とのつながりの数の多さに伴って認知症発症リスクは低減するという調査結果が示されています。
企業においては定年年齢が徐々に上がり、労働力確保に加えて若年者の社会保障費などの負担を少しでも和らげるために、70歳まで働き続けられる社会の実現に向けて政府はさまざまな制度改革等を行っているところです。また、実際の身近な生活者の実情を見ましても、60歳の定年を迎えたのちは、顧問や子会社への出向等で65歳前後まで働く人が多く見られるほか、現役時代に築いた友人関係を大切にしてゴルフなどスポーツ三昧の日々を送る大手企業元常務、退職者を集めそれぞれが持つ知識やノウハウを持ち寄って新たな事業を興そうと張り切る電器業界元専務、古民家を改装して広いリビングダイニングを作り、自ら作る手料理を友人に振舞う弁護士など、いつまでも社会とのつながりを大切にしようとする方は精力的に活動をする印象があります。元経営者や専門家でなくとも、定年後にベンチャー企業の門を叩き、培った人脈を生かしてもう一旗揚げようとする元管理職も毎日を充実して過ごしています。
昨今、そろそろ事業承継や事業売却をしようかとおっしゃる歯科医院院長と話す機会が増えてまいりましたが、お話をするときに切に願うことは社会とのつながりを持ち続けれてほしいということです。そのために細々とでもよいので診療を継続することはできないか、地域のコミュニティーの場所として歯科医院を存続させることはできないかと持ち掛けることもあります。高齢になった患者さんが最後まで信頼して通い続けられる医院であってほしいと望むと同時に、仕事(診療に)に没頭してきた長い年月が途切れた時に、虚無感に苛まれることがないようにと願うばかりです。
(つづく)
玉ヰニュース 2024年 5月号より転載。
外務省が発表する海外在留邦人数調査統計によると、海外に居住の地を移し永住する人が増えているようです。海外に存在する邦人数は、コロナ前2019年の1,410千人をピークに、2023年度には1,293千人まで減少しているためコロナ前の水準に戻らない状況ですが、そのうちの永住者数はコロナ禍前からも年々増加し続けており、2023年には574千人を記録しています。海外在留邦人に占める永住者の割合は、2013年の33.2%から2023年は44.4%と10年間で10ポイント以上も増加している状況です。年齢や性別の構成は発表されてはおりませんが、ここでの永住者とは、3か月以上海外に在住し当該在留国から永住権を認められ生活の拠点を日本から海外へ移した人のことを指します。
一方、法務省出入国管理庁が発表する2023年末の在留外国人は3,419千人で、過去最高を更新しているそうです。そのうちの永住者の数は年々増加の一途を辿っており約891千人となっています。前年から比較すると約3.2%、人数にして約27,600人の増加です。技能実習生や留学生なども含めた在留外国人数は、コロナの影響を受けた2020年から2021年にかけて一旦減少したものの、その後増加に転じ現在の状況となっています。日本人の海外流出と外国人の日本流入が少しずつ進んでいるという状況です。
政府は2024年3月15日に、これまでの技能実習に代わる制度として「育成就労」の法案を国会に提出しました。これまでの技能実習は、日本の技術を発展途上国の外国人に教えることによって、その国や地域の経済発展に寄与することを目的としてつくられた制度ですが、育成就労では日本に定住して働き手となる外国人人材の確保を目的として制定を目指すものです。制度の詳細は今後検討が進められることになりますが、国内での深刻な労働力不足に対応するための要件を整備し、より長期的に日本に在留し労働できることを目指す制度となるようです。技能実習生としてなかなか増えない外国人労働者を、育成就労者として労働力を増やしていこうとする政府の強い意向の表れでしょう。
歯科医院では、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士は国家資格のため対象とはならず、また歯科助手、受付等の業種においても一般業種となることから、現段階では育成就労の対象職種とはならない状況ですが、諸外国との人材の交流がますます盛んになることが予想される中で、患者さんとしての外国人対応のみならず、スタッフとしての外国人対応等も視野に入れる時代がくるのかもしれません。
(つづく)
※ 玉ヰニュース 2024年 4月号より転載。
2月15日に内閣府から発表された2023年10月~12月期の国内総生産(GDP)の速報では、名目GDPはおよそ591.5兆円(内閣府HP)となり、ドイツに抜かれ世界第4位に下がったとの報道がありました。国内総生産は、一年間など一定期間内に生み出された価値の総額を表しますが、日本の人口約1億2,409万人(総務省統計局)に対して、ドイツの人口が約8,482万人(外務省HP)と日本の約7割の人口のため、一人あたりのGDPで考えると1.5倍ほど開きがあることになります。実際、日本の一人あたりGDPは世界では30位前後、G7の中でも最下位となるなど、依然として生産性が高くならない状況が続いているようです。
ある専門家は、日本は長年コスト削減ばかりを行い、投資などの積極的な経営をしてこなかったからだとの分析を行っています。弊社が毎年行う収支アンケート調査において経営効率を見た場合でも、収入規模が大きい歯科医院、つまり設備投資の資金を多く確保できる歯科医院ほど生産性が高くなる傾向があります。たとえば、スタッフ一人あたりの月間収入額においては、平均は約131万円となっておりますが、小規模歯科医院においては約106万円に対して大規模歯科医院では約144万円まで、収入規模に比例して高くなる傾向があります。チェアー一台あたりの月額収入においても収入規模に比例しており、小規模歯科医院の平均約54万円から、大規模歯科医院の約220万円まで実に4倍の開きが出る傾向があります。
現在、コロナ禍に行なわれた無利息融資の返済が始まってきておりますが、銀行担当者によると、利払いが始まる直前に借入れた資金をそのまま一括で返済をする事業所は多いそうです。銀行としては十分に想定された動きのようですが、一方で銀行も融資残高を維持するためにプロパーでの融資に力を入れている様子です。つまり歯科医院にとっては、より有利に融資を受けられる状況でもありますから、新たなチェアーの増設や更新、あるいはCTやマイクロスコープなど、高額になる新規の設備導入について積極的に検討できる環境と捉えることができます。
歯科医院の損益について数年間に亘る推移を見ていますと、設備投資等によって経費の金額が多少増えたとしても、積極的な経営を推し進めることにより経費の増加分を上回る収入を得られるようになり、収入に対する利益(所得)率が上がる歯科医院が多くみられます。物価が上がることで各経費項目にも影響があるため、全体の経費管理が非常に難しい経営環境ではありますが、積極的な取り組みが歯科医院の経営を安定させ、医院の経営安全率を高めることにもつながります。
(つづく)
※ 玉ヰニュース 2024年 3月号より転載。
少子高齢化が一層進む昨今の状況において、歯科医院を維持するための貴重な戦力となるスタッフを確保する場合、求職者から「選ばれる職場」を目指すことが大切になります。そのためにまずは職場の魅力を整理し、求職者へ的確に届けることが重要になりますが、医院のどの魅力を強調して表現するかによって呼応する人材も変わります。
たとえば、歯科医療そのものの魅力を強調すれば、ほかの業種で働く人材からは歯科医療が魅力的に映ります。歯科医院で働いた経験がない人も、歯科医療を通じて人々の健康に寄与したい、健康に悩む人の力になりたいと考え歯科医院に人材が集まる可能性が高くなります。一方、具体的に医院の体制について表現した場合、たとえば週休3日制を採用している歯科医院であれば現実的に休日数が増えるわけですから、休みを多く欲しいと思う人材が集まります。1日の労働時間は長いけれども休日が多い方が嬉しいという人を選別できることになります。
近年は、働く環境の整備が進んでいることから、社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険など)への意識も高くなっていますが、歯科医院においては社会保険を完備する歯科医院が特集として組まれ、安心して働くことができる魅力ある歯科医院として選別される現状があります。また、歯科衛生士などの有資格者は比較的学習意欲が高いこともあり、人材育成や教育に力を入れているという内容が職場の魅力として求職者に映る要素にもなっています。
人それぞれに異なる多くの魅力があるように、歯科医院もそれぞれに魅力的な要素を多く有しています。人を惹きつける医院のよさを求職者に的確に伝えるために、歯科医院の何が求職者にとってメリットとなるのかを整理することが必要です。ここで働きたいと思う人に対してわかりやすく具体的に提示できることが、医院が求める人材とより早く巡り合う可能性を高めることにつながるでしょう。
職場の魅力を働く立場に立って表現するためには、勤務するスタッフを集めて医院の魅力を思いつくままに出してもらってください。誰の意見も否定せず、中心となる数人のスタッフが3つ4つと魅力を出し合っていくうちに、その場に参加するスタッフから次々に意見が出てくるようになるとミーティングは成功です。数多く集まった魅力の内容を、医院に関すること、仕事内容に関すること、診療に関すること、給与や待遇に関すること、人間関係に関することなどに分類し、その中で何をもっとも強調して打ち出せばよいかを話し合うとよいでしょう。人を選び、また人から選ばれることによって、医院の魅力に一層磨きがかかることを期待します
(つづく)
※ 玉ヰニュース 2024年 2月号より転載。
トランスフォーメーション(X)、すなわち変化や変革、あるいは変形と訳される言葉ですが、身近な内容としてはデジタルトランスフォーメーション(DX)が挙げられるでしょう。新型コロナウイルスの感染が拡大した際に注目を浴びるようになり、その後産業界ではデジタル化により多くのビジネスモデルが提案され、今では一般的な取り組みとして普及することとなりました。
医療分野においても、政府による医療DXとして日々推進されているところですが、2023年DX白書によると、医療福祉分野におけるDXの取組状況は9%にとどまっている現状です。その次は宿泊業、飲食サービス業の16%となっており、もっとも取組状況が高い分野は、金融業、保険業、情報通信業の45%のほか、農業、林業においても45.4%という状況のようですから、医療分野においては個人情報の共有におけるセキュリティの問題や人材不足の問題などが大きく影響しているのかもしれません。とはいえ今後の社会の構造変化に対応するべく、医療分野におけるDXも強力に推進されていく分野であるといえるでしょう。
近年注目を浴びているトランスフォーメーションという言葉ですが、DXにとどまらず、さまざまな分野に使われています。二酸化炭素の排出を減らし、環境に優しい変化を促すグリーン・トランスフォーメーション(GX)、SDGsに代表される企業や社会の持続性を実現する取り組みであるサスティナブル・トランスフォーメーション(SX)、人との関りやサービスを通じてよりよい関係を生み出そうとするヒューマン・トランスフォーメーション(HX)のほか、被爆量を極限まで減らす一方で撮影範囲を飛躍的に拡げる変革を目指すX線トランスフォーメーション(XX)という言葉まであるようです。
医療DXも研究を重ねる中で、今までとは全く違う概念や研究成果が現れ、一気に変化を伴う時代が来るのかもしれません。歯科医療は、患者さんの口腔内に触れることではじめて治療が進む特殊な分野のため、さまざまな変革を図ることからは遠い位置に存在すると考えられていますが、変化することによる暮らしやすさ、働きやすさを柔軟に受け入れる体制は維持しておきたいところです。日々変化を重ねることにより、患者さんだけでなく、ここで働こうとするスタッフも含めて心地よく過ごせる環境づくりに向けて、残すべきものと変わるものとの融合を目指すことが大切と考えます。
(つづく)
※ 玉ヰニュース 2024年 1月号より転載。
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(鹿児島県曽於郡)
「ユニットの故障も、(メーカーが対応してくれない時) 対応してくれる。これは我々には非常に助かります。」
「対応も早い。又、色々な情報を提供してくれる事はありがたいです。対応がまじめで、本当に信頼出来る方と思います。」
ゆめ咲歯科クリニック様(佐賀市)
「非常に丁寧に迅速に仕事をして頂いています。突然の非常事態にも対応して頂き、ありがたく思っています。」
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